●毎月25日発売
●A5判  ●定価1,200円

○ 月刊 俳句界 2015年7月号 ○
特   集
俳句再入門
季語:榎本好宏、定型:鈴木太郎、切れ:原朝子、かな:山崎聰 他
充実の連載陣
牡丹と怒濤ー加藤楸邨伝/俳句の「読み」を読む 他
特別作品21句競詠
大峯あきら 伊藤完吾 柴田佐知子
俳句界NOW
藤木 倶子
甘口でコンニチハ!
小林 節(憲法学者・弁護士)
魅惑の俳人 81
飴山 實
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俳句ボクシング・今月のチャンピオン
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
ほんとうの智恵子の空の返り花
大阪 稲田稔子
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
新しき地下足袋雪囲解く
山形 鈴木花歩
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
山を出て光を流す春の川
山形 清野佐知子
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
大試験長き机の端と端
山形 武田志摩子
雑詠
雑詠-有馬朗人・選
拉麵屋の猫とも別れ卒業す
埼玉 坪井一男
大学で学ぶため故郷も出て、下宿生活をしていた。美味であり安い拉麵屋には度々通った。そしてそこの猫ともすっかり仲良くなった。今日は卒業してこの地を離れる。卒業は嬉しいが、この猫との別れは淋しい。猫との別れを強調したところが佳い。
残雪と言へども五尺合掌屋
滋賀 遠藤憲司
合掌造と言えば、岐阜県白川郷と富山県庄川上流の五箇山にみられる民家が有名である。どちらの集落も雪の深いところ。春になり、雪が融けてきた。しかし雪は深く、残雪と言っても五尺もある厳しい風土に堪えて立つ、合掌造の家々が目に浮かんでくる。
パスカルもヘッセも遠く目刺焼く
長崎 高橋栄美子
パスカルは哲学、数学、物理を研究し、信仰の書であり思考の書である『パンセ』を残した。 ヘッセは『車輪の下』、『デミアン』でドイツ教養小説の伝統を復活した。思考的文学を愛した若 い日々は既に遠い。今は目刺を焼いている。偉大な文学者に目刺を取り合わせたところが面白い。
雑詠-稲畑廣太郎・選
白鷺城白より白し風光る
神奈川 浅見咲香衣
大改装をされて、このほどリニューアルされた世界文化遺産の姫路城である。ところが色々な意見もあり、あまりの白さに白鷺城をもじって「白過ぎ城」なんて揶揄されているとも聞く。筆者は新幹線から見たが、本当にこの句のように白の極みであった。季題が効いている。
花筵一部屋借りしごとくゐる
大阪 秋山具輝
桜の花見シーズンになると花の名所では、場所取りよろしくシートが所狭しと敷かれている。 そして時間になるとそこに人が集まり花見の宴会が始まるのである。家族連れか、会社の集まり か、何れにせよそのシート、つまり花筵の上を自分の部屋に見立てているところが楽しい。
引つ張れば引つ張り返す凧の糸
京都 奥田まゆみ
すっかり正月の遊びのイメージが強いが、本来季題としての「凧」は、春がその季節である。 この句はしっかりそのことを踏まえて詠まれているのではないだろうか。清々しい春風の中、大 空に揚がっている凧の力強さが伝わってくる。春風の少し雄々しい吹き様も伝わってくる。
雑詠-茨木和生・選
口内に念仏ためて遍路行く
大阪 西村美智子
一人で歩き遍路をしている人を詠んだ句である。見ていると、そのお遍路さんは声になるかならぬかの声で念仏を唱えて歩いてゆく。そんな様子を「口内に念仏ためて」と表現したところが巧みである。
遍路みな食後の薬飲みはじむ
大阪 稲田稔子
