●毎月25日発売
●A5判  ●定価1,200円

○ 月刊 俳句界 2017年6月号 ○
特   集
俳句に詠もう 季節の鳥
春夏秋冬の鳥をカラー写真で、解説、例句付き
特   集
俳句という血縁ー佐怒賀正美・直美対談 他
特別作品50句
高野ムツオ
充実の連載陣!
「牡丹と怒濤ー加藤楸邨伝」石寒太、他
セレクション結社
長峰竹芳「好日」
俳句界NOW
復本一郎「鬼」
甘口でコンニチハ!
手嶋龍一(外交ジャーナリスト・作家)
amazonでもご購入いただけます→
○ 別冊付録 / 投稿 俳句界 ○
質量とも類を見ない、圧倒的に充実した総勢29名の選者陣!

添削教室選者
河内静魚、山尾玉藻(敬称略)
俳句トーナメント選者
石井いさお、五島高資、佐久間慧子、堀本裕樹(敬称略)
雑詠選者
有馬朗人、稲畑廣太郎、今瀬剛一、大串章、大牧広、角川春樹、岸本マチ子、古賀雪江、坂口緑志、佐藤麻績、鈴木しげを、辻桃子、夏石番矢、西池冬扇、原和子、山田佳乃(敬称略)
兼題選者
大高霧海、高橋将夫、田島和生、田中陽、中西夕紀、名和未知男、能村研三(敬称略)


  【下の各画像をクリックしますと、今月の各コーナーの授賞作品がご覧いただけます。】


俳句ボクシング・今月のチャンピオン
選者:石井いさお、五島高資、佐久間慧子、堀本裕樹(敬称略)
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
猪鍋や吾にも石器時代の血
愛知 井村晏通
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
蓮根掘空を摑みて足を抜く
三重 平野 透
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
たるみたる二の腕洗ふ柚子湯かな
福岡 山邉さなゑ
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
蟬落ちて一瞬止る蟬しぐれ
長野 種山せい子
雑詠
選者:有馬朗人、稲畑廣太郎、今瀬剛一、大串章、大牧広、角川春樹、岸本マチ子、古賀雪江、坂口緑志、佐藤麻績、鈴木しげを、辻桃子、夏石番矢、西池冬扇、原和子、山田佳乃(敬称略)
雑詠-有馬朗人・選
春立つや湯を躍らせて茹卵
東京  山形れん
春が来る喜びは大きい。「春立つや」という季語は人気がある。そこで類想句が多くなる。この句の佳さは沸き上る湯の中で躍りまわる茹で卵を描いたところである。いかにも卵まで春が立ったことを喜んでいるようである。湯ではなく、卵が湯を躍らせると言ったところも面白い。
佐保姫や一人駆けゆくランドセル
兵庫  国光六四三
春になり、新入生であろうか、女の子がランドセルを背負って駆けて行く。新しいランドセルがいかにも春らしい。と思ってこの女の子を見て、あっ、これは佐保姫かもしれないと発想したのである。佐保姫がランドセルを背負って駆けて行くとは、実に新鮮な着想である。
瀬戸小島ひびきあひ寄る除夜の鐘
東京  南北ひろし
瀬戸内海に小島が幾つか集まっている所がある。除夜の鐘が一つの島から始まると、隣りの島からも響いて来る。奥の方の島からも。除夜の鐘が響く度、島々が寄り合って来るようである。と、見たところが佳い。瀬戸の小島の大晦日らしい光景が佳く描かれている。
雑詠-稲畑廣太郎・選
しやぼん玉はじけて星の種となる
高知  𠮷倉紳一
子供の頃は誰でもわくわくしながら楽しんだしゃぼん玉である。大きなものが出来ると喜びも一入であるが、やはりそれほど寿命は長くなく、すぐに割れてしまう。その弾けた様子を「星の種となる」と表現されたところが何とも詩的で、しゃぼん玉のカラフルな美しさも見える。
*足裏の血の音聞きし絵踏かな
神奈川 山口せうこ
キリシタン禁教の時代を偲ぶ「絵踏」という季題は、現在では記録から想像するのみだが、当時の信者の葛藤は如何ばかりであっただろう。この句は、そんな信者の心情を、現在遺されている踏絵そのものに感じておられるのではないだろうか。絵踏みの世が迫って来るようだ。
