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●A5判  ●定価1,200円

○ 月刊 俳句界 2015年5月号 ○
特   集
協会推薦 名講演をもう一度
ヘルマン・ファン・ロンパイ/前田弘/秋尾 敏/ウィリー・ヴァンデ・ワラ
特   集 2
特別放談〜少子高齢化の俳句の未来を考える 稲畑汀子/豊田都峰/姜琪東
特別作品21句競詠
山崎ひさを 水田光雄
俳句界NOW
いさ桜子
甘口でコンニチハ!
鎌田慧(順天堂大学特任教授)
魅惑の俳人 79
文挟夫佐恵
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俳句ボクシング・今月のチャンピオン
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
イキテカヘレ生きて帰れや冬鴎
埼玉 髙橋牛蒡
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
春炬燵寂しき足を持て余す
東京 高橋透水
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
うつし身の光合成や日向ぼこ
福井 加茂和己
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
線香を束ごと雪にさし拝む
愛媛 境 公二
雑詠
雑詠-有馬朗人・選
勝ち負けを離れてからの独楽の澄み
神奈川 安田直子
幾つかの独楽がぶつかり合って闘っている。そのうち負け独楽が次々と勢いを失って倒れて行く。最後まで残った独楽は、高ぶって勢いを見せようともせず、静かに澄んだ姿で回り続けるのであった。勝ち独楽が回り続けている様子が佳く描かれている。
かまくらを出て知る星の高さかな
神奈川 久里枕流
雪を積み上げ踏み固め、中をくりぬいた室に、水神を祭り火鉢を置いて、子供たちが甘酒を客にふるまう。そのかまくらに入って甘酒を飲み、料理を食べたりして小半時を過ごした。外へ出るともうすっかり夜になり星が高々と出ていたのである。かまくらの楽しさが伝わってくる。
手と足の覚えてゐたる手毬歌
三重 岡田良子
手毬歌を歌おうとしたが、ところどころ覚えていない。そこで立ち上って手毬をつきながら、 もう一度手毬歌を歌ってみた。手を動かし足をあげたりするとそれにともなって手毬歌がすらす らと歌えたのであった。動作に伴って歌詞が自然に出てくるところが面白い。
雑詠-稲畑廣太郎・選
敬礼の指先にある淑気かな
東京 川瀬佳穂
警察というよりは、どちらかというと自衛隊のような軍事的なイベントの情景を想像する。自衛隊員達が一斉に並んで、同時にびしっと敬礼をする姿が凜々しく目の前に浮かんでくる。「淑気」 という季題が、正月のめでたさと何か張り詰めた空気をも感じさせる。
名札のみ並ぶ花壇や春を待つ
神奈川 山田美樹子
公園等では季節ごとに花が植え替えられているようだが、特に冬から春になろうとする公園の風情は、丁度この句の情景だろう。最近は外来種のような片仮名の名前の花が多いように見受けられるが、春になるとどんな花を咲かせてくれるのか、作者の期待が季題とマッチしている。
嫁が君昭和の家を懐かしむ
神奈川 塚原紀代子
「嫁が君」とは、正月三が日に出る鼠であることはご存知の通りであるが、忌み言葉にしてはユーモラスである。最近の住宅ではとんと鼠は現れなくなったが、都心でも溝鼠はよく見る。そんな正月三が日に、この季題で昭和を懐かしんでおられる作者の詩情豊かな感性が秀逸である。
雑詠-茨木和生・選
きしきしと深山星あり寒詣
熊本 加藤いろは
奥深い地の山で仰ぐ星の数は周りが暗いだけに、驚くほどに多い。しかも山寺への寒詣の夜、 空気も凍てこんでいるため、星たちの光が触れ合ってきしきしと軋んでいるように思える。実際 にはあり得ないことだが、この擬態語が呼び起こしてくれる世界は凜として美しい。
