-俳句界 2014年 05月号-


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俳句ボクシング・今月のチャンピオン
俳句ボクシング・今月のチャンピオン【赤コーナー】
春の夜の昭和からくる糸電話
北海道 澤田吐詩男
俳句ボクシング・今月のチャンピオン【青コーナー】
初伊勢や旧正殿のがらんどう
三重 稲毛 昇
雑詠
雑詠-有馬朗人・選
白河は夜雨となりし不器男の忌
茨城  國分貴博
芝不器男は愛媛県の人。東北大学で学んだ。その時仙台に住み、遥かなる故郷を偲び〈あなたなる夜雨の葛のあなたかな〉という名句を残した。白河を通り過ぎようとした時、夜雨が降り始めた。その日は不器男の忌二月二十四日であった。そこでこの不器男の句を思い出したのである
棒鱈が煮えて会津の十日市
埼玉  田中道敏
この句を読んで私は祖母を思い出した。祖母は会津の人、冬になるとよく棒鱈を煮てくれた。この句は会津の十日市で棒鱈を煮て売っている様子を写生している。どんよりとした雪空の下の十日市の光景が、棒鱈が煮えていることに注目したことにより、具象的に描かれ、佳句となった。
寒明くるジグソーパズルぴしと嵌め
東京  矢作十志夫
長く厳しい寒が明けた。いよいよ春だと嬉しくなった。その喜びのせいか、うまく嵌らないので苦労していたジグソーパズルが、見事にぴしっと嵌ったのである。寒明けの喜びに弾む気持が、ジグソーパズルがうまく嵌ったことで、佳く表現されている。
雑詠-池田澄子・選
成人の日農を継ぐ子の背広かな
兵庫  前田 忍
上手な句、と思わせない朴訥な感じが嬉しい。「農を継ぐ子」への愛しさと感謝、加えて将来あるかもしれない困難への心配までをも思わせる。成人の日の晴れ着の背広は、仕事着姿とは別人のようで、初々しく照れているか。
虚子立ちし大観峰や冬ざるる
福岡  宮辺博敏
大観峰は阿蘇外輪山の最高峰だそうで、私は行ったことがないが高濱虚子の〈秋晴の大観峰に今来り〉の句碑が建っているらしい。その場所で虚子も斯くやと偲んでいる。際立って個性的な句ではないが、すっきりとした格調を保ち、虚子への敬愛を改めて味わっている風情に共感する。
仮の世と思へば仮の寒さかな
茨城  國分貴博
「寒さかな」という句は沢山ある。ところがこの作者は「仮の寒さ」だという。何故なら仮の世だから。成程、今生きている此処を仮の世と思えば、何もかもが仮の状況。観念的という見方もあろうけれど、身に沁みてつくづくと、そうだなあと思う。
雑詠-伊藤通明・選
初蹴鞠それしに大き拍手あり
京都  山口美栄子
下鴨神社等で行われる鞠始の儀の一こま。古式床しい装束で掛け声もろとも鞠を蹴上げる。受け手が落とさず続けられるようにと固唾をのんで見守る中、たまたま蹴った鞠が外れてしまい見物者から大きな拍手がおこった。張りつめた緊張が一瞬とけたその場の様子をよく捉えている。
餅を搗く稷の実入れし一臼も
奈良  岩城吉蔵
何でも店に頼める今でも、家族そろって餅を搗けることは羨ましい。その中の一臼は、畑で作った稷(きび)をたっぷり入れての稷餅。黄色の稷の粒をとばしながらも、みんなの掛け声や笑い声の中搗き上る。こんがり焼いた稷餅は、味わい深いおいしさにちがいない。
人の手に夫を委ねし去年今年
埼玉  清水由紀子
一連の三句から老々介護の心労が痛いほど伝わってくる。自分の手で出来るだけ介護をしたいが、年末年始の慌ただしさを思うと施設に預ってもらわなくてはならない。夫に申訳ないという心の葛藤と、預ってもらった束の間の安堵感が読みとれる。「人の手に」という上五が胸を打つ。
雑詠-茨木和生・選
凍鶴の少し動きて糞りにけり
東京  安住正子
厳しい寒さを堪えるために、片脚で立ち、首を翼の中に入れてじっとして動かないでいる鶴が凍鶴である。そんな凍鶴が少し動いたと思って見ていると、少量の白い糞をしたのである。そして再び、何事もなかったかのように同じような姿勢で凍鶴は静止していた。
