●毎月25日発売
●A5判  ●定価1,000円

○ 月刊 俳句界 2014年10月号 ○
特   集
この秋行きたい 全国の俳枕
(栃木・日光〜五島高資、京都・鞍馬〜大森理恵、香川・小豆島〜涼野海音 他)
特別作品21句競詠
豊田都峰、伊藤敬子、西山睦
俳句界NOW
小河洋二
大人のエッセイ
東直子、恩田侑布子
魅惑の俳人 72
横山房子

【下の各画像をクリックしますと、今月の各コーナーの授賞作品がご覧いただけます。】

俳句ボクシング・今月のチャンピオン
俳句ボクシング・今月のチャンピオン【赤コーナー】
夫よりも長く生きんと鰻食ふ
鹿児島 川路惠子
俳句ボクシング・今月のチャンピオン【青コーナー】
始祖鳥に想いを馳せる羽抜鳥
大阪 西田唯士
雑詠
雑詠-有馬朗人・選
囃田の張らるる綱やゆるみなく
大阪  北山日路地
中国地方の山間部では、笛や太鼓で囃しながら村をあげて田植えをした。これが囃田である。 その囃田のまわりにしっかりと綱を張って、準備を行った様子が佳く描かれている。「ゆるみなく」 に緊張した雰囲気が感じられる。
キルギスの湖あおあおと馬冷やす
北海道  塩見俊一
中央アジア北東部にキルギス共和国がある。東部は中国の新疆ウイグル自治区に隣接している。天山山脈中の山国で、湖も高地にあり、実に青々としている。そこで馬を冷やしている。キルギスでは牧羊が盛んだが馬も多い。異国情緒豊かな、旅情が感じられる句である。
肩肘を張らぬと決めし羽抜鳥
静岡  松山好江
羽抜鳥は滑稽な形で、俳句の好材料である。しかしそれだけに平凡になりやすいので、どのよ うにその姿を描くかが問題である。この句はその飄然たる姿を、「肩肘を張らぬ」と表現して成 功した。よく見つめてこのような表現を得たところが佳い。
雑詠-伊藤通明・選
一村のみな噎せ返る栗の花
埼玉  中野博夫
栗の花は幹に寄りかかるだけでもその香まみれになるほど匂いは強い。それが村中噎せ返るほ ど植えてあるのは栗の産地だろうか。しばらくは昼も夜もその匂いに辟易しながらも、村人達は 栗の実の収穫を楽しみにしていることだろう。「一村のみな噎せ返る」という大きな把握がよい。
花嫁の屈みて通る茅の輪かな
静岡  渡邉春生
結婚式が夏越祭の日にあたり神前で式を挙げたばかりの花嫁が、純白の打掛け角隠しのまま手を引いてもらいそっと屈んで茅の輪をくぐる。その前後には花婿をはじめ親類縁者や居合わせた人達も皆笑顔で続く。拍手もおこる。作者にとっても幸せなひとときだったことだろう。
引つ張られ蹴られ巻かれて夏蒲団
京都  名村柚香
寝苦しい夜蒸し暑いので蹴ったり、どこへいったのかと足先で探って引っ張ったり、又冷房が効いてくると蓑虫のように体にくるくる巻きつけられたり、夏蒲団こそ迷惑なことである。昼間元気に遊ぶ子供達は夜も夏蒲団と格闘する。面白い状景をとらえている。
雑詠-茨木和生・選
放牧の牛坐りゐる夏野かな
大阪  中家桂子
日差しに溢れ、草いきれのする「夏野」の広がっている光景の大きく現れてくる句である。放牧されている牛は百頭を超えているかもしれない。どの牛も青草を食べ飽きたのだろうか、坐ったり、横になったりしている。のんびりとした光景、こんな句を見ていると心が安らいで来る。
髭似合ふをとこ少なし鷗外忌
三重  ふじわら紅沙
軍医として最高の地位、軍医総監陸軍省医務局長についた森鷗外は、髭の似合う男であった。 現在、威厳のある、鷗外のような髭は時代離れも甚だしいものと敬遠されるが、実際そんな髭の 似合うような男もいないのは事実である。鷗外忌は七月九日。同時代人の漱石の髭も見事だった。
父の日が明けて父の忌沖縄忌
栃木  えづれたけし
父の日は六月の第三日曜日と決められたのは戦後のことだが、作者の父親の忌日は早くて六月二十二日である。沖縄忌は六月二十三日、父の忌日に続いて沖縄忌がやって来るのだが、あるいは作者の父も沖縄戦で亡くなられたのかも。この日、沖縄県では戦没者追悼式典が営まれる。
雑詠-大串章・選
どん底と言ふ酒場あり桜桃忌
長野  山口蒼峰
桜桃忌は太宰治の忌日。その作品は虚無的・退廃的なものが多く、実生活でも、バーの女と投身自殺をはかり、入社試験に落ちて縊死を試み、馴染の女と睡眠薬自殺を企てた。そして遂に昭 和二十三年六月十三日、玉川上水に身を投げて果てた。「どん底」「桜桃忌」が切なく響き合う。
梅雨晴間古里の海見たくなり
大阪  三木暉之
