2010  年 03 月号より
本誌1月号の「作品六句鑑賞」欄で中上哲夫氏の次の文が目にとまった。「忌日が苦手だ。歳時記をひもとくと、忌日一覧が載っているけど、俳人にかぎらず、忌日がなかなか覚えられないのだ。その結果、忌日を読んだ句は季がわからない」――同感である。俳句は一読して感動することがたいせつ。歳時記や辞書を調べてから鑑賞となると、感動が間延びしてしまう。私が知っている忌日はせいぜい「西行忌」と「時雨忌」くらい。「西行忌」は〈願はくは花の下にて春死なむそのきさらぎの望月のころ〉という西行の歌と〈花あれば西行の日とおもふべし〉という角川源義の句をセットで覚えているからである。「芭蕉忌」となると、さていつだったけと考えこむが「時雨忌」というと印象鮮明である。加藤楸邨に〈芭蕉忌やはなればなれにしぐれをり〉という句がある。この句は〈旅人と我が名呼ばれん初しぐれ〉という芭蕉の句と呼応しているのだが、留意すべきは楸邨句の季重なりである。忌日の句は季重なりとなっても季節のわかることが肝要であろう。
2010  年 02 月号より
本誌12月号で、眞鍋呉夫氏と正木ゆう子氏が「雪女」について対談している。眞鍋氏は平成4年、句集『雪女』で読売文学賞を受賞。昨年刊行された『月魄(つきしろ)』にも雪女の句が数多く収録されている。いまや雪女の句といえば眞鍋呉夫、眞鍋呉夫といえば雪女の句と言われるほどである。一つのテーマをライフワークとして詠みつづけることは容易ではない。ことに「雪女」のような幻想世界をあたかも現実に目にしたかのように新鮮なトリックで読者に感銘を与える表現力は、小説家ならではの想像と創造の賜物であろう。たまたま手元にあった俳誌「童子」(平成21年11月号)を読んでいたら、辻桃子主宰の次の文が目にとまった。――〈甚平は鍛冶師の兄の形見かな 齋藤耕牛〉 おなじみ耕牛さんの鍛冶師ものだ。この甚平も泣かせる。一生一つのテーマで作りつづけてほしい。句作りとは一生自分にしか描けないことを描くことなのだ――眞鍋呉夫氏の「雪女」の句にも通じる評文である。俳句とは、十七音の詩を紡ぎつづけながら書き上げる大河ドラマなのだ。
2010  年 01 月号より
インターネットなどによる情報の多様化で活字メディアの未来は暗い。新聞王国イギリスの有力紙「イブニングスタンダード」は昨年秋から無料配布に踏み切ったという。日本の新聞社の中でも超優良企業とみられていた朝日新聞社と日本経済新聞社が20099月中間決算でそろって赤字という。つい最近までわが世の春を謳歌していた新聞・テレビなどのマスメディアは生き残りをかけて熾烈な競争を繰りひろげている。ましてや俳句という小さなジャンルの出版社の実情は推して知るべしである。俳句雑誌の出版で黒字を計上することは、空飛ぶ鳥を草矢で撃つようなもの。いま、俳句総合誌を発行する出版社はNHKを含めて七社ある。その中でも「文學の森」は社歴も浅く経営基盤も脆弱である。だが、会社は小さくとも雑誌づくりにかける情熱と編集内容で日本一の座を獲得することはユメではないと信じている。「夢」を国語辞典で調べると「容易には実現できないこと」とある。そのユメを追って新しい年のスタートを切ります。
2009  年 12 月号より
「もういくつ寝るとお正月」というわらべ唄を思い出す時節となった。俳句では「数へ日」という。いい言葉だと思う。まだまだ先のことと思っていたことが、あっというまに迫ってきて、あっというまに遠い過去となっていく。新年会の席で「もうすぐ正月が来ます」と挨拶すると居合わせた人たちはどっと笑うが、その笑いの中に“そうだよなぁ”という空気がまじっていることを感じる。加藤楸邨先生から「60歳を越えたら矢のように時間が過ぎていきます」という手紙をもらったことがある。そのころ40歳そこそこだった私はその手紙を他人ごとのように思っただけだった。数年前、筑紫哲也氏から「歳月人を待たず」という葉書をもらったときは自分のことにひきつけてしみじみ考えた。その筑紫哲也氏も1年前にこの世を去ってしまった。鬼が笑うひまもなく2010年に突入する。
数へ日の松風をきく齢かな         勝又一透
松過ぎの又も光陰矢の如し        高浜虚子
みなさまどうぞ良いお年を。
2009  年 11 月号より
この二、三年の間に総合雑誌や婦人雑誌がつぎつぎと廃刊に追いこまれた。雑誌は面白くなければ読まれない。俳句総合誌といえどもである。いま、俳句総合誌は七誌あるが、表紙を剥がしたら中身はどれも似たり寄ったりという批判を聞く。では具体的にどうすれば差別化を図れるか。“面白い”内容とはどんな企画か。思いうかぶ案は手垢のついたものばかり。こんなときは読者の声を聞くことがいちばん参考になる。七月号から「読者アンケート」のハガキを添付している。本誌に対する要望・提案や辛口のご意見等をお待ちしております。
※11月26日(木)、東京で「読者交歓パーティー」を開催します。日頃、なかなかお目にかかることのできない読者のみなさまと親しくお話しを交わしたいと思っております。読者にとっても投句欄のライバルや選者の先生方にお会いできるチャンスでもあります。お誘い合わせのうえ一人でも多くご参加くださいますようお待ちしております。
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