おぼろ夜の空とぶものを魔女といふ
福岡  川崎山日子
実際に箒に乗って空を飛んでいる魔女が見えてくるような迫力がある。先ずこの句は何の脚色もなく素直に表現されていて、説明っぽさが全くないのである。そして、やはり季題の働きが効果的であることにも着目しなければならないだろう。ロマンチックな朧夜が展開されている。
雑詠-今瀬剛一・選
売れ残る椿一気に花ざかり
福岡  榊原 洋
春先の植木市、それも終りに近い頃を詠んだ作品であろう。視点がいい。たくさんあった苗木が売れて、今は売れ残った苗木だけが並んでいる。その中の「椿」の一樹に作者は目をつけた。それは今を盛りとばかりに咲いているのである。「一気に」という表現が健気に響く。
*大地震に耐へたる雛飾りけり
熊本  加藤いろは
「地震」は「ない」、「雛」は「ひいな」と読む。作者の住む熊本は昨年地震により大きな被害を受けた。心からお見舞いを申し上げる。「大地震に耐へたる」という表現は作者の体験であるとともに、「雛」の経験でもある。雛を飾りながらの深い思いをよく見定めて表現している作品。
おほかたは紙の重さよ種袋
群馬  小暮駿一郎
対象の実体を大変よく把握していると思う。花屋さんなどで種を買う時に私自身もよく経験することである。種袋を持った瞬間軽いのである。そこで日にかざしたり、振ったりして確かめる。「おほかたは紙の重さ」はまさに実感、「よ」の一語に驚きの響きを託している。
雑詠-大串章・選
*ふるさとの被曝の山河霞みけり
宮城  髙宮義治
平成二十三年三月の東日本大震災では死者・行方不明者が続出、多くの被災者が故郷を離れ、仮設住宅に移り住んだ。福島第一原子力発電所事故で地域住民の避難は長期化、帰還困難区域も設定された。あれから六年、今もなお多くの人々が異郷で暮らす。「被曝の山河」が悲しい。
歌がるたむすめふさほせ口ずさむ
福岡  中城幸枝
歌がるたには五・七・五の最初の一文字を聞いただけで取れる札が七枚ある。その最初の一文字が「むすめふさほせ」である。例えば「む」では〈村雨の露もまだひぬ槇の葉に霧立ちのぼる秋の夕暮〉。「む」と聞いた途端に〈きりたちのぼるあきのゆふぐれ〉を取ることができるのだ。
春真昼靴うちつけてフラメンコ
千葉  大久保 桂
フラメンコは情熱的な歌と踊りで知られる。踊り手は指を鳴らしたり、手拍子をとったり、足を踏み鳴らしたりしながら激しく踊る。この句、「靴うちつけて」が勢いよく踊るフラメンコの有様をよく言いあらわしている。華やかに揺れるフラメンコの衣装も眼に見えるようである。
雑詠-大牧広・選
*ふるさとの被曝の山河霞みけり
宮城  髙宮義治
ふるさとに春がきた。被曝さえしていなければ、懐かしい暖かな山河として眺められるのだが、今はちがう。被曝をしている山河。なんとも複雑で悲しい故郷の山河であった。
雪しまきアンネの部屋を想ひをり
北海道 佐藤尚輔
雪が降りそそぐ日、寒くて暗い。過日の世界大戦で、ナチスの迫害から逃れて屋根裏で息を殺すようにして過ごした生活を綴った『アンネの日記』は、世界中の人々に深い衝撃と感銘を与え、反戦の心を不動のものにした。
着ぶくれて遅刻の子らを諭しけり
東京  鶴巻貴代美
「着ぶくれて」が巧み。遅刻した子を諭している人が寒さを怖れての厚着。ありのままに詠まれていて説得力がある。
雑詠-角川春樹・選
貌のなきマネキンに乗せ冬帽子
広島  瀬戸柚月
街の中のショーウィンドーなどの光景に触発された一句であろう。現代の景を切り取った作品であるのはもちろんのこと、「貌のなきマネキン」という措辞は、都会生活者の風姿の比喩にも通じる。
立春大吉パックに卵十個立ち
愛知  石井雅之
日常生活の一齣から、立春のよろこびをすくい取っている。下五を「十個立ち」として垂直を意識させた点がいい。これが単に「あり」であった場合との違いを味わってほしい。
老人も瞳は珠玉春は来ぬ
京都  島村福助
加齢による肉体的な変化は自然の摂理であるが、精神を瑞々しく保つことはできるかもしれない。掲句で瞳が美しいというのは、精神の表れであろう。生命讃歌に通じる作品である。
雑詠-岸本マチ子・選
着ぶくれて一晩中を里神楽