バスを雇っての団体の遍路。お遍路さん向けの食堂で、大阪のおばちゃんたちが賑やかに食事を終えたとき、一人が「みんな忘れんと薬を飲みや」という声を上げると、一斉に薬を飲みはじめた。その道中の陽気なこと。
一ト吹きの無数が楽ししやぼん玉
大阪 吉丸照司
はじめてシャボン玉を楽しんだ幼い子供だろうか。ひと吹きすると、小さな、大きなシャボン玉が無数に飛んで空に流れていった。幼い子供は楽しくて楽しくてたまらず、もう一回、もう一回と楽しんだ。
雑詠-大串章・選
紙風船智恵子の空へ飛んで行く
東京 竹田吉明
高村光太郎の詩「あどけない話」を思い出す。「智恵子は東京に空が無いといふ。ほんとの空 が見たいといふ。(中略)阿多多羅山の山の上に 毎日出てゐる青い空が 智恵子のほんとの空 だといふ」という詩を踏まえ、「智恵子の空へ飛んで行く」と言ったところにポエムを感じる。
少子化のふらここ風に揺られをり
大分 糸永悦子
以前はよく「ふらここ」で遊ぶ子を見かけた。しかし最近はあまり見かけない。公園の遊具撤去や携帯ゲーム機の流行など、時代の流れと共に子供たちの遊びも変化してきたが、その数が減ってきたことも原因の一つであろう。少子化問題は今や日本の緊急課題である。
ふきのたうコロポックルの声聞こえ
埼玉 平川令子
蕗の薹からコロポックルの声が聞こえてくる。おもしろい発想である。コロポックルは、「(アイヌ語。フキの葉の下に住む人の意)アイヌ伝説に登場する矮人」(『広辞苑』)である。なるほ ど納得。コロポックルの声は一体どんな声であろう。
雑詠-角川春樹・選
空爆のなき平野なり田を鋤きぬ
東京 栖村 舞
今年は戦後七十年の節目として受け止められている。掲句の空爆には、東京大空襲から現代の国際紛争のことまでが含まれているのだろう。春田の土を鋤き返す農事から、人類の平安を祈る作者の様子が思い起こされる。
ラケットのガット整え光る風
埼玉 福本直子
いかにも春の光を捉えた、瑞々しい作品である。テニスラケットのガットの張りなおしに臨む作者の心おどりを、季語「風光る」が伸びやかに導き出している。学校における部活動の新入部員などにも連想が及ぶ。
草餅を買うて今日の日持ち帰る
大阪 吉田 喬
「今日の日持ち帰る」という措辞からは、草餅を土産に求めた平穏な心の様子が伝わってくる。穏やかに過ぎようとしている「今日の日」を具象化し、象徴するような「草餅」なのであろう。
雑詠-岸本マチ子・選
パスカルもヘッセも遠く目刺焼く
長崎 高橋栄美子
パスカルはフランスの哲学者・数学者・物理学者でもあった。その昔、「人間は考える葦」など、 『パンセ』をせっせと読んだ。そしてドイツの作家ヘッセの『デミアン』『車輪の下』に夢中だった。それも遠い昔のこと、今では目刺を焼く日常である作者の嘆きに大いに共感を覚える。
眠くなるまで菜の花の真中に
福岡 築山妙子
昔、「いちめんのなのはな、いちめんのなのはな」だったか、延々と続く詩を読んだことがあ るが、多分そんな情景なのであろう。「眠くなるまで」を、どうしても一番上に持って来たかっ た気持が良くわかる。
鬼どもの衣裳短し春祭
栃木 山口勝
追儺のことであろうか。悪鬼を払い疫病を除く儀式、春の祭りの鬼どもを、高校生などが受け持つのであろう。みんな大きくなって昔の衣裳では合わない。つんつるてんの鬼どもの立ち騷ぐさまが想像されて、なんとなくおかしいやら、気の毒やら笑ってしまう。
雑詠-坂口緑志・選
ひとり酌む釘煮肴に真砂女の忌
大阪 三木蒼生
釘煮は鮊子、小女子を醬油、砂糖、生姜で甘辛く煮た佃煮。熱々の御飯にのせて食べるのもよ し、酒の肴にもよしである。銀座で小料理屋「卯波」を開いていた鈴木真砂女の忌日は三月十四 日。作り立てであろう釘煮と真砂女の思い出を肴に酒を酌むのは至福の思いであろう。
紙風船智恵子の空へ飛んで行く
東京 竹田吉明