薬喰癌検診の結果出て
奈良  佐藤哲生
人間ドッグの結果、例えば、大腸の精密検査を受けるようにという指示のあと、再検査の結果が出たのである。その結果、全く異状がなかったのは、何も語っていないが薬喰に出掛けていることで分かる。
橇も干して湯治のひと日過ぐ
奈良  岩城吉蔵
秘湯と言われる雪深い地の温泉に一ヶ月ほど湯治に来ている。深雪を分けてやって来たことは橇を干していることによってわかる。「橇も」の「も」という言葉が湯治一日目の暮らしぶりを伝えてくれる。
雑詠-大串章・選
父祖の地のどんどの煙大いなる
北熊本  加藤いろは
「どんど」は正月十五日頃行われる左義長の火祭り、門松や注連縄などを積みあげて焼く。その火で焼いた餅を食べると無病息災、書き初めの用紙をくべて高く燃え上がると上達する、と言って喜ぶ。その「どんどの煙」が勢いよく立ち昇っているのだ。「父祖の地の」に郷土愛が滲む。
老いてまた公園デビュー日向ぼこ
高知  吉倉紳一
幼いころベビーカーに乗って初めて公園に来た。「公園デビュー」である。ママ友たちがなにやら話している傍を、よちよち歩きまわって楽しんだ。そして今、会社を辞めて仕事もないまま公園に来て日向ぼこをしている。「老いてまた公園デビュー」と言ったところが面白い。
霜柱抱き起されし波郷亡し
神奈川 盛田 墾
石田波郷の代表作〈霜の墓抱き起されしとき見たり〉を踏まえる。病床にあった波郷は、布団の上に抱き起されて窓の外の「霜の墓」を見たのだ。作者は、「霜柱」を見ながら「霜の墓」を思い、宿痾を克服して俳句を作り続けた波郷のことを思っている。心に沁む一句である。
雑詠-角川春樹・選
胎撫でて臨月の娘の御慶かな
福島  森谷あきお
新年にお互いに祝詞を述べあうことを御慶という。新年に分類される季語は、それだけでめでたい雰囲気がある。掲句は、「臨月の娘」を描くことで、新鮮な取り合わせとなった。新春の慶びと、慈愛に満ちた作品。
あらたまの亡夫の書斎に灯を点す
埼玉  内田幸子
年の始めに、夫君の書斎に灯を点す行為は、作者にとって、ともに過ごした日々を思い出し、夫亡きあとの自分の現在地を確認することなのであろう。「暗」から「明」へ転じることで、亡夫への思いを深く描いた佳吟。
天金のきんこぼしつつ読初す
福岡  赤坂紅未子
正月に、最初に本を読む場面である。「天金」の措辞からは、読初に選んだ一書に対する作者の強いこだわりが、気負いとともに伝わってくる。句の立ち姿の美しい作品。
雑詠-辻桃子・選
骨正月横丁の店(たな)ちよと覗く
神奈川 木村かず子
骨正月(ほねしょうがつ)は二十日正月のことで、新年の祝いの納め日。正月料理の残りの骨で料理を作ったことから主に関西以西で骨正月と呼ばれる。掲句、中七下五「横丁の店ちよと覗く」のいい方、特に「ちよと」に正月の終わりのくつろいだ気持が出ている。
膳所に来て小雪となれり義仲忌
岐阜  大野德次郎
義仲忌は陰暦正月二十日。源義仲は源義経らの大軍に攻められ、近江国粟津で討ちとられた。征夷大将軍に任じられた直後だった。作者は義仲寺での義仲忌に参列のため膳所に来たのだろう。おりしも小雪がぱらついてきた。いかにも松尾芭蕉の愛した義仲の忌日にふさわしい日だ。
息白し鹿呼ぶ人も寄る鹿も
愛媛  玉井玲子
奈良公園では二月に鹿寄せがあるが、そのような行事ではなく、鹿煎餅を手に持って鹿を呼んでいる人と寄って来た鹿を詠んでいるのだろう。呼ぶ人も寄る鹿も息を白くして。中七下五の、繰り返しのリズムが快い。命あるもののみずみずしい情感がある。
雑詠-豊田都峰・選
湖の祭りめきたる蘆を焼く
滋賀  北村ひとし
琵琶湖湖岸にはあちこち蘆が茂り、回りの山々などと調和して湖国らしい風景を作っている。晩秋から冬に刈られ、時には纏められて湖岸で火勢も盛んに焼かれる。まさに「湖の祭り」といってもいい行事である。
