-俳句界 2014年 08月号-


●毎月25日発売
●A5判  ●定価1,000円

【下の各画像をクリックしますと、今月の各コーナーの授賞作品がご覧いただけます。】
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
俳句ボクシング・今月のチャンピオン【赤コーナー】
万緑や腰豊かなる土偶笑む
埼玉 関根艸子
俳句ボクシング・今月のチャンピオン【青コーナー】
原子より原始に還れ雷走る
福井 中井一雄
雑詠
雑詠-有馬朗人・選
姫神の絵馬は櫛形桃の花
島根  廣澤幣子
作者は松江の方であるから、この「姫神」は須佐之男命の娘である大国主命の妻となった須勢理毘売ではないであろうか。絵馬が櫛形をしているところも出雲らしいが、「桃の花」が良い。出雲神話のロマンが感じられる句である。
黄沙来る伊都国奴国不弥ノ国
福岡  田中一とく
原句の上五は「胡沙」である。胡は中国の北方・西方を表すが、広辞苑によれば胡沙はアイヌ語で蝦夷人の吹く息の意味である。そこで「黄沙」としたことをお許し願いたい。黄沙が『魏志倭人伝』の昔から日本へ飛んで来て倭人伝に記されている国々へ降っていると言った所が面白い。
木の香飛ぶ木地師の里の桃の花
三重  出口洪子
近くの山林からとって来た木材から、轆轤などを用いて盆や椀をはじめ様々なものを作る「木地師の里」の光景である。良い木の香が飛んで来るし、桃の花が美しく咲いている。静かな平和な木地師の村のたたずまいが見えてくる。「桃の花」という季語が良く働いている
雑詠-伊藤通明・選
糶札をはね飛ばしたる桜鯛
兵庫  森山久代
作者が兵庫なら鳴門か明石の桜鯛に違いない。釣り上げられ糶り落とされた鯛は糶場で大きくはね最後の抵抗を試みる。美しい鱗がとれぬよう周りも気を使う。糶場の活気溢れる声のぶつかり合い、糶札をはね飛ばす活きのよい立派な桜鯛。状況が手にとるようにわかる豪快な句である。
すり鉢のまま持ちきたる野蒜和
高知  池 蘭子
「お待ちどおさま」の声と共に大きなすり鉢のまま野蒜和がどんと運ばれてきた。拍手がおこる。胡麻や味噌などの香り、瑞々しい野蒜の緑。「すり鉢のまま」という表現から、気のおけない人達の集まりの楽しい会話までもが伝わってくる。
どの部屋も消灯早き遍路宿
大阪  村上直子
お遍路さんの朝は早い。一日中歩いて宿に着くと、お互い見知らぬ同士でもすぐに打ちとけ、今日のこと明日のことなど話が弾むが、やはり明日に備えて皆早々に消灯し布団に入る。「消灯早き」という措辞から、お遍路さん達の宿での様子を読みとることができる。
雑詠-茨木和生・選
ふるさとの母が来てゐて蓬餅
滋賀  北村和久
ふるさとの母が来ていることはその声で分かる。そしてその母が手作りの「蓬餅」を持って来ていることは蓬の香りがするので分かる。ふるさとの野に摘んだ蓬の、搗きたての蓬餅を母が持って来てくれることをどれほどか待っていたに違いない。名前の上に「盲」と書いてあった。
春の夜を母に抱かれて父逝けり
奈良  能登つくも
父の最期を、父の望みどおりに、自宅で看取っているのだ。父の息遣いを見ていた母は、臨終が近いと思ったのだろうか、父の頭を膝の上に置いてその体を抱いている。一層穏やかな顔となって父は安らかに息をしずめて行った。「春の夜」の季語がこの句にふさわしい。
春泥を跳んで八十真っ盛り
福島  阿部 弘
いつも出かける散歩道でのこと、春泥にぬかるんでいるところがある。なんだ、このていどの春泥くらい、と跳び越えて行ったのである。「八十真っ盛り」とは実に大胆な表現である。誰からも認められている元気じるしの「おじいさん」であるに違いない。
雑詠-大串章・選
菜の花や黄金の雨の降りつづく
静岡  渡邉春生
黄一色の花菜畑は見事というほかない。そこに降る雨は明るく輝いている。花菜畑に降る雨を「黄こがね金の雨」と言ったところがこの句の眼目である。菜の花はやがて切り花として出荷されたり、種子となって菜種油を生み出したりするであろう。まさに「黄金の雨」の恩恵である。
満開の桜に出逢ふ無人駅
福岡  上野山敏子
山里や郊外の無人駅。そこにはプラットホームがあるだけで駅員さんはいない。しかし、傍には駅を見守るように大きな桜の木が立っている。そして今まさに満開なのだ。作者は旅の途中でその桜に出会ったのであろう。予期せぬ出会いに作者は思わず感嘆の声をあげたにちがいない。
