●毎月25日発売
●A5判  ●定価1,200円

○ 月刊 俳句界 2017年2月号 ○
特   集
俳人必携
未来に残す俳句論
特   集
岡本眸「朝」終刊
特別作品50句
寺井谷子
充実の連載陣!
「牡丹と怒濤ー加藤楸邨伝」石寒太、他
セレクション結社
「浮須」大木さつき
俳句界NOW
坪内稔典「船団」
甘口でコンニチハ!
趙博(シンガーソングライター)
amazonでもご購入いただけます→
○ 別冊付録 / 投稿 俳句界 ○
質量とも類を見ない、圧倒的に充実した総勢29名の選者陣!

添削教室選者
河内静魚、山尾玉藻(敬称略)
俳句トーナメント選者
石井いさお、五島高資、佐久間慧子、堀本裕樹(敬称略)
雑詠選者
有馬朗人、稲畑廣太郎、今瀬剛一、大串章、大牧広、角川春樹、岸本マチ子、古賀雪江、坂口緑志、佐藤麻績、鈴木しげを、辻桃子、夏石番矢、西池冬扇、原和子、山田佳乃(敬称略)
兼題選者
大高霧海、高橋将夫、田島和生、田中陽、中西夕紀、名和未知男、能村研三(敬称略)


  【下の各画像をクリックしますと、今月の各コーナーの授賞作品がご覧いただけます。】


俳句ボクシング・今月のチャンピオン
選者:石井いさお、五島高資、佐久間慧子、堀本裕樹(敬称略)
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
ランナーを包む毛布も倒れけり
茨城 林 秀峰
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
空の穴にはまる不死鳥月となる
石川 山下水音
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
桃吹いてしづかに暮るる峡の畠
兵庫 山尾カツヨ
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
冬深し九百円の亀眠る
神奈川 井手あやし
雑詠
選者:有馬朗人、稲畑廣太郎、今瀬剛一、大串章、大牧広、角川春樹、岸本マチ子、古賀雪江、坂口緑志、佐藤麻績、鈴木しげを、辻桃子、夏石番矢、西池冬扇、原和子、山田佳乃(敬称略)
雑詠-有馬朗人・選
戈壁砂漠銀河果てなき夜汽車かな
三重  堀越 毅
モンゴル地方から天山南路に至る大草原。その一帯に砂礫が広がっている。それがゴビ砂漠である。西安や甘粛省の省都・蘭州を経て更に西へ高速鉄道が伸び、途中戈壁砂漠を通過する。シルクロードの地でもある。夜汽車で銀河を望みながら砂漠を越える気持が描かれている。
ポタージュの静かな黄色雪を待つ
鳥取  石渕さゆり
冬に入って静かな午後、昼食を採っている。或いは夕食かもしれない。家の外の気温はかなり下がって来た。静かな美しい黄色のポタージュを、ゆっくりと一さじずつ味わう。その静けさの中、雪が降って来そうな予感がするのであった。雪の降りそうな日の様子が佳く描かれている。
立冬や星座それぞれ位置につき
大阪  石川友之
立冬の日の夜、空を眺めて見ると、オリオンなど冬の星座が輝いている。まさにすっかり冬の星座である。どれも、きちんと正しく自分の位置を占めている。立冬らしく厳しく並ぶ星の姿を佳く描いている。
雑詠-稲畑廣太郎・選
秋天を技に入れつつ大道芸
福岡  本郷実津子
秋の日に道端で大道芸を披露している人である。秋天まで技の中に入れている、という表現が何ともダイナミックで、大道芸人の爽やかな躍動感が伝わってくる。周りを囲む観客の歓声も聞こえてきて、さぞ素敵な芸が繰り広げられているのだろう。季題が動かせない程に効いている。
箱船の恵方さ迷ふアララト山
北海道 金山敦観
旧約聖書で語られているノアの大洪水である。善人であったノア一家は箱船(方舟)を作って一番ずつ動物を乗せ、神の御加護で大洪水の間も溺れることなくその箱船に守られ、現在ではトルコにあるアララト山に漂着したということだ。季題が不思議な効果を生み出している。
*不可思議てふ数の単位や銀河濃し
山口  笠ののか
一般的に数の単位というのは生活の中ではどの位の大きさまで使うのだろう。国家予算等の単位は兆で、これでも個人で使う数字からはかなり逸脱しているだろう。この「不可思議」は、十の六十四乗、あるいは八十乗というべらぼうな単位だが、星の世界では不思議ではないのだろう。