梅雨の中、暫く好天気に恵まれることがある。そんな日は、鬱陶しい気分を忘れて懐かしい「古 里の海」を見たくなる。夏が来る度に泳ぎまわったり、投げ釣りを楽しんだ海。青い海原を白波 が走り、水平線には大きな入道雲が聳えていた。健やかなノスタルジアの感じられる句である。
敦忌の駅の西口夕焼くる
茨城  國分貴博
敦忌は俳人・安住敦の忌日。戦前「旗艦」「琥珀」「多麻」等で活躍し、戦後は久保田万太郎主 宰「春燈」の編集長を努めた。その抒情句が評価され蛇笏賞を受賞。文章にも勝れ、日本エッセ イスト・クラブ賞も受賞した。この句は安住敦の代表作〈しぐるるや駅に西口東口〉をふまえる。
雑詠-角川春樹・選
山の端に夕づつ茅花流しかな
石川  今村征一
茅花流しは、茅花が絮状になるころに吹く風をいう。「流し」は雨気を含んだ南風のことである。 掲句、遠景に一山を描き、近景には、吹かれる茅花を配置した。構図が確かであり、映像の復元 力と、透明感のある一句。
キルギスの湖あおあおと馬冷やす
北海道 塩見俊一
「馬冷やす」というのは、使役した馬を川などに引き入れて、火照った体を冷やすとともに、 洗ってやることである。古典的な俳諧味のある季語の一つであるが、海外の風景詠として現代的 な佳吟となった。
陶房の欠けし黄瀬戸の金魚かな
東京  長尾 博
「陶房の欠けし黄瀬戸の」という上五中七の措辞と、「金魚」の取り合わせにより、美しい作 品に仕上がった。上五中七の措辞が、黄瀬戸そのもののことでもあり、金魚の美しさを形容して いる。陶工のこころをなぐさめる金魚が、可憐である。
雑詠-辻桃子・選
人声のにはかにおこる夕立かな
千葉  成田杏一
真夏。一天搔き曇り、黒雲から雨が落ちてきたと思う間もなく土砂降りになる。そんなとき、「そこのコンビニに走ろう」「洗濯物を取り入れて」など、さまざまな人声も行き交う。作者はそん な市井の風景に注目した。
卯の花を手桶に飾り飛驒の里
神奈川 尾崎秋明
卯の花は、卯月(現在の五月)の頃、白い花が枝に群がるように咲く。その卯の花を何枝か手 桶に挿して飾ってあったのがいかにも「飛驒の里」らしい。〈卯の花を挿頭に関の晴れ着かな 曾良〉という句も思い出される。
吊橋の揺れて万緑歪みたる
宮崎  堀内サキ子
見渡すかぎりの緑の中。渓谷の山と山を結ぶ吊り橋を渡る。横に渡した板の隙間から谷底の川が見える。後続の人が渡りかけたとき吊り橋が揺れ、それに従って周囲の風景もぐらりと揺れたのである。読むからに怖い句だ。
雑詠-豊田都峰・選
小判草庭一杯の民話村
宮城  藤井儀和
「民話」には良い行いをしたためにいろいろなご褒美に預かる話がよくある。そのイメージが 「小判草庭一杯」である。まさに民話の中の主人公としていま立っている感じであり、民話を具体化したような作品である。
夏帽をかぶり直して竜飛崎
青森  福士信平
この作品のポイントは「竜飛崎」。本州の一つの北端であるが、立つと深い感嘆がある。風に 吹かれてのことかもしれないが、やはり北端の岬に立ったという気持の改まりが「かぶり直し」 にあらわれている。感慨が深く染むようにしばらくは「夏帽」を押さえていたことであろう。
一本の浮き苗あらず植田澄む
大阪  中家桂子
遠景、中景の風景として眺めても、田ごとに、また畦ごとに植田は美しく整っている。この作品は、近景として詠う視点もよく、そして「一本の浮き苗」という取り上げ方もよい。農夫たちの気質も伺われ、多分、余り苗までも手が入れられていることだろう。
雑詠-西池冬扇・選
しろじろと蟻の搔き出す砂の嵩
大阪  萩原貞子
蟻は黙々と砂を穴の周囲に積み上げる。その姿は感動すら覚える。彼等の営みは、本能が命ず るままのものかもしれない。だが、その行為を人間は己に照合して考えがちである。「しろじろと」 というオノマトペはそういう一切を拒否したところに生まれており、無機質な感慨を伝える。
雲の峰簞笥屋さんは力持ち
福岡  豆めし
子供の感覚は新鮮である。暑い日に簞笥をひょいと肩にかつぎ運ぶ人を見て、思わず「簞笥屋さんは力持ち」と感嘆した。職人だから運べるのは当たり前、などと「大人」になるとすなおに驚くことができなくなる。この句では「さん」をつけることで我々を子供の新鮮な感覚へ戻した。
電線を摑み損ねし烏の子
徳島  生島春江
烏も巣立ち後すぐはぎこちないのである。電線を摑み損なって落ちそうになった、その瞬間の光景を写した。作者は毎日近所の烏の親子を観察していたのだろう。俳句は森羅万象に対する畏敬の念をこめた挨拶である。烏の子を通して表された作者の自然への愛情を感じることができる。