東京  髙野虹子
昔、高千穂の夜神楽を見た。十一月中旬から二月上旬の間に氏神を迎えて感謝の舞を奉ずるのだという。それこそ着ぶくれて一晩中夜神楽に酔い痴れていた事を思い出す。当番の家がいろいろご接待下さっていた事など、ほっこりと心に残っている。
新横綱広く遠くへ春を撒く
大阪  菊池 稜
これは勿論、稀勢の里であろう。その新横綱が、胸を張り、広く遠くへ塩ではなくて春を撒いている様子がいかにも目に浮かぶ。怪我にも負けず、二連勝を勝ち取った涙もさもありなん、とひそかに拍手をする。
猥談もからりと交ぜて浜の海女
東京  栖村 舞
海女さん達は皆元気で、威勢が良くて屈託なく働く。声も大きいし、よく喋る。そんななかで、いつもの様に猥談がぽんぽん飛び出す。それはひょっとして彼女達の、一番のストレス解消法かも知れない。
雑詠-古賀雪江・選
子の声のする北窓を開きけり
三重  森田敏昭
冬の間閉ざしていた北の窓を開くのは、春を迎える喜びの一つ。これまで薄暗く陰気であった部屋が明るくなり、その明るさに身も心も解放されたように感じる。窓の外の子供たちの声が今まで感じたことも無かったように近かった。寒い地方ならではの感懐が思われ、表情がやさしい
天空へ風乗りかへて揚雲雀
東京  石川 久
春の野に、空高く朗らかに囀る雲雀は最も人に親しまれている鳥である。巣や籠を飛び立つ時は鳴きながら垂直に高く舞う。それは天空に向かって漕いでいるようにも見える。その漕いでいるような様が、あたかも風を乗りかえては高上りをして行くように見えたのである。
猫柳光の風となりにけり
熊本  石橋みどり
早春、葉の出る前に花を開き絹状の白毛を密生する猫柳であるが、やがてこれが銀色に輝いて、雨などに濡れると一段と光沢を増す。まだ辺りに色の無い頃の猫柳の揺れる様が、あたかも光の風を放っているように見え、「光の風と」の表現となった。
雑詠-坂口緑志・選
星沈む湖に眠れるくぐいかな
愛知  小木曽みえ子
「鵠」は白鳥の古名。日中は湖や大きな沼などで、水草の葉や茎を食べる。中には、昆虫や落穂も食べるという。この日の夜は、星が珊々と輝いていたのであろう。その星の沈む湖で、鵠は嘴を羽に差し入れて眠るのである。
*大地震に耐へたる雛飾りけり
熊本  加藤いろは
阪神淡路、東日本、熊本など、大きな被害をもたらした地震は記憶に新しいが、そんな大地震を乗り越え、残った雛を飾ることが出来たという。復興も少しは進んでいるのだろうか。災禍に耐えて飾ることの出来る喜びがひしひしと伝わって来る。
赤い灯に雪が貼りつく多喜二の忌
神奈川 久里枕流
小林多喜二は、『蟹工船』などで知られるプロレタリア作家。一九三三年二月二〇日、特高警察の拷問により死去。二十九歳であった。赤い光を放つ街灯かネオンであろうか、吹きつけた雪が貼りついて赤く染まって見える。多喜二の死を象徴するかのような北の街の光景である。
雑詠-佐藤麻績・選
山笑う思い出せない女優の名
埼玉  成田淑美
物忘れを俳句に詠まれる例は、決して少なくない。但し若い世代でないようだ。往年の女優であれば忘れるはずはないのだが、忘れたのでなく「名」を思い出せないと言うのである。そのことがおかしくて自らをからかいたい気分なのだ。「山笑う」の前向きの季語がその証しであろう。
時代ときを漉く呼吸いき一瞬の紙漉女
埼玉  関根艸子
紙漉き場を訪ねると、僅かの瞬間が勝負であることが理解出来る。水に溶かした紙料を前後に動かして均された所で水槽から上げる。それは瞬間の息できまるようだ。一枚一枚の紙はその瞬間、瞬間に出来ていく。決して同じものはない。時代を漉くとは言い得て妙というべきであろう。
去年今年かるく楔を入れにけり
徳島  神野喜美
〈去年今年貫く棒の如きもの〉と高濱虚子は詠まれている。こちらの作品はその棒に「楔」を入れるという。何処にも切れる所はなく、時は流れて、新しい年につながっていくのだが、何故か何処か違うと思うのは確かである。作者は、そこに「かるく楔を」入れて年を新たにする。
雑詠-鈴木しげを・選
灯台の見ゆる北窓開きけり
兵庫  藤田かもめ