雑詠-今瀬剛一・選
青空に音の散らばる松手入
奈良  中野庸二
実に清々しい作品。雲一つないような秋晴のもと、鋏の音が快く響く。私も松の手入れを人に頼むことが多い。それを見ているとそれはそれは丁寧な作業である。鋏で枝を切り下ろす。葉の一つ一つを摘むように剪る。その度に鋏の音が快く響く。「音の散らばる」という表現が巧い。
*大土手を男が走る秋出水
岐阜  佐久間 鮎
春の出水は融雪によるもの、夏の出水は梅雨と関連がある。わざわざ「秋出水」というのはその背後に台風等の被害、特に稔りの時期を迎えた田への影響が心配されるのである。この作品では土手を男が走っている。川が氾濫する恐れでもあるのだろうか、必死な表情まで感じとれる。
秋の日の人より大き人の影
三重  岡田良子
秋の深まりは物の影の濃淡によって感じることが多い。秋が深まるにしたがって、物の影が印象的になってくる。この作品はそれを「人の影」で意識している。自分の影であろうか。おそらくは秋も深まった頃の感じであろう。それも夕暮れの感じと私は受け取った。
雑詠-大串章・選
旅の夜の地酒静かに牧水忌
埼玉  掛川重信
旅先で静かに地酒を味わっている。この句は座五に「牧水忌」と置くことによって見事に完成した。ご承知のように若山牧水は旅を愛し酒を好んだ。〈幾山河越えさり行かば寂しさの終てなむ国ぞ今日も旅ゆく〉〈白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒はしづかに飲むべかりけり〉が代表作。
ユトリロの絵の中の街秋の風
兵庫  前田 忍
この「絵の中の街」はパリの市街地。モーリス・ユトリロはフランスの画家でパリの市街風景を好んで描いた。そのユトリロの絵に「秋の風」を感じとったところが日本の詩・俳句らしい。ユトリロの落ち着いた筆致と色彩は、春の風ではなく秋の風が相応しい。
廃校の黒板に文字小鳥来る
神奈川 田中 仁
少子化の影響か、近頃「廃校」が増えてきた。その廃校の黒板に「文字」が消されず残っている。最後の授業の時に先生が書いた文字か、あるいは生徒たちが寄せ書きのように書き残した文字か。いずれにせよ、かつてこの教室で勉強に励んでいた人たちの息吹が伝わってくる。
雑詠-大牧広・選
もうこれぬと紅葉かつ散る墓に告ぐ
大阪  秋山具輝
深い心情が伝わる。毎年幾度となくこの墓(亡き夫人と思われる)に詣でていたが、自分も寄る年波、この墓詣でが最後になるかもしれない。紅葉をまとっている墓に呟く言葉は心底胸をうつ。秋が深まって冬がくる。そのような淋しさも俺がそちらへ行くからと呟く。佳什である。
看護士の元気が救ひいわしぐも
神奈川 安田直子
病院か施設かの所感句であろう。なんとなく心が萎えているとき、きびきびと明るい看護士の対応に元気が出てきた。たしかに、こうした明るい対応をされると、心もそうだが、体の方も快方に向ってゆく気がする。ふと窓外に目をやると空一面の鰯雲。気持がひらいて元気が出てきた。
戦争は金になるぞと鉦叩
神奈川 荒谷 誠
戦争の裏の実体をまっすぐ詠んでいる点に共感した。たしかに武器を製造している人には戦争が、たしかな販路となる。恐ろしいことだが、戦争の実体をついているこの俳句には、注目しなければならない。秋も深まって鉦叩きが妙に澄んで聞こえる。
雑詠-角川春樹・選
がり版を刻みし夜や火の恋し
北海道 花畑くに男
かつては、がり版による印刷物が学校内の配布物や同人誌などに用いられたものであるが、めっきり姿を消してしまった。がり版を持ってくることで、作者の青春時代に思いがおよび、季語「火恋し」が象徴性を帯びている。
登りきり蜻蛉の国を見てしまふ
青森  青田士郎
村上鬼城の〈川底に蝌蚪の大国ありにけり〉という作品を踏まえているのだろう。里山の展望台や頂上で蜻蛉の群れに出会った感動が伝わってくる。「見てしまふ」という措辞によって、一句の物語性や民話的な懐かしさが深まっている。
人形工房路地に零しぬ夜なべの灯
埼玉  清水由紀子