手袋を編み出したことまだ内緒
富山 平山幹子
恋人のためにだろうか。毛糸を買ってきて、同じ色の手袋をペアになるように編み出したと想像してみたい。相手に分からないように編んでいる時の慎重さと心おどる気持が伝わって来る。「まだ内緒」という表現が初々しく、手袋の編み上がった後の様子も想像できて楽しい。
核のちり袋のままに去年今年
埼玉 大熊三郎
東日本大震災による福島第一原子力発電所から出た核の塵は除染の済んでいない地もあるため、全体でどれほどの量になるかもわからない。袋に詰められた除染後の土は仮置き場に置かれたまま今年も年を越す。
雑詠-大串章・選
自画像と云ひて笑はす福笑ひ
大阪 吉田 喬
福笑いのおかしな顔を見て皆にやにや笑っている。目隠しをとったご当人がそれを見て、「自 画像です」と即座におっしゃる。その一声にどっと笑い声がおこり、一座は大いに盛り上がる。 福笑いの楽しさを示す俳諧味ゆたかな句である。
年の市落研の買ふ羽織かな
神奈川 長浜よしこ
「落研の買ふ」が一句の眼目。十二月半ばから月末にかけて立つ年の市で羽織を買い、新年早々 おちけん舞台に上がるのであろう。落研は落語研究会の略称、大学などのクラブ活動・サークル活動の一つである。羽織を買っているのは、和服など一度も着たことのない若者かもしれない。
ぼろ市の古着に偲ぶ敗戦後
東京 竹内柳影
ぼろ市に並んでいる古着を見ながら、食うや食わずの貧しい生活を強いられた敗戦後のことを思っている。食料不足を補うため農家をまわり、着物を売って食べ物に変えた人も沢山いた時代である。今年は戦後七十年、悲惨な戦争体験を風化させてはならない。
雑詠-角川春樹・選
カウンタに猫派のそろふ十二月
大阪 清岡千恵子
バーやカフェのカウンターの景であろう。年末の忙しい時期にあっても、自分の時間をしっかりと持っている人たち。「猫派」と言い切ったことで、俳諧味のある作品となった。
揺り椅子に歳月を積み年の酒
東京 中村ゆみ子
揺り椅子に座られているのは、作者であろうか。「揺り椅子に歳月を積み」という措辞からは 年長者としての存在の重みと、家族を見守ってきた慈愛が感じられる。正月らしい家族愛に満ちた作品。
胸高に書類抱へる寒日和
兵庫 河田 烈
都会的な雰囲気をもった作品である。上五中七の「胸高に書類抱へる」という措辞が、颯爽と した人物を描いて潔い。「寒日和」との取り合わせが新鮮である。
雑詠-岸本マチ子・選
寒鴉鳴く胸のつかへを吐くごとく
京都 塩谷一雄
以前は私の住む那覇に鴉の影もなかったが、里山での暮しも楽でないのかハシブト鴉を見かける。大変賢い。その寒鴉が胸のつかえを吐きだすごとく鳴くのは滅多にない。鴉にも鴉の悩みがあるのか、例えば連れ添う相手を亡くしたとか。鴉にはいつもしてやられるがやはり痛ましい。
流鏑馬や背筋正して女人武者
東京 宇井偉郎
駆けながら鏑矢で的を射る大変勇壮な競技。平安から鎌倉時代に流行し今も続くのはそんな気風が残っているから。突然の女人武者の出現に人々は驚いたと思う。その上背筋も凜凜女人武者が次々と三つの的を射て、胸のすくような活躍を見せたら拍手喝采なりやまなかっただろう。
初夢や有る筈もなき歯を抜けり
東京 津田良輔
夢というのはいつも途方もない。三億円の宝くじに当選したり、グランドキャニオンの崖から落ちれば、夢でよかったと思う。津田さんも多分歯を抜かれるのが嫌というより、大部分の歯を抜かれたのではないか。初夢でまで有る筈もない歯を抜かれるなんてお気の毒というより面白い。
雑詠-坂口緑志・選
風花や能登の塩ふる一夜干
三重 森下充子
一夜干しは鰺、鯛、烏賊、鮎などを開いて塩を振り、数時間あるいは一日干したもの。そんな一夜干しを作るべく風花の舞うなか能登の塩を振りかけている。能登の海水は千島寒流と対馬暖流とが交錯しミネラルが多い。風花と能登の塩が力を合わせ極上の一夜干しが出来たことだろう。
