●毎月25日発売
●A5判  ●定価1,200円

○ 月刊 俳句界 2015年11月号 ○
特   集
正岡子規の野望
病に臥すまでの子規
特 集 2
北斗賞作家座談会
川越歌澄、堀本裕樹、髙勢祥子、涼野海音、藤井あかり
充実の連載陣!
「牡丹と怒濤ー加藤楸邨伝」石寒太、俳句の「読み」を読むー岸本尚毅、他
特別作品50句
角川春樹
俳句界NOW
山本比呂也
甘口でコンニチハ!
朴慶南(作家)
魅惑の俳人 85
桂信子
amazonでもご購入いただけます→

【下の各画像をクリックしますと、今月の各コーナーの授賞作品がご覧いただけます。】

俳句ボクシング・今月のチャンピオン
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
捕虫網風追つてみて買ひにけり
千葉 岩瀬孝雄
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
青鷺に時の止まりし水面かな
東京 川原瀞秋
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
夕焼雲探しゐるもの忘れけり
矢作十志夫
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
泉湧く魁夷の青を湛へをり
山口 御江やよひ
雑詠
雑詠-有馬朗人・選
月鉾の月を揺らして曳きゆけり
大阪 春名 勲
祗園会の山鉾巡行の光景である。さまざまな鉾の中でも月鉾は美しい。その月鉾の上に夕月が輝いている。鉾が動くにつれて月が揺れる。月鉾らしく月を揺らして曳かれてゆくと描いたところが佳い。
江戸の地図水争ひの地に朱筆
兵庫 原 英俊
江戸の絵地図であろうか。その地図に朱筆が加えられている所があったので、何のためかと読んでみたらば、水争いがあったと書かれていたのである。神田用水を始め多くの用水が作られた江戸であったが、それでも水争いがあったとは面白い。
包いづこ遊牧の地の夕焼けて
静岡 宮田久常
モンゴルの草原の雄大な夕焼けを描いた句である。そこには羊や牛馬などの家畜の群れとともに移動して行く遊牧の人々が働いている。この草原のどこかには彼等の住居パオ(包)がある筈と探しているのである。パオはゲルとも呼ぶ。草原の夕焼けの中に立つ旅人の旅愁が感じられる。
雑詠-稲畑廣太郎・選
夜ごと来る守宮を心待ちにせり
愛知 山口 桃
東京都内の筆者の自宅も、建てて何年も経たないうちに守宮が棲み付いた。人によってはグロテスクに思えるようだが、害虫を食べたりして、家の守り神のように思われている側面もあるようだ。作者も、まるで友人のように思っているような表現で季題を明るく捉えている。
香水やエレベーターの五秒間
北海道 髙畠テル子
汗の匂いの対処法としてなど、夏の季題である香水だが、香水をつけている人とエレベーターに乗り合わせたのである。その香りが作者にとって、どのように感じたのかを想像するのが楽しい句。五秒という短いようで長いような、微妙な時間を考えるのも一興である。
石橋をたたいて蟻の渡りけり
長野 種山せい子
「石橋を叩いて渡る」という諺はどなたも御存知であるが、まさか蟻に当て嵌めるとは何ともユニークである。確かに蟻の働いている様をよく観察していると、何か人間にも共通するような動きが見て取れるのではないだろうか。季題を通して風刺の心も感じ取れるようだ。