人形工房という場所の設定がいい。これによって、読者に伝わるイメージが具体的で鮮明になっている。また、季語と照応して、灯火に照り映える人形の貌がありありと見えてくる。
雑詠-岸本マチ子・選
紅さして気取る初孫七五三
東京  片山惠夫
女の子というのは、いくら小さくても女であり、女を匂わせるもの。そのため紅をさして気取るという仕草が、いかにも愛らしく可愛くうつる。おじいちゃんもそんな初孫を見てどんなにか嬉しいことでしょう。
観覧車つるべ落しをまのあたり
神奈川 浅見咲香衣
観覧車の中でトップに達した時、突然つるべ落しに出合ったらどんなにびっくりするだろうか。日が沈むのもそんなに急ではないと思うのだが、そもそもそんな場所でつるべ落しを目の当たりにする事なぞ信じられないような出来事でしょう。
老木にして渾身の山紅葉
石川  かくち正夫
「渾身」が素晴しい。年を取ると渾身がなかなか。この老木は、「今年こそは今年こそは」と、満身の力をこめて紅葉しているのかもしれない。なぜか切なくて美しい。
雑詠-古賀雪江・選
無月なり声と足音だけ通る
愛媛  宮田定實
月の無いことを「無月」と用いている。そんな無月を、話し声と足音で、二人あるいは三、四人の人が去って行ったようである。俳句は足で作るものという教えの通り、何かを発見するためには自らが体を動かさなければ何も得られないのであるが、このように耳で感じることもある。
大根干し徐々に広がる日の匂ひ
千葉  成田杏一
沢庵づけにするために大根を干す。梯子状に連ねて縛ったものを日当たりの良い、西日のよく当たる丘などに架木に吊るして乾燥させる。真っ白な大根が並び、日を浴びて輝いている様はまぶしいほどの景観となる。やがて水分を失って日を吸いつくした大根は独特の匂いを発する。
朝霧におおわれ村の動き出す
大阪  岡野和代
霧は一年中であるが、特に秋に多いので秋の季語となっている。一面霧に覆われた村の朝。そんな中で、遠くで牛の啼き声がして、人声がして、村の朝は始まっている。観光俳句ではなく、作者の実際に住んでいる峡の村の、何でもない朝の景の中で詠まれた一句。
雑詠-坂口緑志・選
鶏二忌の鷹日輪をよぎりつつ
愛媛  境 公二
「鷹の鶏二」と呼ばれ〈鳥のうちの鷹に生れし汝かな〉〈巌襖しづかに鷹のよぎりつつ〉〈鷹匠の指さしこみし鷹の胸〉など数々の鷹の名句を残した橋本鶏二の忌日は十月二日。鷹揚という言葉があるが、何物をも恐れず悠然と日輪の前をよぎる鷹は、まさしく鶏二の詠んだ鷹である。
*不可思議てふ数の単位や銀河濃し
山口  笠ののか
不可思議という数は、思ったり議論したりすることが出来ないくらい大きな数で、諸説あるよ うだが一般的には十の六十四乗である。つまり、ゼロが六十四並ぶ数。光が一年間に進む距離、一光年は十兆キロ弱。それでもゼロは十三だから、大きさの程が分かる。銀河を仰いでの感慨である。
新涼は松園の画く女のごとし
徳島  神野喜美
数々の美人画を世に残した日本画家、上村松園。その松園の描いた着物姿の女たちから、初秋の涼しさを感じ取る作者。「初秋」や「新秋」と題した作品の涼やかな目の女たち。新涼というに相応しく、美しい女たちである。
雑詠-佐藤麻績・選
鷹柱高し湖真っ平
大阪  小畑晴子
鷹と言えば南島では差羽を指すが、秋に南方に渡るに先立って、上昇気流をとらえて上昇する。その多くの鳥が柱状になることを鷹柱と言う。湖はあくまで真っ平である上に鷹柱が出現したら壮観この上ないことだろう。貴重な光景を捉えた秀句である。
柿右衛門の濁りなき赤秋気満つ
福岡  荷宮克代
江戸時代前期に赤絵磁器を完成し、代々続いて今日に至っている有田の陶工、酒井田柿右衛門。その様式は独特の美しさがある。まさに濁りのない色絵特有のものである。秋の澄んだ空気の中ではその美が更に冴えているはずだ。
竈猫三百年の厨かな
神奈川 盛田 墾
寒さが苦手で竈や灰のぬくもりに潜り込む猫をかじけ猫などともいう。一方、三百年を経た厨とは大層な歴史をもつ台所である。それは猫の居心地のよい場所にちがいない。猫も老いた猫なのだろう。ぬくぬくと終日厨に眠って過ごす様子が、この言葉少なの作品から明らかに伝わる。
雑詠-鈴木しげを・選
*不可思議てふ数の単位や銀河濃し
山口  笠ののか