雨女独りで春を惜しみけり
岐阜  塚本 睦
春も終りの頃、仲間と一緒に野外へ出て春を惜しもうと思ったのに生憎の雨。残念と言えば残念だが、独り家に居て行く春を惜しむのも満更悪くない。雨音に誘われるように「あめあめ ふれふれ かあさんが」の童謡がよみがえったり、優しかった母の面影が浮かんできたりする。
雑詠-角川春樹・選
清明やシフォンケーキのよく焼けて
千葉  岩瀬孝雄
清明は、二十四節気の一つで、四月五日ごろ。万物が清らかで、溌溂とした季節感を持つ。シフォンケーキのシフォンは、絹織物のことで、その食感のやわらかさを言いえている。読者を幸福感で包む作品に仕上がった。
塩壺に塩のかたまり涅槃西風
福岡  鶴田独狐
涅槃西風は、陰暦二月十五日、釈尊入滅の日のころに吹く西風である。ちょうど、春の彼岸のころに当たる。掲句では、リフレインによる塩の強調もよく、「涅槃西風」の配合が効いている。
暇のなき空に皇帝ダリアかな
宮崎  堀内サキ子
皇帝ダリアの咲き誇る様子を伸びやかに描いている。皇帝ダリアの美しさに、思わず「瑕のなき空」と感得したのであろう。作者の感動が大らかに詠まれている。
雑詠-辻桃子・選
すり鉢のまま持ちきたる野蒜和
高知  池 蘭子
野蒜は葉の若いうちに球茎ごと掘り取り、葉とともに茹でて酢味噌で和える。この句は作った「野蒜和」を器に盛るのではなく、すり鉢のまま抱えて持ってきたのである。なんとも豪快で臨場感のある句だ。
筆箱を輪ゴムで止めて進級す
福井  清水燕子門
卒業や入学は人生で特別に改まった行事だが、進級は日常の延長のようなところがある。セルロイド製の筆箱を輪ゴムで止めるというさりげない行為を、現代における「進級」という季語がとらえられている。
飛ぶやうに黒子走るや春歌舞伎
東京  髙野虹子
春の興行であろう。黒子は黒装束をつけて役者の介添えをする人。掲句では、その黒子が飛ぶように走っている。観客からは見えない約束になっている黒子のきびきびとした動作をとらえたところに俳味がある。
雑詠-豊田都峰・選
姫神の絵馬は櫛形桃の花
島根  廣澤幣子
祭神が女神の場合、神社の屋根にある千ち木ぎの切口が水平であるが、「絵馬」が「櫛形」とはよい発見である。絵馬は神によい馬を寄進する思いからであるが、この場合は姫神の黒髪の美しさからの形であろう。そして「桃の花」の組み合わせはそれらを一段と効果あらしめている。
背水の陣など敷かぬ日向ぼこ
三重  渡邉紘男
「背水の陣」とは一歩も後にはひけないという絶体絶命の立場だが、そんな全力を尽くして事にあたるような事とは全く反対の、思いののんびりしたものが「日向ぼこ」の真意であろう。表現が大袈裟すぎるのも俳句のたのしみである。
雀の子大地の色に飛び廻る
岐阜  大西誠一
「雀の子」は春から夏にかけて見られる。雛の時は親鳥の餌与えはたいへんだが、飛び廻るようになると、かわいい風景であるが、ポイントは「大地の色」と譬えた点である。元気よく跳ねたり、飛んだりしている様子がよくわかるからである。
雑詠-西池冬扇・選
糶札をはね飛ばしたる桜鯛
兵庫  森山久代
糶られた魚には次々と識別の札が置かれる。その札をはね飛ばしたという威勢のよい桜鯛。「俺にこんな値段をつけやがって」と桜色になって跳ねているようだ。類想の多い句材ではあるが、これは糶札に目をつけ上中の十二文字が歯切れ良く、魚市場の活気も感じる小気味よい句である。
茎立や重ね貼りせる掲示板
山形  鈴木花歩
掲示板には次々重ねて紙が貼られる。時節柄、大学であれば休講の知らせ、新入部員の勧誘、伝言等々、まさに傍若無人。だがそこに人の営みの勢いがあるともいえる。掲示板の前の菜の花だろうか、「茎立」という季語との取合せによって生命の勢いのような趣が醸し出されている。
大あくび毛虫の行方見失ふ
神奈川 大矢知順子
毛虫を見ていた。もそもそと動いたかと思うと、さくさくと木の葉を食べている。少し退屈したので、大欠伸をして目をつぶった。さて毛虫はとみると、あらら、いない。どこへいった。それだけのことを俳句にするとこうなる。何事もない一日のありがたさ。欠伸が伝染しそうで面白い。
雑詠-保坂リエ・選
妻あらば葉ごとほほばる桜餅