高村光太郎の妻、智恵子は「東京には空が無い」と言った。本当の空は安達太良山の上に出ている青い空だと言う。それが智恵子の空である。その空へ向かって、紙風船が飛んでゆく。夢をのせて、あるいはロマンをのせて。あどけない空への思いである。
どんど火の禱る姿に燃ゆるかな
茨城 野口英二
小正月の火祭行事である「どんど」。正月の門松や注連飾り、書初めなどを持ち寄って焼く。 この火で焼いた餅を食べると一年無病息災であると言われるなど神聖な火とされ、火勢を喜ぶこ とから、その焔に祈りの姿を見るのも頷けるところである。
雑詠-佐藤麻績・選
横顔でつらぬく子規や牡丹の芽
愛媛 徳永陽子
正岡子規の写真といえば横顔。勿論、子規自身が願ってのことだとは思えないが。この一種の不思議を正面から詠まれた作者の正眼に感心する。近代短歌や俳句の先鞭をつけた子規であるからこそ中七の「つらぬく」が生きた一句である。季語の「牡丹の芽」に力強い奥行を感じる。
サーカスの去りたる空地蝶の昼
神奈川 田中 仁
サーカスは、物哀しいジンタが聞こえてくるようなイメージの一方で夢の世界を見せてくれる。そのテントは空地に、僅かの時間止まって人生の悲喜こもごもを伝え去っていく。残された空地は蝶だけが舞っている。誰もが感じるさみしさを詠まれた一句故に、類想観は残るが秀句である。
ウインドウに爪先立ちの春の靴
東京 松尾正晴
ウインドウは季節感を象徴する処である。四季に合わせて季節を知らせ、商品を求めてもらう。重苦しかった冬を忘れ浮き立つことを望む。それを靴で伝えねばならない。爪先立ちをしたように置かれた明るい靴が功を奏するのは当然であろう。ことばを多用せずに伝達出来た楽しい作品
雑詠-高野ムツオ・選
餓島より還り耕しをられしが
愛媛 境 公二
「餓島」はガダルカナル島のこと。饑餓の果てに亡くなった兵士がたくさんいたことから生まれた呼び名だ。その戦地で九死に一生を得て帰国し、戦後の人生を農耕に捧げてきた人がとうとう亡くなった。下五の表現に万感の思いがこもる。
春泥を避難の一人として歩く
大分 下司正昭
台風でも地震でもよい。災難を避けるべく、集団の一員として春泥の道を歩いている。本来なら春到来の喜びの泥だが、今は最大の注意を払わなければならない。これも自然豊かでかつ変化に激しい島国に生まれた宿命と、そこに生きている自分を再確認している。
水底に原発はなし蝌蚪の国
神奈川 浅見咲香衣
今年も生まれた蝌蚪の大群。折からの日差しにひしめいている。むろん、蝌蚪にも、さまざまな厄難は降りかかる。しかし、それは自然の摂理。原発のように、自らの欲望のため自らを危機に陥れることはない。その生のあり方に人間の生のあり方を問いかけているのだ。
雑詠-辻桃子・選
汐干狩声が届けば手が応ふ
福岡 上野 威
潮が引いた浜では大勢が汐干狩で賑わっている。はじめはあまり遠くないところで砂を掘り浅蜊などを採っていたのだが、いつしか結構遠いところまで移動していたのである。見つけて名前を呼んだところ、手を挙げて応えた。そんな汐干狩の様子が手に取るように伝わってくる。
初蝶の止りなほして翅とづる
佐賀 篠原凉子
初蝶が来てどこかに止まった。するとそこをいったん離れてまた止まりなおした。ようやく落ち着いて翅を閉じた。しばらくそこで翅を休めるつもりなのだろう。まだ自在にどこでも行けないような、飛ぶことが覚束ないような初蝶である。初々しい初蝶の動きを丁寧に写生している。
行く人に添うて小諸の春の雲
大分 天領杉太朗
信州の小諸は高濱虚子が疎開のため移り住んだところ。長い冬のあと、ようやく春がおとずれる。虚子は小諸で〈山国の蝶を荒しと思はずや〉などの句を詠んだ。虚子ゆかりの小諸を訪ねることが一句の背後にあるのだろう。春の雲は道案内のように、行く人に寄り添っている。
雑詠-豊田都峰・選
旧姓に戻りしといふ春日傘
福井 木津和典
