【オリジナル句集】
句集/主根鑑
著者/志賀 康
判型/変形判上製
価格/2500円(税抜き)
根の族の空位に叫べ秋の石
もともとわたしの俳句は、地の深さに隠然と、しかししかと湛えられた存在の気に、時を経てたどりゆくものへの想いを強く持っていたように思う。本集を『主根鑑』(おもねかがみ)と名付けたのも、地中まっすぐに伸びてゆく一本の根に託したものの顕れであっただろう。
【オリジナル句集】
句集/旅の雲
著者/杉浦きぬ
判型/四六判並製/カバー装
価格/2000円(税抜き)
さくら咲く城にとどまる旅の雲
句稿の終章で見たこの一句に、拙稿を綴る指先が躍った。これぞ、句集を代表する一句かと感動した。人生は旅、流れゆく雲も常に同じ容ではなく、城は栄枯盛衰の歴史を語る。それ等が今を盛りの桜と、一会の景を明るく染めている。
【平成俳人叢書】
句集/秋の蜂
著者/川崎益太郎
判型/四六判上製/カバー装
価格/2667円(税抜き)
漂泊の表面張力すすき原
「漂泊の表面張力」という捉え方が魅力的で、「漂泊」という語義を詮索し始めると詰まらなくなりそうだ。風に揺れているような揺れていないような、芒原の広い広がりが見えてくる。その頼りげな広がりの感触を「漂泊の表面張力」と言う。陽光まで感じる。人っ子一人いない。
【平成俳人叢書】
句集/恋のぶぎぶぎ
著者/川崎千鶴子
判型/四六判上製/カバー装
価格/2667円(税抜き)
まんげつの終着駅の海鼠かな
作者の受け取った風景を内面化している句。駅の人間の動きとか置かれているものを総合して、駅全体の印象が海鼠のようだと受け取ったのだと思う。満月に照らされているうらさびしいあまり大きくない駅の風景が見える。譬えというよりも終着駅の風景を感覚しているといった句。
【オリジナル句集】
句集/坂の家
著者/松田徳枝
判型/四六判上製/カバー装
価格/2667円(税抜き)
坂の家はるか高きに盆の月
徳枝さんの俳句は、住む坂の家の周辺と生まれ育った最上川の二つを核に、そのきっぱりと言い切る美学で、佳句を詠み継いできている。
【オリジナル句集】
句集/大津
著者/鈴木弥生子
判型/四六判並製/カバー装
価格/2200円(税抜き)
とほき日の大津が匂ふ初諸子
著者・鈴木弥生子さんは、いつも物静かで心優しい方ながら、内に湛えている詩情は深い。清らかで艶やかなリリシズムに加えて、時に思念的な作風も見せて、ますます新たな句境が拓きつつある。大津は、若い頃、住まわれていた懐かしい地で、折りに触れ、ふと回帰の情が湧くらしい。句集名の所以である。