雑詠-茨木和生・選
八月やわけても昭和二十年
三重 渡邊紘男
「八月や」と名乗り出る如くに詠んで、「わけても」と強調して「昭和二十年」と結んだ句の強さ。「昭和二十年」というと八月六日の広島、そして八月九日の長崎への原爆投下、そして八月十五日の終戦と続く。もちろんそれまでの各地の大空襲も含めての「昭和二十年」である。
ちぬ釣るや筏は太平洋の上
三重 森下充子
ちぬ釣りは海上に組まれた筏の上で釣ることが多い。しかも内海や入江などの波静かな海上での筏釣りであることが多い。しかしこの句、思い切って「筏は太平洋の上」と大きく詠んだことが成功している。もちろん、沖に太平洋の広がりの見える筏の上でのちぬ釣りである。
颱風の眼という臍のごときもの
愛媛 坂本千惠子
ふつう台風と書くものだが、「颱風」と書かれると重々しく感じられる。人工衛星で上空から捉えられた「颱風の眼」は、いわれる通り、確かに「臍のごときもの」である。その勢力が強いほど臍の穴はしっかりと窪んでいて、その穴に風が吹き込んでいるようにも見える。
雑詠-大串章・選
兵役のなき国に住み草むしる
福岡 鶴田独狐
兵役は軍務に服する務め。嘗て我が国では赤紙一枚で戦地へ駆り出され多くの人々が命を失った。しかし、今は兵役を強いられることもなく戦地へ赴くこともない。その有り難さを思いながら、草をむしっているのである。「兵役のなき国」がいつ迄も続くことを願わずにはいられない。
海開き祝詞に続くフラダンス
三重 石田ひでお
今日は海開き、砂浜では祝詞に続いてフラダンスがはじまる。楽しく明るい光景である。海開きといえば、嘗ては笙・篳篥の音ともに巫女の舞が行われたものである。しかし、今やハワイアンが流れフラダンスが行われる。おごそかな祝詞と華やかなフラダンスの取合せが現代的である。
稲の花道を訊ねて道連れに
千葉 上田久美子
一面に広がる稲の花、進むべき方向が分からなくなった。たまたま出会った人に道を聞くと自分もそちらの方へ行くから一緒に行きましょうと言って下さる。好意に甘えてしばらく行くと、目的地が見えてくる。さりげない句だが、「旅は道連れ世は情け」という言葉を思い出させる。
雑詠-角川春樹・選
水替えて金魚の空を大きくす
三重 圦山勝英
一読して、印象鮮明な句意である。この句の眼目は、空を大きくした、という作者の感動にある。金魚へのいたわり、いのちへの慈しみが大らかに詠われている。
死んでゆく力残して秋の蝶
奈良 宮武孝幸
春蝶、夏蝶、冬蝶というように、それぞれの季節において、蝶の大きさ、生態から受ける季感や印象は異なる。ものさびしさをまとう秋蝶を見て、「死んでゆく力残して」という感慨は、秋蝶から触発された、作者自身の生への感懐でもあろう。
大夕焼カレーライスに沈みけり
神奈川 大木雪香
快活な句意である。夕焼がカレーライスに沈むということは実際はないことだが、そのような「虚」の世界をおおいに読めるのが俳句のおもしろいところである。海辺やキャンプなど、野外で過ごす充実した時間が思われる。
雑詠-岸本マチ子・選
夕焼を刺す音したる畳針
群馬 本田 巖
「畳針」というのは、いかにもゴツクてでかい。一心不乱に仕事をしている畳屋さんに丁度夕焼があたり、思わずどきりとするほど夕焼を刺した。その音の響きに、「夕焼、大丈夫?」と心を痛めた本田さんの心と畳針に刮目です。
緑陰に化粧を直すちんどん屋
群馬 小暮駿一郎