一、十、百、千、万、億、兆、京。数の単位は、このぐらいのところまでは言える。調べるとその先に十三もある。「不可思議」はふつう言葉では表現出来ないことをいう。数でいえば十の六十四乗。まさに不可思議の世界。銀河も何億光年の宇宙。作者の悠久はものへの憧憬である。
亡き父のカフスボタンや秋の雨
東京  杉本とらを
この節はカフスボタンをしている人を見なくなった。日本の高度成長期にはサラリーマンは皆付けていたように思う。作者の父上もワイシャツの袖口をカフスボタンで飾って出勤していたのだ。父の形見に在りし日の父を偲んでいる。季語の「秋の雨」が父子の微妙な情を滲ませている。
身に入むや堂の一机に写経束
兵庫  野原由紀
大きな寺を訪れると、まず写経をしてから本堂のみ仏に参るということがある。結界に入って心を鎮める効果と思う。写経の本質は亡き人の供養のため心をこめて経本を書写すること。掲句はそうした写経の束が仏前の机に堆く供えられている。「身に入むや」の季語はうごかない。
雑詠-辻桃子・選
秋耕す村を継ぐ子になりきつて
北海道 大橋嶺彦
大規模な農の村のようだ。成長した子は、今、農を継ぐ子になりきって秋の耕しに汗を流している。それはこの村の農を継ぐことでもあるのだ。親である作者は、子に農を継いでほしいと思っていた。さまざまな葛藤の果てに継ぐ決心をしたのだろう。作者の気持が感じられる句だ。
踏みさうな二頭の影や秋の蝶
愛知  川口健次
秋草の咲く野の道。そのほとりを二頭の蝶がもつれ合って飛んでいる。秋の日に、くっきりと道にまとわり落ちているその影を踏みそうになるというのだ。影を踏んだところで何ということもないのだが、踏むことを躊躇する気持がある。秋の蝶なればこその危うい営みを捉えている。
声変りせし子まだの子運動会
東京  松尾正晴
小学校の運動会。応援の歓声がにぎやかだが、その一画から甲高い声と声変わりした低いだみ声の応援が聞こえる。高学年になると、声変わりした子とまだの子がいるのは不自然なことではないが、あまりにも違う声にハッとしたのだ。運動会をこのような観点から描写した句は珍しい。
雑詠-夏石番矢・選
あの薔薇を想像すれば石動く
福島  呼吸
既成俳句のなぞりとは別の書き方の秀句。「薔薇」が季語だのという低次元の発想とは別次元。「石」と「薔薇」の寓話が一句に展開している。石を動かす、奇跡の「あの薔薇」とは一体何だろう。天界の女神の化身か。この世の玄妙か。英語などに翻訳すれば、よさが一層はっきりする。
鹿や夜人面となり目に泪
静岡  宮田久常
夜だけ「人面」になる鹿。そして日中生きる苦痛を満面にたたえる。その象徴が「泪」。松尾芭蕉の「行く春や鳥啼き魚の目は涙」の本歌取りを明確にするため、初案「目に泪」を「目は泪」に。こうすると、目自体が「泪」という強調になる。「鹿や夜」と、第三音で切る口調は貴重
神の留守背中に刺さる言葉の矢
神奈川 加藤静江
現在の日本では、陰湿な言葉の傷つけあいが、やさしさと気遣いの仮面の下に増殖している。背中にさえ、背中にこそ「刺さる言葉の矢」は、喜びを与えるものではない。そこに「神の留守」を持ってきたのは、季語でとりあえず穴埋めをした感触が残るが、一句としてはできている。
雑詠-西池冬扇・選
*大土手を男が走る秋出水岐
岐阜  佐久間 鮎
日本の気候では春の融雪、梅雨、台風や秋の長雨などで洪水が起こりやすい。特に今年の出水は深刻であった。掲句は人間の営みの景であり、水嵩が増しつつある川の土手道をわらわらと走る男の姿がリアルである。大土手といったところに不安感と安心感のないまぜとなった趣がある。
空壜に抜き釘たまり雁わたる
奈良  能登つくも
この句の面白さは非日常的な「空壜にたまった抜き釘」というモノにある。リアルではあるが非日常的な独特の景を表現。「雁わたる」という季語は、秋元不死男の句や雁供養をイメージさせる。海岸に打ち寄せられた木片を拾うように抜き釘を壜に拾う人のイメージである。
台風一過カバのモモ子は子を産みぬ
長崎  堀内夢子
動物園の動物は句材としやすいらしく、楽しい句が多い。非日常的な空間が俳句的なのかもしれぬ。姿自体に俳味があるといっては河馬に失礼だが、モモ子という「かわいらしい」名前がそれを強調している。台風一過と子を産むという非日常的なコトの取合せが滑稽以上の趣を生じた。