ひとつの物語を書き上げていることにまず敬意を表する。離婚の結果であろうが、それが円満であり、また今の幸せにつながっている。それらを「春日傘」が余すところなく表している。焦点的な語の威力を改めて感じさせられた。
立春や次の一手の桂馬打つ
三重 圦山勝英
「立春」の、少し意表をつく飛躍というか、小物ながらの「桂馬」の「一手」がなかなかよい。飛角では相手に読まれている可能性があるが、二三手先を読んでの「一手」であろう。春への心のちょっとした弾みである。
芽柳の風に失ふほどの色
大阪 佐々木加代子
柳の一番美しい時は芽吹き時である。まさしく「風」が吹けば零れてしまうぐらいの「色」に 芽吹いた時である。「風に失ふ」とは最適の用語である。観察して、用語を探す。表現の楽しさ であり、まさしく俳句の楽しみである。
雑詠-夏石番矢・選
国が瘦せ少年が病むおぼろかな
石川 かくち正夫
二〇一五年のみならず、近年の日本の時代の深層を、おおらかにかつ簡潔に詠んだ秀句。日本 という国そのものの「瘦せ」は、諸事における老化と劣化による。若い生命の病いも、憂慮すべ く蔓延している。「おぼろ」という季語が、春の季節感とともに、日本の国の曖昧さにも通じる。
三鬼忌ノ赤ノ叛乱中華街
茨城 國分貴博
西東三鬼は、一九六二年四月一日に他界した。エイプリルフールに死ぬのは、やはりこの俳人 らしい最後のパフォーマンス。この一句の「赤」は、「中華街」の外装の「赤」のみならず、三 鬼が秘めていた奇怪で制御しがたい生命力を暗示する。老いのボヤキ俳句が多い中、目立つ秀句。
揚雲雀神の寝所を覗き見る
三重 伊室美枝子
この句には添削を加えた。投句では「天の寝所」だったが、これを「神の寝所」に改めた。「揚 雲雀」は、日本の俳句ではいろいろな前例があるものの、意外に展開が乏しい。「神の寝所」を 覗き見しても、「揚雲雀」の品格も落ちないし、春の野の雰囲気もさらに楽しくなるだろう。
雑詠-西池冬扇・選
見開きのヒトの進化図春の星
神奈川 石原日月
「見開きの」と形容したことで、ヒトの進化してきた長い長い道のりを画いた樹木のような図を想像することができる。取合せの「春の星」も上句の内容にふさわしく、いかにも希望につながる新しい時代すら感じさせる。句材の趣が新鮮なこと、また提示態の組合せも好ましい。
春の闇百鬼夜行はゆっくりと
徳島 新井義典
「春の闇」と下の句で「題と述の二文節の配合」構造をとっている。「春の闇」の中にはいか にも、もぞもぞと怪異が蠢いていそうだ。百鬼夜行は日本の説話中のオハナシに過ぎぬが、絵巻 物のそれを想像したり人間社会のそれらしいモノを想像して面白い。「ゆっくりと」が春らしい。
啓蟄やハンドバッグの電話鳴る
埼玉 内田幸子
現代人でなければ理解できない句材であり趣である。そこが良い。「啓蟄」は俳人に好まれる が多くは配合の構造で扱われ、付きすぎとなりやすい。この句にはそれがない。ハンドバッグの 中で鳴る携帯電話は誰かからの誘いに違いない。動きたくなる時候だから。啓蟄の趣として新鮮。
雑詠-原 和子・選
淡海てふ大き古鏡や春の月
愛媛 境 公二
春の月は朧月で詠まれることが多いが、この句が捉えたように朧月ばかりではなく、秋の冴え た月とは趣を異にした、やや赤味の差した重い感じの艶やかさがある。「淡海てふ」とは琵琶湖 のこと。春の月に照らし出された湖が大きな一枚の古代の鏡の如くであったという感嘆の一句。
法要の男点前や松の芯
千葉 梶原ひな子
法要のため茶を立てる。故人を偲ぶ点前は男に拠る。茶道本来の姿であり、席の緊張感が伝わ る。「や」の切字も利いていて、それにより「松の芯」が季語としての本領を発揮する。枝先に 蝋燭のような新芽が立ち、巌とした緑となる「松の芯」には、まこと茶の素養に適うものがある。
一斉に渚を走り卒業す
埼玉 曷川克