まず「緑陰」がいい。いかにもほっとする。あせだくになり、炎天をあるいてくるちんどん屋さんのあの姿を想像する。そこに緑陰。一寸休憩しながらも化粧を直す商売熱心なちんどん屋さん。心意気がいかにも嬉しい。
少しだけ泣いてシネマを出れば虹
北海道 井上映子
この間『ビルマの竪琴』を観た。「少しだけ泣いた」というその気持ちがよく分かる。「シネマ」というのもいい。昭和の匂いがする。そんな追憶に浸り、少し泣いた顔を直しながら外へ出てみると、なんと大きな虹。きっといい事がありそうです。
雑詠-坂口緑志・選
父の日や存問のチョコ娘より
福井 加茂和巳
父の日は六月の第三日曜日。その父の日に、遠く離れ住む愛娘なのであろう、チョコレートが送られてきた。そのチョコレートには、父の健康を案ずる言葉が添えられていたのであろう。遠く離れて暮らしているほど、父を気遣う思いは強くなるようである。
蓮ひらく内なる光解き放ち
愛知 石井雅之
蓮の蕾の中に閉じ込められていた光は、繭の中の明るさはほどであろうか。あるいは、浄土の明るさなのであろうか。その光を解き放つように、蓮の花は開く。その小さな光は一瞬にして浮世の光に紛れ込んで、何処とも行く方知れずである。
秋成の墓うしろの蟻地獄
静岡 宮田久常
怪異小説九編からなる『雨月物語』で知られる上田秋成。お墓は大阪市と京都市にあるとのことだが、その墓の後ろに蟻地獄があるという。蟻地獄は擂鉢状の穴に棲み、滑り落ちた蟻を捕食する薄翅蜉蝣の幼虫だが、その得体の知れない様が、どこか秋成と相通ずるようである。
雑詠-佐藤麻績・選
白靴が先づ下りて来る船着場
埼玉 金子慶子
どの色を身につけるかは個人の好みで決まる。この句は白靴を選んだ人物を詠まれた。季語「白靴」は夏の部に入っているが、それは清涼感を求めてのことであろう。その上、若い人物に相応しい印象がある。白靴でまっ先に下船する人は、まさに若く足取りの確かな人を象徴している。
黒揚羽一瞬鋭角に風を切る
東京 鶴田幸男
大形の揚羽蝶は四月以降に出てくる。漆黒や光沢を帯びた蝶、香気を発するものなど、五百以上の種類があると言う。黒揚羽は身近に見る蝶だが、夏めいた頃、羽音がするとさえ思う存在感がある。目前に飛び、そしてふと消えるさまは、「一瞬鋭角に〜」と表白されると納得させられる。
金婚のふたりのくぐる茅の輪かな
京都 除門喜柊
六月晦日に行う禊を「夏越の祓」と言う。浅茅を輪にして潜るのである。結婚して五十年を二人揃って来られた幸運は、年々の茅の輪潜りのお陰でもあろう。高齢化の時代であれば、こうした光景を目にする機会も多くあるに違いないが、よき景色であると言うべきである。
雑詠-鈴木しげを・選
熊蟬が鳴けば熊蟬ばかり鳴く
兵庫 森山久代
熊蟬は日本の蟬の仲間では最も大きいとされている。主に西日本の方で鳴くが、地球温暖化のせいか東京周辺でも鳴いている。熊蟬の声は「シャーシャー」とも「ワシワシ」ともきこえる。他の蟬の声もかき消してしまう。〈熊蟬が鳴けば熊蟬ばかり鳴く〉とは云い得て妙である。
大阪はやうやう暮れて祭鱧
大阪 春名 勲
鱧の旬は七月。夏祭りのある京都の祇園祭や大阪の住吉祭などには鱧は欠かせない。とくに「祭鱧」といわれる所以である。日盛りのなかなかさめやらぬ夕空は、まだ青空のまま祭の宵を迎えようとしている。作者は少しそわそわしながら祭り気分にひたっていくのだろう。
田を植ゑてふるさと広くなりにけり
佐賀 江口信義
