●毎月25日発売
●A5判  ●定価1,000円

○ 月刊 俳句界 2014年12月号 ○
特   集
有名俳人 俳号の謎 第2弾
(水原秋櫻子、山口誓子、日野草城、鈴鹿野風呂、石田波郷、富澤赤黄男 他)
特別作品21句競詠
寺井谷子 榎本好宏 山尾玉藻
俳句界NOW
横澤放川
大人のエッセイ
志茂田景樹 他
魅惑の俳人 74
林 翔

【下の各画像をクリックしますと、今月の各コーナーの授賞作品がご覧いただけます。】

俳句ボクシング・今月のチャンピオン
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
ステテコのマハラジャのごと父居りて
埼玉 荒川清司
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
ローランサン画く少女の瞳の涼し
愛知 鳥取博子
雑詠
雑詠-有馬朗人・選
孑孒と書く時ペンのふにやふにやす
京都 西山温子
夏の夜などうるさく血を吸いにまつわり付く、蚊の幼虫だと思うと、少し憎い気もするが、孑 孒がふらふらしている姿は可愛らしい。その孑孒の事を書こうとすると、ペンまでふにゃふにゃ すると言ったところが面白い。孑孒と書きながら、孑孒と遊んでいるようで楽しい句である。
藻に消ゆる雑魚の迅さよ風は秋
山形 武田志摩子
小川に藻が茂っており、その廻りで雑魚が沢山泳いでいる。その雑魚たちを見ていると、素早く藻のかげに隠れてしまった。その迅いことは驚く程である。秋になり小川の水もよく澄んできた様子が、人影を見て素早く藻に隠れる雑魚を描くことで、佳く表現されている。
月光に黒髪濡らし身ごもれり
千葉 松本美智子
若妻が月光の下に立っている。ふさふさとした黒髪が月光に濡れたように輝いている。この女性は今身ごもっている。美しい月の光によって、身ごもったように思えてくる。若妻の美しさが神秘的に描かれているところが佳い。
雑詠-伊藤通明・選
柱から人の出てくる炎暑かな
北海道 中 悦子
「柱から人の出てくる」は、見たままの状景であるが、炎えるような夏の真昼間に誰もいない と思っていた柱から人が出て来て驚いた。人を隠すくらいの太い柱の立っている寺院かもしれな い。「炎暑かな」で、この句の力強さが生きていて動かし難い。
内浦に舳先のならぶ盆の月
大阪  阿久根良一
日頃は朝に晩に出漁で多忙な漁師の方々も盆の間は漁を休む。しずかな内浦に並べて係留された漁船の舳先が月に照らされ、時々波に軋んで同じように揺れている。普段は活気に溢れている漁港の「閑」のひとときを効果的に表現されていると思う。
廃校の庭に一夜の踊りの輪
埼玉 清水由紀子
子供が少なくなり廃校となった校庭も集落の盆踊りのときだけは、欠かせない広場となる。村を出た人達も戻ってきて一夜だけ昔の賑わいが再現される。櫓などの片付けも終り夜が明けての校庭には、一切の寂寥感がただよっていることだろう。
雑詠-茨木和生・選
上手来て地を這ふ如く踊りけり
岐阜 大井公夫
広場や寺の境内で行われる盆踊り、はじめは子供らも混じって踊っているが、夜も更けてくる と、音頭取りの歌も高まり、踊り手も声を手拍子を揃えて昂って来る。そんな頃を見計らって踊 り上手は地を這うようにして踊りの輪に入って来る。「地を這ふ」の表現が妙。
盆道のきれいな村を通り過ぐ
北海道 佐藤尚輔
村を見下ろす地に墓地は開かれている。そんな墓地への道は隣村にも通じている。お盆を前にして、村の人々が総出して、道端の、切岸の草を刈り、溝泥も上げて、美しくして祖霊を迎える準備を終えている。祖霊を敬うことの篤い村と思って作者は通り過ぎる。
旬のもの食べて矍鑠生身魂
愛媛 坂本千惠子
初物を食べると七十日命が伸びるという俗信もあるが、この生身魂様、旬のものを食べていると、滋養があって、その上これほど旨いものはないと確信を持って暮らしている。旬のものを食べて暮らしている、高齢のこの俺を見てみよと言わんばかりに元気である。
雑詠-大串章・選
まなうらに戦火過りし遠花火
埼玉 大熊三郎