雑詠-保坂リエ・選
にんにくと決めて二人の初鰹
茨城  野口英二
「女房を質に入れても初鰹」という駄洒落がある程高価な初鰹。「二人」とは夫婦であろう。 さて「垂れ」は生姜か、にんにくか、と話し合った。「にんにくがいいわ」と妻の一声で「にん にく」に決まった。その微笑ましい夫婦の姿が見え、声が聞こえてきそうな庶民の一句がいい。
鐘突けば鐘の中より春の蝶
香川  磯崎啓三
作者のお近くにある寺院だろうか。季語は「春の蝶」というのだから、道端にはたんぽぽが咲き、家々の庭には椿、連翹、桜と春爛漫の景。作者はその寺院の鐘を撞いたのである。鐘に驚 いて鐘の中より蝶が表れた、という一句。俳句は意外性を詠むというがその意外な処が面白い。
植田道どちらともなく会釈して
神奈川 鈴木貞行
田植が終ったばかりの田の面が一面に展け風にそよいでいる。水面には山や木立などの周辺の風景が映ったりしている。一寸小高い処への植田道をどちらからともなく会釈を交しすれ違う村人。何処にでも、誰もが見かける寸景ながらその場の情景と親しみ、温かさを醸しだしている。
雑詠-宮坂静生・選
すずらんの街や記憶の中の君
北海道 井上映子
札幌詠か学生時代であろう。北国の夏、すずらんが咲く草原。私は「君」を思い、君の存在がどれほど生き甲斐であったか。今の充実こそ全てであった。あれから幾歳月。君は記憶の中に鮮やかにいる。ついに人生を共にすることは適わなかったが、青春の貴重な存在だ。懐かしい君よ。
岩清水幼き水のうろうろと
神奈川 谷元央人
岩から清水が湧きでる。泉の周辺には流れに乗り切れずにうろうろ迷っている水がある。「幼き水」だ。どんな流れにも本流に乗れないで彷徨う水がある。そこに着眼したのが秀逸。「幼き水」 と見た優しさに共感する。どこか人の世を連想させるところに情感が籠る。
妻の忌や妻の手縫ひの甚平着て
三重  森田照敏
先に別の世へ私を置いて逝ってしまった妻。その妻が心を籠めて縫ってくれた甚平。夏になると纏いながら今どうしているのかとしきりに思う。人生は無常だ。こんな時が来るとは妻が元気な時には想像もしなかった。しんしんと思いが深まる。亡き妻との人生がこんなに寂しいとは。
兼題
今月の兼題…【後】
兼題-大高霧海・選
戦後まだ置き去りにして沖縄忌
東京 尾形和北
出征の父の後追ふ青田道
大分 下司正昭
昭和なほおぼろの後にある如し
神奈川 児玉 修
兼題-佐藤麻績・選
後朝の使ひのやうに夏蝶来
東京 朝賀みどり
灯したる後ろに闇ある虫売屋
神奈川 小藤博之
緑蔭のベンチが午後の句座となる
神奈川 磯村昌子
兼題-田中陽・選
今に惑ふ戦後育ちに黴のパン
神奈川 三枝清司
虚子の後悪人出でず心太
長崎 金澤見鶴
後生楽な宰相ひとり蟻地獄
東京 薬丸正勝
兼題-名和未知男・選
われもまたイヴの後裔黍嵐
埼玉 横田幸子
後の世に夫待たせゐて梅を干す
山形 武田志摩子
新緑の風後背にほとけ笑む
奈良 中川草汀
兼題-山下美典・選
後輩にキャプテン渡し夏終る
東京 梅村芳恵
後添いの苦労語らず盆用意
大阪 竹中幹子
午後二時の真白き睡魔新樹光
石川 燕北人空

2017年| 11月10月9月8月7月6月5月4月3月2月1月
2016年| 12月11月10月9月8月7月6月5月4月3月2月| 1月
2015年| 12月11月10月9月8月7月6月5月4月3月2月1月
2014年| 12月11月10月9月8月7月6月5月4月3月2月1月
2013年| 12月11月10月9月8月7月6月5月4月3月2月1月
2012年| 12月11月10月9月8月7月6月5月4月3月2月1月
2011年| 12月11月10月9月8月7月6月5月4月3月2月1月
2010年| 12月11月10月9月8月7月6月
定期購読のご案内
・毎月25日発売
・A5判
・定価1,200円(税込)
半年間 6,500円(700円お得)
1年間 12,500円(1,900円お得)
2年間 24,000円(4,800円お得)
定期購読は送料サービス

※定期購読割引は、直接小社にお申し込み戴いたお客様に限り、適用されます。その際、ホームページでお知りになった事をお伝えください。

※購読期間中に特別価格号が出た場合、 差額は当社で負担致します

・ご質問やご不明な点がございましたら、フリーダイヤル  0120-819-575、または、お問い合わせフォームからお問い合わせ下さい。