長い冬の逼塞感から開放されたよろこびがこの句にある。閉め切っていた北窓を開いた先に白い灯台が見え、またその先に藍色の海がひろがっている。作者のこころの窓も明るく開かれたことであろう。一句のはずむようなリズムも心地よい。
やや傾ぐ蕪村の墓や雪もよひ
神奈川 尾﨑千代一
        京都・金福寺に与謝蕪村の墓がある。蕪村を中心とする天明の俳人たちは、この寺でたびたび句会を催している。蕪村は崇拝する芭蕉の庵をこの地に再興したことでも知られる。寺内の険しい崖地に「与謝蕪村墓」と誌されている。「雪もよひ」の季語が動かない。
春寒や一字ひき出す古語辞典
大阪  金子さと
        春寒と余寒では同じ立春以後の寒さであっても微妙な差がある。余寒の方が冬に近く、春寒は春のあたたかさに向かっている感じがある。掲句の春寒は中七の「一字ひき出す」の力強さに適っていよう。相手が古語辞典であるのが探究心に充ちている。
雑詠-辻桃子・選
山火待つ群衆に鹿寄り来たり
大阪  北山日路地
        奈良の若草山の山焼きは何万人もの人出がある新春の行事だ。群衆が山焼きの始まるのをかたずをのんで待っているところに、鹿が寄って来たのだ。食べ物をもらおうとして群がってきたのだろうか。山焼きの火を放つ瞬間を待つ群衆と鹿の群れとが活写されて、臨場感がある。
種袋花壇に挿して転勤す
大阪  阿久根良一
        作者は花壇に花種を蒔いて、その種袋を、挿した棒にかぶせたのだ。そこまで作業を終えたところで転勤となった。あとの作業は誰かが引き継ぐだろう。花壇に咲く花は見ることができないが、満足した気持も感じられる。最後の仕事が種袋を挿すことだったところに俳味がある。
下萌に砲丸投げのへこみかな
東京  井坂 宏
陸上競技の練習場だろう。砲丸投げの練習をするフィールドに下草の芽が萌え出してきた。あちこちに砲丸の落ちたへこみがある。見たままの景だが、今まで雅に詠まれてきた下萌と、砲丸でできたへこみという具体的なものの取合せが現代的だ。「へこみ」にユーモアが感じられる。
雑詠-夏石番矢・選
いつからか私は鯨これからも
京都  黒金祥一
        季節という時間を超えた一句の設定が卓抜。「いつからか私は人間これからも」という不条理が前提となり、この句では「鯨」への変身が述べられる。この不条理な時間は、この世の生き物すべての不条理である。人はその不条理に鈍感になり生きている。同時投句の他の二句は凡作。
大東京の風なびかせて卒業す
愛媛  後藤 郷
        愚鈍な男が長期政権を維持する現在、日本の若者から希望が消えているのではないか? そういうなか、社会へと意気揚々と飛び立つ大学生の卒業を詠んだところがいい。この巨大な東京の風に屈するのではなく、從えるたくましさと明るさ。「だ」音から始まり、句の響きもおおらか。
あれ以来霞からの電話には出ない
東京  栖村 舞
        原句は「以来」で始まるが、「あれ以来」とした。謎めいた一句。霞は女性の名前か、あるいは本当に春霞か。いずれにせよ、得体の知れない相手からの電話には、怖くて居留守を使うしかない。この句の時間も、四季の一点だけではなく、起点から現在まで。そして未来も。
雑詠-西池冬扇・選
冬日さす笹のしきりに乾く音
宮崎  岡本和子
        冬日に乾いた感覚を感じてしまうのは作者だけではあるまい。〈冬日さすあんかうの肌かはきけり〉という室生犀星の句があるが、一味異なるリアルな感覚がこの句にはある。笹の葉の音がその感覚を増すのだろう。「乾く音」という体言止めの表現が心地よく、「しきりに」が効果的だ。
古時計動き出したる春の宵
兵庫  萩原善恵
        止まっている古時計が何かのはずみで動き出した。春の宵は何か生命の気の如きものが満ち溢れており超常現象かも知れぬ、などと考えるのも一興。ただこの句は上五で切れる文型、動き出したのは春の宵と解する方が文にかない、「春の宵」に新味がでて面白い、また古時計も活きる。
瓦礫の上寒鴉の影の歪みけり
愛媛  野澤 均