岐阜  中島源兆
長年連れ添った、今は亡き妻を思う作者の一句。江戸時代より向島・長命寺の茶亭の名物になった桜餅。今は街の何処にでも見かける。そんな桜餅を見るにつけ亡き愛妻を思う作者。「葉ごとほほばる」愛妻をしきりに思い出している。美しくも妻恋の一句。
田を植ゑて夜はお互ひに貼り薬
千葉  小池成功
そう若くはない中年夫婦像が見えてくる。「夜はお互ひに」明日の為に、貼り薬を黙々と貼り合っている。近くの田圃ではやかましく蛙が鳴いている。ギャア、ギャアと鳴きコロッ、コロッと鳴き雌を呼んでいる。静かな夜の田園風景が言外に伝わり佳句となった。
のどけしや眼鏡どこかに忘れ来し
大阪  田村昶三
「のどけしや」がいい。一句に明るさと気軽さがただよい、読者を長閑な世界に引き摺り込む。「眼鏡がない。大変。どうしよう」とは全くの逆。俳句も人間も「ゆとり」が大事であることを教えてくれている。「どこか」は家の中ではない。外出先である。温かく明るくのどかな一句。
雑詠-宮坂静生・選
さらさらと記憶こぼるるさくらさくら
東京  大久保菜津子
不思議な句。「さくらさくら」と唱えるといろいろな記憶が「さらさら」と出て来るというのである。実際の「さくらやさくら」という言葉は日本人の体に沁み込んで時に明るく、時に暗く、感情を彩る。古くは山桜、明治以降は染井吉野、花見と称して毎年体に沁み込んだ記憶を蘇らせる。
しばらくは母をひとりに魂迎へ
新潟  美濃部紘三
盆の迎盆の日、家族で迎火を焚いている。母には格別思いが深い。連合いをなくしているのである。母の気持がよくわかる家族は、母のもとからしばらく離れて、じっと母を見守っている。迎火を見つめ、迎火と静かに話している母。この光景は迎火でなくても盆棚の前でもいい。
ころがりてテニスコートの烏の子
大分  天領杉太朗
整備された「テニスコート」。しばらく使われ、しばらく休憩時間が入る。その時に、「烏の子」がひょこひょこ現われる。いまだ十分には跳ねることができないが、なかなかの役者ぶり。見つめているプレイヤーはほっと気が休まる。いささかのユーモアが楽しい。
兼題
今月の兼題…【楽】
兼題-大高霧海・選
百歳の心は独楽の澄む如し
福岡 砥上克介
亀鳴くをひたすら待てり楽隠居
鹿児島 西辻公臣
踊り子の楽屋の荷風巴里祭
群馬 小暮駿一郎
兼題-佐藤麻績・選
楽器持つ雲中菩薩や春爛漫
大阪 今村美沙子
地歌舞伎の楽屋に届く芋煮鍋
愛知 小松 温
信楽のたぬき整列山わらふ
神奈川 三枝清司
兼題-田中陽・選
タンポポの楽譜を歩くドレミファソ
滋賀 秋口大門
楽しくて寂しくなりぬ晩夏光
静岡 鈴木慶子
楽しまなきゃ夏の銀河を泳ぎ切る
北海道 澤田吐詩男
兼題-名和未知男・選
初糶のみな伯楽の顔をして
秋田 土谷敏雄
楽しみは腹のへること桜漬
東京 中川 肇
極楽はたぶん退屈花惜しむ
神奈川 土生依子
兼題-山下美典・選
楽しみは一盃の酒生身魂
三重 平野 透
夜神楽や喉を焼きたるかつぽ酒
大分 金澤諒和
朧の夜楽日に大入袋かな
広島 谷岡 久

2017年| 7月6月5月4月3月2月1月
2016年| 12月11月10月9月8月7月6月5月4月3月2月| 1月
2015年| 12月11月10月9月8月7月6月5月4月3月2月1月
2014年| 12月11月10月9月8月7月6月5月4月3月2月1月
2013年| 12月11月10月9月8月7月6月5月4月3月2月1月
2012年| 12月11月10月9月8月7月6月5月4月3月2月1月
2011年| 12月11月10月9月8月7月6月5月4月3月2月1月
2010年| 12月11月10月9月8月7月6月
定期購読のご案内
・毎月25日発売
・A5判
・定価1,200円(税込)
半年間 6,500円(700円お得)
1年間 12,500円(1,900円お得)
2年間 24,000円(4,800円お得)
定期購読は送料サービス

※定期購読割引は、直接小社にお申し込み戴いたお客様に限り、適用されます。その際、ホームページでお知りになった事をお伝えください。

※購読期間中に特別価格号が出た場合、 差額は当社で負担致します

・ご質問やご不明な点がございましたら、フリーダイヤル  0120-819-575、または、お問い合わせフォームからお問い合わせ下さい。