水の星より生まれたる竜の玉
東京 岩見陸二
竜の髯は夏に淡紫色や白の小さな花を咲かせ秋に緑色の美しい種子ができる。冬には瑞々しく艶やかな濃い碧色となり美しい。このような竜の玉を生み出せるのは水の惑星と呼ばれる地球だからではないか。宇宙から見ると地球は青く輝いているという。竜の玉は青い地球の賜物なのだ。
冴ゆる夜の星にも寿命ありにけり
奈良 渡邉多惠子
空気の澄んだ夜の星は美しい。冴える夜の星はなおさらだろう。そんな星にも、人間と比べれば桁違いに長いがやはり寿命がある。星の寿命は重さにもよるが太陽は百億年と考えられている。青白い星は若く、白、黄、オレンジを経て赤い星は年老いた星である。悠久の中に己の命を思う。
雑詠-佐藤麻績・選
原罪のごとき林檎の芯の蜜
長崎 高橋栄美子
アダムが神の戒めに背いて林檎を食べた、それが原罪だという。林檎を割ってみると芯に蜜が見える。その透き通った蜜が甘いことを知っている作者は、誘惑されたアダムを思ったのである。その蜜こそ原罪につながるように思えたのであろう。
一病は良き言葉なり七日粥
青森 青田士郎
一病息災とは、無病より健康に注意するため長生きをすることを言う。ふと口に出た言葉に納得させられた。完璧でないことの中にこそ人生のよすががあると。一病を得ても自らのペースで生きることに安らぎがあると感じているのだ。七日粥が作者の心に添っている。
水仙の斜面に日矢の突き刺さる
静岡 渡邉春生
斜面に水仙がびっしりと咲いている。勿論、風当りも強い場所だろう。海が近いかも知れぬ。 水仙はそうした場所の寒さの中でもよく咲くものである。時折、強い日射しが矢のごとく当たる ことさえある。水仙は、風にも矢のごとき日にも強い花ではある。
雑詠-高野ムツオ・選
フクシマの帰れぬ町の初日かな
茨城 鈴木米征
「フクシマの」の「の」の次に軽い休止を入れて読みたい。その方が作者の思いがより伝わり そうだ。「フクシマ」と呼ばれてしまった故郷福島、そこにある懐かしい町へ帰り、かつてのよ うに太平洋を昇る初日に家族揃って手を合わせたい。そんなせつない願いが生んだ句である。
かまくらを出て知る星の高さかな
神奈川 久里枕流
「かまくら」は竈蔵もしくは神座(かみくら)が語源。水神を祭る子どもの行事で、鳥追いが元とも言われている。まるで胎児のような、その幻想空間から出てくると夜空の星がいっそう高く感じられたのである。雪国そのものの奥深さや宇宙の広大さが表現されている。
風花は大雪山の便りかな
北海道 窪田虹女
大雪山は北海道最高峰の旭岳を中心とした山塊のこと。目の前を舞う風花は、その連山からの便りであるという。青空の他は白一色。そこに大小、遠近、静動が鮮明に対比され、雄大な北海道らしいスケールの大きい句となった。山に対する畏敬やロマンも感じられる。
雑詠-辻桃子・選
寒の夜の攻め焚きに入る登り窯
愛知 浅井清比古
登り窯は山麓の傾斜を利用した窯で、十七世紀初め頃に朝鮮半島から伝えられた。火入れのあ と窯全体にゆっくり熱を加えて、いよいよ攻め焚きに入るというところ。寒中の一年で最も寒い 夜に、「攻め焚き」という言葉が効いている。上五を「寒の夜」から「寒の夜の」と直した。
地吹雪や津軽の電車浮くごとし
東京 高橋透水
冬の津軽の地吹雪の舞う中、電車が走ってきた。その電車はまるで宙に浮いているように見えたという。見渡す限りの地吹雪のため、車輪が地面に付いているところが見えないのである。この電車、どこか宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』の列車を思わせる。
みささぎの冬木の姿を褒めもして
京都 前川おとじ
天皇の御陵の冬の木立である。夏であれば鬱蒼としているが、今は葉を落とし尽くした裸木の林である。その冬木の姿にどことなく高貴な品格があるというのである。やはり御陵の木なのだ、ということでその気品のある美しさは納得させられる。