「ふるさと」という言葉はどこか一句を甘くしがちである。しかし掲句は田植の済んだ浅みどりのひろがりが新鮮で、「ふるさと」の語がよく生きている。「広くなりにけり」は平易な言葉であるが、「田を植ゑて」につながるとふるさとへの思いがあふれてくる。
雑詠-高野ムツオ・選
蓮ひらく内なる光解き放ち
愛知 石井雅之
「泥より出でて泥に染まらず」という言葉にあるように、蓮は清らかさの象徴。茎を高く伸ばして薄紅の花を咲かせる姿は、土中で蓄えた自らの光を地上に解き放っているかのようなたたずまいである。蓮の本質を言い止めた句といえよう。
戦なき世に軍服の梅雨湿り
福岡 柿原由美子
虫干しのために箪笥から出してきたのであろう。平和な世に軍服は不要だが、この軍服があってこそ今日の平和がある。しかし、今年も梅雨の湿りを帯びている。そこに何を感じるかは読者の自由だが、軍服の湿りの重さには実感がこもる。
さがり花闇匂はせて開くかな
沖縄 安井千佳子
さがり花は沖縄など南方の湿地に咲く熱帯性の常緑高木。観賞用に栽培もされる。下向きに咲くので、この名がある。主に夏の夕方に咲き、朝には散ってしまう。「闇匂はせて」は夕闇にマングローブの下などで咲く姿を彷彿とさせるが、沖縄そのものの姿とも重なる。
雑詠-辻桃子・選
箸墓のあたりに蛇を見失ふ
奈良 渡辺政子
箸墓古墳は奈良県桜井市にある最古の前方後円墳の一つ。三世紀半ばから後半の築造とされ、一説には卑弥呼の墓とも。作者は古墳近くの道のほとりで蛇と出くわした。蛇はそろそろと体をくねらせて草の茂みに消えていった。この蛇、古墳時代の女王と通じているような妖しさがある。
残鶯や豆腐あられに切りをれば
京都 西山温子
夏の鶯は老鶯、乱鶯、残鶯などといい、山に移り営巣して盛んに囀る。この句の豆腐、味噌汁やおすましにするのか、賽の目に切っていると急に残鶯が鳴き出したのである。中七下五のリズムが快く、「をれば」の止め方に、包丁の手をとめ、「おやっ」と目をあげた感じが伝わってくる。
構はれることを拒みし端居かな
神奈川 髙橋俊彦
端居とは、縁側や縁先で涼を求めることであるが、この作者は家族であれ誰であれ、構われることを嫌がっている。こういう人物をはたから見れば、〈端居してただ居る父の恐ろしき 高野素十〉ということになるだろうか。自分だけの孤独を楽しみたいのであろう。こんな端居もある。
雑詠-夏石番矢・選
虹のなか虹見えずして虹を恋ふ
大分 金澤諒和
虹の句は幻想性の強い句が多い。この句では、幻想性と苦いアイロニーが絶妙に混じり、しかもユーモアもにじむ。初出の上の句「虹に居り」を、「虹のなか」に改めた。「虹に居り」では虹に立っていることになる。「虹のなか」では、俯瞰とすると半球形の虹の圏内の地上にいることに。
百合蝶と化して尊厳死同意書
埼玉 佐々木七重
「百合蝶と化す」は俗信季語。真夏の白昼夢にもつながる。この句の場合、高貴で美しい他界のさまに重ねている。初出は「同意書尊厳死」。これでは句に背骨が通らないので、手を加えた。「尊厳死」があまりありえない時代だから、この句にこめられた願望が生きる。
閻王の一喝あらば堂破れん
大阪 上村直子
東アジア的な幻想性濃い秀句。単なる日常のメモ書き投句のなかで光る。「閻王の一喝」は閻魔大王が起こす落雷を暗示するのだろうか。「堂」は、立派なものか、すでにぼろぼろのしろものか。こういう想像を掻き立てられる。この「堂」が国会議事堂だったら、また違う解釈も可能。
雑詠-西池冬扇・選
軍鶏の蹴り砂舞うて日の盛り