凍滝の空にとどかぬ音ばかり
栃木  山口 勝
大きな滝を思い描く。ために凍結した垂水は幾筋にも太い氷柱になって刻を止めている。飛沫していた音は中へ中へと閉じ込められ、まさしく「空にとどかぬ音」となっている。「空に」としたことで本来の垂水の音が一段と想像されて効果的である。
引鴨の踵大きく翔ちにけり
福島  森谷あきお
よく詠われる一景であるが、「踵大きく」と把握したところに作者の「引鴨」への思いが滲む。今までの暮らしぶりや、飛び立つ時の思い、更には飛行中の心が重なる。焦点を把握する。俳句の大切な手法である。
雑詠-宮坂静生・選
霜柱ざくざく踏んで強気なり
熊本  加藤いろは
清冽な生き方を心に念じている作者。虚飾を排して、自分が真実と考えるものを求めて生きる。清貧な暮らしを決して貧しいと思わないで、常に求める志を失わないように心掛ける。いうは優しいが、心を惑わす誘惑の多い現世ではなかなか「裸木」にまでなることは難しい。
渾身の箱根駅伝眩しめる
福岡  八木亜瑚
「箱根駅伝」は新しい季語。私は地貌季語と称している。正月二日、三日の東京・箱根間で実施される大学駅伝がたくさんの人に愛され、若者の渾身の奮闘が讃えられる。近年、正月詠の季語に用いられている。「眩しめる」が率直な感動表現だ。佳句である。
雪のごと千切り大根日を返す
宮崎  堀内サキ子
「千切り大根」は九州宮崎地域の初冬の特産物。霧島颪に曝され、真っ白い、まさに「雪」のような千切り大根が出来上がる。南国宮崎の冬日がやさしく千切り大根を包むように注がれる。地域の独特な風物を詠う。俳句はこのような生活詩として裾野が拡がるのである。
雑詠-山本洋子・選
冬の蜂箒の穂先からこぼる
千葉  成田杏一
たてかけてあった箒の穂先から蜂がでてきた。日向の壁にもたせてあった竹箒には、温もりがあったのだろう。細い枝の入り組んだ間は、「冬の蜂」ならではの居場所であり、「こぼる」とこぼれ出てきた有り様を具体的に、生き生きと捉え、「冬の蜂」の姿も動きもよく見えてくる。
秒針の大きく動く受験かな
三重  梅枝あゆみ
受験とは、何と気が急く場なのだろう。時間ばかりが気になる。黒板の横の時計も早く動いているようだ。「秒針の大きく動く」は空間の機微をよく表している。「大試験」の時もそうだが、「受験」が一番心臓に悪い。時間も何もかも克服して集中できた者に良い結果が宿るのだろう。
初座敷かはるがはるに赤子抱く
山形  鈴木花歩
初座敷とは、その年初めての正月の神事を行う、或いは客を招く座敷を言う。少し改まった座敷に、うまれたばかりの赤子が披露されたのだろう。招かれた誰彼の胸で赤子は健やかな笑顔を向ける。めでたさは赤子の登場でひとしおのものとなる。「初座敷」の季語が無類に効いている。
兼題
今月の兼題…【時】
兼題-大高霧海・選
吊されし鮟鱇ダリの時計めく
埼玉 橋本遊行
蝶時に万里の波濤越えにけり
福岡 砥上克介
天空の時空を越えて雁帰る
茨城 羽鳥つねを
兼題-佐藤麻績・選
一枚に時代(とき)重ねゆく紙漉女
埼玉 関根艸子
時計屋の時計おほらか春隣
宮城 杉本秀明
春はあけぼの吊革にゐる時間
神奈川 沼田樹声
兼題-田中陽・選
燦燦と時を貪る凍死体
群馬 北爪秋峰
初風呂に時代おくれの身を沈む
長崎 金澤見鶴
腕時計の我手首好き夏来る
長野 岩本隆子
兼題-名和未知男・選
漬け時に大根干して逝かれけり
神奈川 大矢知順子
時雨忌や岩波文庫黄色帯
東京 宇井偉郎
寒釣りの時々連れの浮子のぞく
栃木 石井 暁
兼題-山下美典・選
時々は迷ふ音あり松手入れ
三重 森 多恵子
幽閉の時を四角く採氷夫
東京 横田眞理子
きな臭き時代は巡る蝌蚪に脚
神奈川 安田直子

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