夜空を染める遠花火の色は美しい。メルヘンの世界に誘われるようである。その花火の色を楽しんでいると、突然戦火が眼裏を過ったのである。花火の美しさと戦火の恐怖は正に正反対であるが、その二つを取り合わせたところにこの句の奥行があり、ふと平和ぼけを反省させられる。
敦忌やわれ生涯に職ひとつ
福岡 川崎山日子
ひたすら一つの職業に打ち込んでこられたのだ。上五に「敦忌や」とあるのは、この句が安住 敦の代表作〈啄木忌いくたび職を替へてもや〉を踏まえていることを示す。敦には職に関わる句 が多く、他にも〈春の蚊や職うしなひしことは言はず〉〈職替へてみても貧しや冬の蝿〉など。
世を忘れ我を忘れて盆踊
兵庫 前田倫子
国の内外を問わず、世の中には憂慮すべき事が多い。又、個人的にも悩みや心配ごとは絶えな い。そうした全てを忘れて、盆踊に熱中するのである。「世を忘れ」「我を忘れ」と続けたところ に、盆踊に没頭する喜びが伝わってくる。忙しない世の中、ときにはこういう一時も必要である。
雑詠-角川春樹・選
爽やかや裏返し干すベビーバス
千葉 泉 京山
爽やかとは、秋気が清く澄明で、さっぱりとして快いことである。作者は、ベビーバスが干されている景をもってくることで、素材の新しさのみならず、取合せの新しさも見せている。季感を生かした、生命讃歌の佳吟。
鬼灯を鳴らし昭和の日に還る
兵庫 塩谷忠正
真っ赤に色づいた鬼灯の実を捥いで中身を出し、口に含んで鳴らして遊ぶ光景が、かつては見 られた。郷愁にかられて、作者もその遊びに興じたのであろうか。「昭和の日に還る」と断定し て心象風景を描いた作品。
高階に海月を飼つてまだ独身
千葉 岩瀬孝雄
海月を観賞用のペットとして飼うこともこの頃では珍しくないようだ。ペットの飼育が限定的 であることが多いマンション暮しの作者は、海月を見ることで、日ごろの疲れを慰めているのだ ろう。海月と、「まだ独身」という措辞から、都会を漂う作者の孤独が感じられる。
雑詠-辻桃子・選
月の酒きのふの敵を友として
石川 かくち正夫
月見の座では、主人が「月の主」、客は「月の客」または「月の友」という。作者の「きのふ の敵」がどういう敵なのかわからないが、ともかく今宵は「月の客」として、ともに「月見酒」 を酌んでいる。これも月見の座なればこそだろう。
抜け道は海辺へ展け青みかん
大分 天領杉太朗
丘陵の海へ向いた一帯がみかん畑なのだろう。その上のほうから一筋の抜け道があり、その道を行けばほどなく視界が開け、海が見える。作者にとっては周知の抜け道なのだ。日は燦々と注ぎ、青みかんはもうすぐ熟すだろう。こんな抜け道を歩いてみたい。
ひとたびはばらけたる水滝壺に
奈良 貞許泰治
滝の句といえば、〈滝の上に水現れて落ちにけり 後藤夜半〉が有名だが、掲句は、滝の上か らかたまって落ちた水がいったんは大きな岩にぶつかって弾け、ばらばらに滝壺へ落ちて、そこ でまた一緒になるという。写生の目が行き届いた句である。
雑詠-豊田都峰・選
虫送り太い松明選び持つく
徳島 神野千鶴子
「虫送り」は作物などにつく害虫を除くため、村人が大勢で松明をともし鐘鼓を鳴らし村外れまで稲虫の作り物を送り出す行事である。特に「太い」ものを選んだ所に一段の願いがこもるが、「秋」の字の中に「火」が入るのはこのためか。それほど大事ということ。
門火焚く写経の反故を付け火とし
愛媛 渡部洋三
盂蘭盆に祖先の霊を迎える「迎え火」だが、「写経の反故」を「付け火」とした思いを頂く。 作者は、写経などをする、常から仏心を厚く持っている人なのであろう。そんな心が当然動作に あらわれるわけで、それがその人の人柄をつくるのである。
手花火の明かりの中にみんなゐる
北海道 井上映子
作品のポイントは「手花火」。小さな「明かり」の中に「みんな」の顔が浮かび上っている。 皆微笑んでいる。揃っている。その確認が喜びとして表現されている。思いは書かなくても、動作・風景の中にうかがえるのが俳句である。
雑詠-西池冬扇・選
稲架ぶすま富士山見えずなりにけり
愛知 小松 温
