新刊情報 – ページ 84

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青田

【オリジナル句集】
句集/青田
著者/白土昌夫
判型/四六判上製/カバー装
価格/2667円(税抜き)

生き方を問はれて眺む青田かな

目の前の青田を前にして、現実的な農業のゆくて、これからの対応を問われたのかもしれない。その問いに、白土昌夫氏はただ誠実に、ありのままを答えている。そういう一景と考えてもよいと思っている。『青田』には、そうした地に足がしっかり着いた誠実な作品が多い。

大牧 広
喰ふ喰ふ喰ふ

【オリジナル句集】
句集/喰ふ喰ふ喰ふ
著者/牛村蘇山
判型/四六判上製/カバー装
価格/2667円(税抜き)

喰ふ喰ふ喰ふ空空空や小春風

「喰ふ喰ふ喰ふ」は人間のみならず、生きとし生けるものはまず「食べなくては生きてゆけない」(後記)という信念が籠った措辞で、「空空空」は色即是空の空である。「喰ふ」「空」は同音で繋がり、広大で深慮な世界を詠んで、俳句という短詩型の醍醐味を示す句である。

永田満徳(「序」より)
初鏡

【オリジナル句集】
句集/初鏡
著者/奥井志津
判型/四六判上製/カバー装
価格/2667円(税抜き)

慶びの悲しびの雛初鏡

奥井さんの来し方の万感の思いはこの一句に尽きる。 鏡に映る年波の歳月には、人生の喜びも辛酸の悲しみも一切を濾過した晴れやかな姿が投影されている。今は恙無き日々に感謝である。

鳥井保和
終の家

【オリジナル句集】
句集/終の家
著者/二ノ宮一雄
判型/四六判上製/カバー装
価格/2667円(税抜き)

うさぎ小屋どの子も覗き卒業す

一雄はうさぎと子供に共感する。子供、妻、両親、人、動植物、森羅万象への思いやりとやさしさが句集に満ちている。 若き頃、壇一雄や眞鍋呉夫と共に小説を書いていた作者の私小説風の俳句は、身の回りのささやかな命と平和を愛する心にあふれる。

坂口昌弘
さくら貝

【オリジナル句集】
句集/さくら貝
著者/大塚京子
判型/四六判上製/カバー装
価格/2667円(税抜き)

ぶだう食む悩みの種を吐き出して

「ぶだう食む」の句も驚天の一句だった。ぶどうの句は、毎年山と作られるが、「悩みの種」と表現した人はまだ居ないと思う。あの種を「悩みの種」とはよくも言ったと驚いた。俳句とは言葉との出合いだと私は思っているが、こういう出合いがあるから、俳句はやめられないのである。

高橋悦男
尺蠖の道

【オリジナル句集】
句集/尺蠖の道
著者/堀切克洋
判型/四六判並製/カバー装
価格/1667円(税抜き)

尺蠖の道ひろびろと使ひけり

堀切氏は出発点から日本文学の根底にある「言霊」の力を理解していた節がある、と私は思っている。本業の演劇界では既に斯界で注目されている新進気鋭の評論家である。俳句評論の面でもすでに「俳人協会新鋭評論賞大賞」を受賞している。このたびは若手俳人の登竜門である「北斗賞」を受賞し、三十代前半にして幸先のよい出発を果たしたことを祝福したい。

伊藤伊那男(「跋」より)