卒業生が一斉に渚を走り抜ける。共に学んだ者同士の足跡が、波の寄せる渚という美しい景の中にその一瞬をとどめる。一瞬といえどそこには未来に向かう夢がある。俳句という短い詩型に籠められる過去・現在・未来が、流れの中で季語を切っ掛けとして息衝いているかのようである。
雑詠-保坂リエ・選
あたたかや石流されて丸くなる
神奈川 宮澤達也
十七文字の使い方がよい。「あたたかや」が「暖かや」では掲句の感覚が出て来ない。文字の 使い方の大事さを教えている。仕事から解放された作者が一人俳句を推敲している。「石流され て丸くなる」、やがて一句の推敲は人生そのものに置き換えられているのではなかろうか。
薬の名片仮名ばかり水温む
東京 野寄艶子
言われてみるとたしかに薬の名は片仮名が多い。寒さも漸く緩んだ頃、作者は風邪をひいたの かも知れない。何れにしろ軽い恙身になられたのではないだろうか。「薬の名片仮名ばかり」、大 きな発見である。秀句は発見から生まれるもの、体験から生まれる発見程強いものはない。
驟雨来て知らぬ同士の一つ屋根
千葉 八川信也
突然降った俄か雨、かばん、手荷物を頭に被せ、人々は走り、近くの軒下に身を寄せる。よくある事であり、誰しもが体験していること。先ず先ずはひとときの驟雨から逃れ心にゆとりが出来たとき、作者はふと辺りを見廻した。皆知らない人ばかり、そんな瞬間を一句になさった秀吟。
雑詠-宮坂静生・選
ふるさとはのつぺらぼうのままに春
愛知 橋本新一
故郷が暖国ならば冬も温かく春へのメリハリがない。「のつぺらぼう」が面白い。気候の変化 ばかりでなく昔ながらに変わらない気風も暗示した言い方で、都会暮らしをしていると、眠った ような故郷に批判の目を向けながらも、一面では心和む思いも抱いている。故郷への愛情が滲む。
若草よ起きよ起きよと火の奔る
神奈川 石原日月
春一番の野焼きは縄文以来の季節の事触れ。長い冬眠の野に火を放ち、若草に目覚めを喚起す る。「起きよ」のリフレインが快い。枯草が焼かれ、新しい芽が新しい年を荘厳する。野焼きは 一大儀式のようなもの。快活に明るく、火は音を奏でて野を奔る。野焼きと言わないのが巧み。
納棺のごとく雛を納めけり
広島 津田和敏
一年の眠りにつくのであるが、これが最後、永遠の別れのような思いだという。実際、人の世はわからない。来年が保障されているわけではない。華やかな雛飾りを仕舞う時の気持は何にもまして歳月を意識するものだ。雛人形はいつも美しく、しかし、世話人ははかなさに生きている。
兼題
今月の兼題…【海】
兼題-大高霧海・選
海女どちに桃の花照る虚子忌かな
愛媛 境 公二
海底の武蔵に届けサクラサク
長崎 坂口かづさ
海の底に都はありやがうな鳴く
東京 清水滋生
兼題-田島和生・選
断崖に海の風聴く椿かな
福島 星野みつ子
海苔掻きの海女の掛け声風に飛ぶ
静岡 渡邉春生
銅鑼打つや大島桜海へ散る
埼玉 中村万十郎
兼題-田中陽・選
昭和の日父は海軍少年兵
岐阜 遠藤 洋
この国の行方危ふき海市立つ
東京 薬丸正勝
多喜二忌や小樽は海と坂の町
東京 伏見芳村
兼題-名和未知男・選
海柘榴市を発ち山の辺の青き踏む
大阪 春名 勲
海の日の海に高祖を思ひけり
東京 川原瀞秋
みちのくの海を浄土に雛流す
神奈川 浅見咲香衣
兼題-能村研三・選
飛魚跳べり海の青さに堪へかねて
埼玉 橋本遊行
春満月淡海は大き古鏡かな
愛媛 境 公二
日本海裏声ひびく虎落笛
山形 森谷一芳
兼題-森 潮・選
晴れの海静かの海や虫細る
埼玉 諏訪一郎
海鞘食うて今生はホモ・サピエンス
愛知 石井雅之
柿若葉淡海に井伊の赤備
岐阜 大西誠一
兼題-山下美典・選
大試験終へ海原を見てをりぬ
神奈川 髙橋俊彦
海女小屋の太き鼾の三尺寝
大阪 髙田敏雄
海朧島人のほかみな流人
千葉 原 瞳子

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