愛知 小松 温
強烈なイメージの句だ。闘鶏場は私の脳裏では今東光の『河内風土記』の世界。野次・𠮟咤・怒号が狭い枠を囲んだ男達に飛び交う。鶏の羽が千切れ飛ぶ、日盛りのコントラストの強いショット。この句は中七を「蹴り砂舞うて」と言い切らなかったことで次のシーンへの期待を誘った。
馬上より行くぞサンチョス雲の峰
神奈川 石井 勇
サンチョスはサンチョ(パンサ)のことと解釈した。馬上でドン・キホーテが昂然と胸を張り彼方なる雲の峰を示し下知を下したところである。これは写生ではないが、俳句のイメージは眼前の光景でなければならないという軛を解き放てばこういう句も生まれる。句材が良い。
包いづこ遊牧の地の夕焼けて
静岡 宮田久常
パオ、ゲルは遊牧民族の移動式住居。大草原の夕日はどんなに素晴らしいだろうか。日本人のDNAの中には騎馬民族の因子も入っているに違いない。この句は構造的には二句一章で、詩的叙情を漂わせる疑問型と用言止めの下の句で叙情味を押し出した。評価は分かれようが句材が良い。
雑詠-原 和子・選
水入りに松籟起る宮相撲
大阪 森田忠夫
出雲の野見宿禰に破れた相撲の祖・当麻蹴速の墓は、奈良県北葛城郡当麻にあり、相撲発祥の地として知られる。古代から天皇の命により行われていた宮相撲は、秋の行事として今日でも盛んである。水入り(勝負がつかない間合)に起こる松籟が掲句のイメージの決め手となり、快い。
正座して酒量の落ちぬ生身魂
兵庫 藤田かもめ
盆の月、盆棚の設えなど、八月十三日より入る盆供養には死者・生者が共に過ごす誼みがある。生身魂とはこの世に矍鑠と生きておられる高齢の方を指すが、掲出句は、その矍鑠振りが半端ではない。正岡子規に〈生身魂七十と申し達者なり〉があるが、生身魂の存在はかくありたい。
朝まだき朝顔の名は団十郎
徳島 藤本紀子
朝顔の名に「団十郎」があることは聞いていたが、改めて掲句を読んで、その名の朝顔の咲き振りに出会いたいものだと思った。市川宗家団十郎、荒事の開祖でもあるその名であるが、意外とやさしい面立ちか。いずれにしても、清々しい「朝まだき」に咲いてこそ団十郎が生きてくる。
雑詠-保坂リエ・選
映りたる雲に乗りけり水馬
愛知 川口邦彦
作者は今、公園のベンチで一人静かに池を眺めている。すると池の面に雲が映っていた。その雲の上に、音もなく何処からか一匹の水馬が来て乗っている。気楽な気持ちで手帳にそのままの一句を記した。句に苦労のあとが全くない。まさに授かった一句。大事にして貰いたい。
健やかな網戸の奥の暮らしかな
東京 佐藤多美子
夏らしい情趣豊かな建具の一つに網戸がある。網戸を通して家の内が涼しく見え夜になると灯がともり美しい。商店街を一寸それると、そのような家々が並ぶ。網戸の外は広々とした庭が見え四季折り折りに花を咲かせ……そんな一景を一句になさった。類句類想がありそうでない秀吟。
明易し稿紙ひと枡ずつ埋め
埼玉 成田淑美
作者は、出来上がった原稿を一心にひと枡ずつ書き込み原稿を仕上げている。季語は「明易し」。その原稿は思いのほか簡単ではなかった。予定よりかなり時間がかかってしまって、とうとう明け方になってしまった。素直にあるがままを表記したことが読者の好感を呼ぶであろう。
雑詠-宮坂静生・選
人間を一皮剥けば涼しからむ
大分 松鷹久古