雑詠-原 和子・選
碑は石に独歩旧居の秋の声
福岡  洞庭かつら
自然主義文学の先駆けとして知られている国木田独歩の旧居の佇まいが詠まれており、「碑は石に」の何時か自然に溶け込んだかのような発見もさることながら、一句をつつむ季語「秋の声」に注目したい。「秋の声」はこれといった具体的な物音を指さず、そこはかとない気配である。
穴まどひ神の石段のぼりゆく
香川  大野領子
穴の中で冬眠する蛇は、春の彼岸に穴より出て、秋の彼岸に穴に入るが、仲秋を過ぎても穴に入らないものを「穴惑ひ」という。あらぬ所でさ迷っている蛇に出会うと、一抹のあわれさを感じる。しかし掲句では、神へ通じる石段をのぼってゆくとある。元元、霊的な蛇の行動が面白い。
落葉掃く無念無想の作務の僧
東京  徳原伸吉
まさに、修行の僧の姿が清々しく捉えられている。無念無想とは一切の妄念を離れることであるが、落葉を掃くことのみに集中、その先は虚心ということだろうか。作務の僧ならずともたかが落葉掃きと思わずに、日常の中でも、こうした虚心の世界に時に触れてみたいものである。
雑詠-山田佳乃・選
T シャツに人の顔ある文化の日
宮城  丸山千代子
「文化の日」という季題を詠むのは難しい。Tシャツはこの時期にあまり着ないが、重ね着の下ならば着るかとも思う。人の顔を図柄にするにはやはりTシャツでなければならない。人の顔が大きく描かれている視覚的なインパクトと文化の日が妙に合う。句材の取合せがうまい。
押入れの玩具鳴り出す夜長かな
宮崎  萩原郁美
スイッチをいれれば音が出る玩具が巷にはあふれている。押入れのおもちゃ箱には沢山の玩具が詰め込まれているのだろう。互いの重さで時折鳴り出すのだ。夜に勝手に鳴り出す玩具は、どこか妖しい感じがする。物をしっかりと描くことで夜長の雰囲気を感じさせて印象に残る一句。
星流れぽろんと終はるオルゴール
埼玉  小牟田靖子
流れ星とオルゴールの取合せがロマンチックで、「ぽろんと終はる」という描写が的確である。流れ星がぽろんという金属音を立てて飛び込んできたようなイメージで、その終着点がオルゴールのようにも感じられるのである。流星の心惹かれる一句である。
兼題
選者:大高霧海、高橋将夫、田島和生、田中陽、中西夕紀、名和未知男、能村研三(敬称略)
今月の兼題…【地】
兼題-大高霧海・選
ボールへ殺到のラガーの地ひびき
東京 岩見陸二
秋深む地の塩求むこの濁世
福岡 宮辺博敏
ジェット機の轟音絶えざる基地秋暑
東京 薬丸正勝
兼題-高橋将夫・選
わたあめを巻く寸前の霧盆地
広島 日野栄理子
竹馬のはじめは地面ばかり見る
三重 藤原 紅
月の土地買ふ人居りて誰が売る
神奈川 百瀬美登里
兼題-田島和生・選
地吹雪の中の声明永平寺
広島 津田和敏
文机に地球儀ひとつ文化の日
鹿児島 米原淑子
地震の来て座り込みたる大根畑
広島 田中京子
兼題-田中陽・選
地上にはまだ夢あるか平成終る
香川 磯﨑啓三
稲刈りて祈りの尽きぬ地球かな
宮城 丸山千代子
凍る夜の地下道に孤児のゐた戦後
神奈川 鎌田保子
兼題-中西夕紀・選
綿の実のはじけて白き地平線
東京 中村わさび
鷹渡る天地遮るもののなく
神奈川 三森 梢
黄落や蟻の巣といふ地下茶房
三重 藤原 紅
兼題-名和未知男・選
開墾地捨てていくとせ月渡る
大阪 秋山具輝
地下足袋の行者の消ゆる霧の中
広島 田中京子
原子炉の地続きに生きすみれ草
東京 品田冨美子
兼題-能村研三・選
露路地の奥なる荷風旧居かな
千葉 原 瞳子
断崖の地を蹴り空へ青鷹
東京 関根瑶華
満月の滴に洗ふ地球かな
福岡 有田真理子





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2016年| 12月11月10月9月8月7月6月5月4月3月2月| 1月
2015年| 12月11月10月9月8月7月6月5月4月3月2月1月
2014年| 12月11月10月9月8月7月6月5月4月3月2月1月
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