雑詠-豊田都峰・選
人日や今年も通過駅にゐて
埼玉 川島 盈
「人日」はその日の天候により一年の人の運勢を占ったという中国故事によるが、通勤時、「通 過駅」に電車を待つのも、今年の過ごし方に大いに連なる。しかしそれが今の立場であると認識 することは、まさしく「人日」を具体的に描いている。
存へる命なるべし春怒濤
神奈川 安藤 斉
気が付けば生死に係る事を考えているが、「春怒濤」に向かっての場合は一段と真剣さが増す。 春は風の季節、一段と怒濤が激しい。それに真向かえば厳しく運命が迫る思い、「存へる命なる べし」としっかり確認している姿はよい。
神主も巫女も村人初詣
神奈川 三田ちづ子
まさしく村の鎮守さまといった風景である。ひょっとしたら常は無人の宮居かも知れずと、正月だけは「神主・巫女」を「村人」が務めるのかもと推察したりするが、いずれにしても微笑ましい「初詣」風景である。
雑詠-夏石番矢・選
初夢はキリコの超国家的暗闘
東京 伏見芳村
他の投句二句とは全く違う大胆な作。夢の複雑さや超現実性を「キリコの超国家的暗闘」で例 示した。夢で見た映像が明確でも、その構造の奇妙さをなかなか言語では追い切れない。しかも 「初夢」。この一年の予兆でもある。世界はたしかに国境を超えた「暗闘」の時代に入った。
軍艦は白鳥たらんと砲撃てり
東京 清水滋生
これも他の投句二句をはるかに凌ぐ問題作。辛辣なブラックユーモアの一句。「軍艦」は何をしたところで、あくまでも「軍艦」。美しい白鳥になりたくて、砲弾を撃ってみても、ますます黒ずんだ「軍艦」でしかなくなる。その悪循環と悲喜劇。軍隊や戦争の本質を端的に捉えている。
一本の補助線引けば別の貌
東京 渕上信子
無季の秀句。一見抽象的だが、実は具体的。たった一本補助線を引いただけで、私たちの貌、 あるいは何者かの貌は、全く別物になる。だいたいは、恐ろしくなるのだろう。あるいは異次元 化するのか。無季の俳句には、数式のような美しさと、さまざまな真実を包括する広さがある。
雑詠-西池冬扇・選
道場旗海に突き立て寒稽古
鹿児島 内藤美づ枝
空手道場であろうか。稽古着の若者達が大海原に向かい、気合をこめて拳を突き出す。寒風に道場旗がはためく。雄壮な光景が目に浮かぶ。句意に曖昧さが何もなく潔いところが寒稽古という句材にふさわしい。単純明快であることによって人の心を強く打つことが出来る句である。
大くさめして太陽をぐらつかす
福岡 鶴田独狐
大きな嚏をした時には、体中が爆発したような気分を覚える。一瞬の眩暈すら感じる。作者は 自分がくらっとしたことを太陽がぐらついたといってのけた。このような大げさな「天動説的」 表現は読者を喜ばすことができる。非論理的文体は一種の俳句という詩のレトリックである。
フクシマの帰れぬ町の初日かな
茨城 鈴木米征
東日本大震災で福島県は原発のメルトダウンというありうべからざる災害を被った。そして福島はフクシマとなり傷跡はあまりに深い。もう四回目の3・ が巡ってくる。依然帰れぬ町は存在しており、初日は厳かにその町を照らしたのだ。俳句という表現様式が持つ可能性を信じる。
雑詠-原 和子・選
走り来る野火の早さを叩きけり
神奈川 磯村昌子
〈古き世の火の色うごく野焼かな 飯田蛇笏〉の句にも見られるように野焼は古い時代から行われていた春の行事。野火が風を呼び凄まじい光景となるが、その中を走りまわる人影がリアルに捉えられている。季節の循環により再生される行事にあらためて目を凝らす新鮮さを評価した。
追伸の大事を告ぐる寒見舞
福岡 洞庭かつら
年賀の挨拶に続く寒見舞にはきびしい寒さを気遣うやさしさがある。そのやさしさが更に伝わる一句として挙げた。追伸とは書き足らなかった追い書きを指すが、敢えて「大事」を追伸というかたちでしか告げることができなかった哀しみが、こころからなる俳句として読みとれた。