       現代では「瓦礫」という言葉には震災の忌まわしいイメージがつきまとう。「瓦礫」という言葉の言語空間が拡大したともいえる。掲句はマイナーのイメージを重ね合わせることで、ある種の世界を創り出すことに成功している。カ行と濁音の多用によって、その効果が増大している。
雑詠-原 和子・選
初場所の神が背を押す大一番
静岡  阿久津明子
        稀勢の里が初優勝し、十九年ぶりに日本人横綱が誕生した劇的な初場所は記憶に新しい。多くの観戦者が、勝負の行く方を手に汗を握り見守った。相撲は、神事に始まるというが、その勝負は神意によって決する。ここぞという大一番、まさに「神が背を押す」。
*津軽には津軽山唄春を待つ
青森  福士信平
雪深く厳しい冬を迎える風土ほど「春を待つ」思いは深い。津軽地方で唄われる津軽山唄は、山の神にささげる山の神唄が祝い唄として座敷でも歌われるようになったもの。風土にはそれぞれ待春のかたちがある。津軽では津軽山唄を唄って春を呼ぶのである。
かすかなる海の匂ひを卒業子
埼玉  諏訪一郎
春は卒業の季節。進学、就職と進む道は分かれるが、母校を離れる卒業子は母校での学びを胸に卒業する。掲出句の「かすかなる海の匂ひ」とはなつかしい母校の匂いか、それは卒業子の矜恃となる。期待と不安を抱きながら進む先には大海のような洋々とした未来が待っている。
雑詠-山田佳乃・選
梅咲きてより穏やかに母のゐる
兵庫  中水大介
厳しい寒さを乗り越えて、早春に綻び始める梅の花。お母様の体調も心も、安定してこられたご様子。少しずつ暖かくなっていく日々と、梅の花の凜とした様子と、お母様の穏やかな様子が深い情感と共に描かれていて心に残る句である。
ひとたたきして香り立つ山椒の芽
神奈川 後藤勝久
         摘みたての山椒の芽にあるほのかな香りを、ぱんと叩いて香り立たせる。なにげなくやる仕草であるが、叩けば香り立つということを普段自然としているのだろう。何かの成分が立ち上がるのだろうか。そんな実体験のなかからできた句であり、俳句にリアリティが感じられる。
*津軽には津軽山唄春を待つ
青森  福士信平
        青森の民謡の津軽山唄は、樵の山への祈りの唄から来ているそうだ。故郷の自慢の唄にしみじみと津軽への思いが溢れて来るようである。「春を待つ」という季題が、青森の厳しい冬を思わせる。津軽山唄の伸びのある歌声も聞こえてくるようだ。季題がよく効いている。
兼題
選者:大高霧海、高橋将夫、田島和生、田中陽、中西夕紀、名和未知男、能村研三(敬称略)
今月の兼題…【明】
兼題-大高霧海・選
袂別の独楽はじけたり寒明忌
愛媛 境 公二
八月六日明暗分けし定めかな
広島 別祖満雄
漱石を読めば明治の風薫る
東京 棚木金剛
兼題-高橋将夫・選
平凡に明星が有り昭和の日
東京 川瀬佳穂
亀鳴くや行方不明の資本論
愛知 石井雅之
生涯の明るき時よ上り鮎
愛知 近藤喜子
兼題-田島和生・選
木沓鳴る明治の森に初音かな
埼玉 田中道敏
冬霧の東京駅の窓明り
東京 菊地雅子
露天湯の底まで紅葉明りかな
大阪 熊川暁子
兼題-田中陽・選
文化の日またも明治へ戻すとや
京都 福地秀雄
明大の反戦広告白泉忌
群馬 山田越風
明らかな誤字黒黒と受験絵馬
福井 木津和典
兼題-中西夕紀・選
もの嚙めば力や凜と寒の明
東京 田守三里
明日は何せむと受験の帰り道
福岡 髙山桂月
落第の所見欄にも明朗と
東京 野川美渦
兼題-名和未知男・選
長堤や菜の花明り蕪村起つ
和歌山 尾崎 均
今日は今日明日は明日木の芽風
北海道 井上映子
明日も又かく米を研ぎ畑を打つ
奈良 髙畑美江子
兼題-能村研三・選
百筋の途一本に年明ける
東京 戸井田英之
清明や八方に利く仁王の気
神奈川 大矢知順子
和布刈禰宜明衣で夜をひらきゆく
群馬 本田 巖





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2016年| 12月11月10月9月8月7月6月5月4月3月2月| 1月
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