「一皮」は文字通り一皮ともとれる。それができたら大いに涼しいだろう。寒いくらいだ。自分がもう一皮むけたらとう意か。涼しいも意味が深い。どうも自分は至らない、悟るまでいかなくとも幾分なりと人間の修行ができたら、ゆとりが生まれ気分が楽になるのだがくらいの意。
糶を待つ蛸蝦蛄に向け手を伸ばし
大阪 木村良昭
いかにも俳人好みの場に着眼しているが、俗な可笑しさに却って詩情がある。糶に出される蛸が横の箱に入れられた蝦蛄に向けて手を伸ばし好意を示した。セクハラではないであろうが、同類の憐れみを分かちあったのか、蛸ならしそうな行為を描いて人間まがいの可笑しみを出した。
リスボンの風に委ねむ洗い髪
神奈川 久里枕流
ポルトガルの首都リスボンはヨーロッパ最北端の坂の町。大西洋から吹いてくる風に洗い髪を委ねる。日本とは金平糖を始め室町以来交流が深い。旅先であろうか、真夏の夕べ、のんびり異国情緒を楽しむ風情が好ましい。外国詠は特殊になり過ぎてもまた平凡でも困るが、適度に巧い。
兼題
今月の兼題…【石】
兼題-大高霧海・選
楯石となりし玉砕沖縄忌
愛知 鱸 鉱志
漱石忌棹さす情も無き世かな
愛媛 境 公二
墓石の如くビルあり夏の果
埼玉 川島 盈
兼題-田島和生・選
石段の焼夷弾跡痕青蜥蜴
長崎 山本雅子
石鹸の匂ふ幼の昼寝かな
東京 杉本とらを
躓きて墓石に縋る敗戦忌
埼玉 柴田獨鬼
兼題-田中陽・選
捨て石と言はれし島や梯梧咲く
沖縄 百名 温
石段の焼夷弾痕青蜥蜴
長崎 山本雅子
石で石を打つ 人間が人間を撃つ
東京 清水滋生
兼題-名和未知男・選
漱石を子規と並べて曝書かな
神奈川 木村みのる
石榴売る少年と驢馬寄り添ひて
愛知 大島国康
白日傘石敢当の角曲がる
奈良 吉川千鶴
兼題-能村研三・選
わが影を吾が踏む石の灼けてをり
東京 関根瑶華
水切石のホップステップ虹となる
愛知 今牧俊治
箱庭に故郷の石を置きにけり
千葉 塩野谷慎吾
兼題-森 潮・選
ところ得て十五の石の涼しさよ
愛知 石井雅之
鮴汁や百万石の加賀の夜
東京 中村わさび
どの石に腰掛けようか秋の雲
兵庫 竹内信子
兼題-山下美典・選
聖五月クルス密かに石の裏
大分 森 路人
こゑあげて石咬む水や原爆忌
東京 海野弘子
夏休み第三紀層の化石掘り
東京 髙野虹子

2017年| 11月10月9月8月7月6月5月4月3月2月1月
2016年| 12月11月10月9月8月7月6月5月4月3月2月| 1月
2015年| 12月11月10月9月8月7月6月5月4月3月2月1月
2014年| 12月11月10月9月8月7月6月5月4月3月2月1月
2013年| 12月11月10月9月8月7月6月5月4月3月2月1月
2012年| 12月11月10月9月8月7月6月5月4月3月2月1月
2011年| 12月11月10月9月8月7月6月5月4月3月2月1月
2010年| 12月11月10月9月8月7月6月
定期購読のご案内
・毎月25日発売
・A5判
・定価1,200円(税込)
半年間 6,500円(700円お得)
1年間 12,500円(1,900円お得)
2年間 24,000円(4,800円お得)
定期購読は送料サービス

※定期購読割引は、直接小社にお申し込み戴いたお客様に限り、適用されます。その際、ホームページでお知りになった事をお伝えください。

※購読期間中に特別価格号が出た場合、 差額は当社で負担致します

・ご質問やご不明な点がございましたら、フリーダイヤル  0120-819-575、または、お問い合わせフォームからお問い合わせ下さい。