雪解して一筋の道現るる
長野 種山せい子
俳句の解釈は風土からの思いがあるが雪解けにしても夫々の風土によって遅速はもとより春を待つ真情と相俟って切実なものがあろう。句意は雪が解けたことにより一筋の道が現れたということであるが、心の中にはこの一筋にかけた冬を堪えてようやく迎える万物への明るさが息衝く。
雑詠-保坂リエ・選
日脚伸ぶ子ども部屋からハーモニカ
神奈川 宮澤達也
ふと聞こえてきたハーモニカ。耳をすませばどうも子供部屋からである。吾子である。深い愛情で父は子のハーモニカを聞いている。子を思う愛情が無言の内に伝わり、一句の俳句がこれ程迄に父子の情を感じさせている句も珍しい。季語「日脚伸ぶ」が全体を明るく包み込んでいる。
初風呂の入浴剤はピンク色
東京 藤田敏子
初風呂とは新年初めて沐浴する湯のこと。銭湯は大晦日終夜沸かし、元日休んで二日が初湯と なる。処によっては「若湯」とも言う。若湯に入ると「若返る」とも言われている。「入浴剤は ピンク色」と明るく、現代風の十二音が新春を呼び込むように人々の心を明るくさせている。
手袋を編み出したことまだ内緒
富山 平山幹子
ご家族の誰かの手袋を編み出した作者。膝の上で手軽に編むことの出来る手袋。未だ誰にも何 とも言っていない。そんな己を楽しんでいる作者。「幸せを絵に描いたような」作者が見えてくる。 その後手袋は出来上がりそれで...、の俳句を待たせていただく。掲句、「内緒」がいい。
雑詠-宮坂静生・選
元旦や八十歳はまだひよこ
神奈川 須貝一青
いささか投機的な句であるが、実感もある。百歳を超えた年配者が日本に五万人という時代になると、八十歳はまだ余生二十年。これから充分に、ひとはた揚げることができよう。ひよこの気持が若々しい。元旦に思いだけはそんな気持だという。どうかお元気で。
海市には私一部屋借りてゐる
神奈川 鎌田保子
幻想を愉しむ。蜃気楼の中に私の個室がある。「海市」といったのもいい。沖合にある街のイ メージが立つ。そこへ好きな人を御招待しましょう。遊びにいらっしゃい。そんな気分。元禄時 代の『西鶴諸国咄』を読むと類似の幻想を抱いている。いつの時代でも人はロマンがないと窮屈。
青春はリラの大陸父母の恋
大分 下司正昭
満州のハルピンでも中国の北京でもいい。リラの花咲く大陸の町で男女が出会い、恋が芽生え、そして私が生まれた。歴史は幻と化したが私の存在は幻ではない。亡き父母の恋も。かなしい句ではあるが、父母にはそれが人生一度きりの青春であった。思いの深い句である。
兼題
今月の兼題…【本】
兼題-大高霧海・選
日本に平和憲法梅真白
山口 笠ののか
本能寺手水に赤き落椿
大阪 渡辺美紀代
本の海知の灯台や菜の花忌
三重 浦 悦子
兼題-田島和生・選
うららかに古本市の匂かな
富山 藤島光一
本流は水躍らせて雪解川
兵庫 堀 瞳子
立ち読みの本にわが身に花吹雪
静岡 山﨑明子
兼題-田中陽・選
酒一本 八十路なかばを祝いけり
京都 太田垣幾也
本当のことはわからず久女の忌
神奈川 長浜よしこ
初日影日本平和七十年
三重 岡田良子
兼題-名和未知男・選
筑波野に梨千本の冬芽かな
茨城 荒井栗山
本返すついでの二月礼者かな
千葉 塩野谷慎吾
寒晴や旅の基本は歩くこと
埼玉 森竹昭夫
兼題-能村研三・選
榾一本足して土地売ること明かす
鹿児島 内藤美づ枝
本心を言はず海鼠を嚙みしめる
東京 関根瑶華
句会後の本音渦巻くおでん酒
神奈川 大矢恒彦
兼題-森 潮・選
きらら虫タブレットより本愛す
神奈川 小藤博之
大寒や資本主義にも終期説
埼玉 森竹昭夫
寒紅を引いて本音は洩らすまじ
宮崎 堀内サキ子
兼題-山下美典・選
楮蒸す湯気や日本の文化生む
兵庫 間森 坦
絶滅の日本狼山眠る
埼玉 中島孝允
本堂の暗さ武骨な雪囲い
千葉 萱嶋定火虎

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