近年天日干しが減少したため、稲架は消えつつあるが、やはり豊かな稔りの季節の象徴的風物であろう。地域により形状は異なり、それも趣のひとつ。句材は高く大きな稲架であろう。山と稲架を材とした句はよくあるが、稔りを前面に出し、瑞穂国を言祝いだこの句は気持が良い。
秋天や落書き線路また伸びる
神奈川 新倉文子
このごろの落書きは壁に絵の具を吹きつけた、訳のわからぬものが多い。以前は板塀に蝋石やクレヨンなどを使い、絵もまさに子供の落書風であった。この句はまだそんな雰囲気が残っている界隈の作であろうか。昨日の落書きの電車の線路が、もっと長くなっている。今日も天気だ。
店頭に猪をごろりと五六頭
京都 足立陽子
都会を離れ住むと野生との接点がよく見える。近年、農作物への被害増大を防止するためにジビエ料理が奨励される。ヨーロッパでは高級料理だが、日本人が尻込みするのは農耕民族のせいだろうか。句は、物に変じて横たわる猪の存在を寡黙に描いてみせた。五六頭には迫力がある。
雑詠-保坂リエ・選
家内皆おろおろ庭を蛇が這ふ
埼玉 松盛将三
数十年前になるが私にも同じ体験があった。何とも気持が悪いもの。さぞかしや「おろおろ」 なさったであろう。掲句、何気ない詠みぶりではあるが、一句の表情がいきいきとし、写生に徹 するとの信念が生む明快さが見え、秀吟。
鰯雲後悔ばかりしてをりぬ
東京 佐々木久栄
己に厳しい作者。厳し過ぎても己を滅ぼすこともあろう。安住敦の句に、〈妻がゐて子がゐて 孤独いわし雲〉がある。何不自由ない方々が鰯雲を見上げて出来た一句。おのずから胸中に湧い てきたものをその流露にまかせて詠出。そのような諷詠態度から生れた作品と思われる。
夜半の夏何とはなしに起きてゐる
東京 高橋千花
このような夜は誰もが体験していることであろう。これと言う仕事もない。見たいテレビも話 したい人も居ない。が、「何とはなしに起きてゐる」、実は此の時間に考えてもいない大切な俳句 が心に育っているのである。「何とはなしに起きてゐる」「何とはなしに起きてゐる」、よかった。
雑詠-宮坂静生・選
地より生れ八日の蝉は地に還る
神奈川 野澤星彦
蝉は地上に七日の命といわれる。「八日の蝉」はもう地上にはいない。地に還る。なんとも哀 しい句だ。八日の菊、六日のあやめは一日遅く、時期はずれの意であるが、蝉は時期はずれどこ ろではない。もうこの世にはいない運命を背負う。定めとはいえ、切ないことが自然界には多い。
貧しくて愉しきむかし夜の秋
新潟 岡地蝶児
「夜の秋」がいい。晩夏の夜、さしずめ昭和戦後を振り返っている。暮らしは楽ではなかった。が、がやがや・ごちゃごちゃ芋を洗うような銭湯にでも入った感じ。これが戦後であった。みんなが貧しく竹の子暮し。前進あるのみ。今日より明日に望みをもって生きた。回想に実感が籠る。
宇宙服とは蓑虫の蓑のこと
愛知 石井雅之
蓑虫の蓑はありあわせの枯葉や枯枝を集めた粗末なもの。あれは「宇宙服」ではないか。宇宙で着る服は科学的な検討がされたすばらしいものであるが、掲句のようにいわれるとそんな気がする。蓑虫が虫の中でも風変りな様をしているだけに、宇宙的なという形容に同感するのである。
兼題
今月の兼題…【年】
兼題-大高霧海・選
万年を生きし貌なり山椒魚
京都 名村柚香
悠久の刻ゆるやかに年歩む
神奈川 髙野知作
百年の梁くろぐろと夏燕
東京 針ヶ谷里三
兼題-佐藤麻績・選
青鷺の十年其処に佇つ如し
栃木 中村國司
地を駆くるサッカー少年晩夏光
埼玉 高橋まさお
改めて十年日記買ふ覚悟
三重 佐野萬里子
兼題-田中陽・選
停年は師走の街のド真中
愛媛 越智久雄
一括りされて年寄り夕立来る
東京 戸井田英之
少年期ビー玉めんこ氷旗
東京 中川 肇
兼題-名和未知男・選
年に一度ふるさとに聴く法師蝉
兵庫 田麦かつ江
形代に本当の年書きにけり
山形 鈴木花歩
虫干や先づ年老いしわれを干す
大阪 喜多てる子
兼題-山下美典・選
年感じざる声とばし山笠を組む
福岡 阿比留初見
年金にても手加減はなしお年玉
兵庫 大曲富士夫
形代に本当の年書きにけり
山形 鈴木花歩

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