-俳句界 2014年 03月号-


●毎月25日発売
●A5判  ●定価1,000円



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俳句ボクシング・今月のチャンピオン
俳句ボクシング・今月のチャンピオン【赤コーナー】
干乾びてゐるかに母の日向ぼこ
福岡 彦坂正孚
俳句ボクシング・今月のチャンピオン【青コーナー】
ブーツにも脚線の美のありにけり
青森 田端千鼓
雑詠
雑詠-有馬朗人・選
帰り咲く都忘れや遠流の地
福岡  金子正次
「遠流の地」とはどこであろうか。隠岐島とか佐渡島そして土佐などが思い浮かぶ。どこにせよ都忘れの花が帰り咲いたところが、一脈の哀れをさそう。都より遠く流された人が都のことを思って嘆き悲しんだことであろう。都忘れの帰り花に着目したところが佳い。
銀盆の牡蠣食ふオペラ座の近く
茨城  國分貴博
牡蠣が銀の盆に乗せられて出て来たのである。フランスやイタリアなどヨーロッパでも牡蠣は良く食卓にのぼる。この句では「銀盆」で食べるところがパリらしい。それもオペラ座の近くであるところに詩がある。
万屋に昭和の並ぶ祭りの日
新潟  美濃部紘三
祭りの日には、食べ物や玩具などさまざまなものが店前に並ぶ。特に「万屋」であるから、それ以外の日常品も並んで売られている。そのどれもが昭和時代にはよく使われていたり、食べたりした懐かしいものである。「祭りの日」らしい光景が佳い。
雑詠-池田澄子・選
新米を収めし蔵の周り掃く
奈良  岩城吉蔵
私の見知っている風景ではない。でも分かります。新米は消費者にとって嬉しいものだけれど、育てて収穫する人にとっては最高の宝物。「周り掃く」という行為を表す言葉が、収穫の充実感、安堵感、そして自然への感謝をそれと言わず十分に表現している。
記さねばならぬ鶴の死鶴日誌
鹿児島 内藤美づ枝
何故「鶴日誌」なのか。職業か、ただ好きで逢った鶴の様子を記しているのか。何れにしろ鶴が作者にとって大切な存在であることが一読理解できる。泣きの入っていない静かさが見事。句中で「記さねばならぬ」のは「鶴の死」だが、人生にこういう時が何度か現れることをも思った。
朴落葉大き音して踏まれたる
神奈川 安室敏江
乾いて舟のように反った朴落葉はとても美しい。拾いたくなる。手に掲げて歩きたくなる。そういう存在感のある落葉。それを気にもせずに踏んでいった人がいた。「大き音」は、落葉が分厚く乾ききっている証。物の儚さの証。
雑詠-伊藤通明・選
新米にこの上もなき一夜干
東京  髙野虹子
新米だけでも美味しい上、尚食欲をそそる絶妙な塩加減の身のふっくらした鯵かカマスの一夜干の焼いたもの。日本人としてこの上なき味覚といえよう。読むだけで幸せである。作者宅の食卓から色も匂いも味も伝わってくる。このような句に出合える喜びも又選者として有難いことである。
木の実落つ確かな音を残しけり
山形  石山孝子
しずかな杜を歩いているとき、木の実の落ちて弾ける音を聞いた。一つか続けざまか、風もないのに乾いた石畳か石段に確かな音だけを残して。作者の澄み切った心に応えるように落ちた木の実。「確かな音を残しけり」という措辞に感心する。
健さんの破顔一笑文化の日
福岡  鶴田独狐
昨年の文化勲章受章者に、高倉健さんの名を見たとき、驚いた人も多かったのではないか。又、嬉しかった人も多かったのではないか。いつも背筋を伸ばし含羞をおびた男らしい顔。「男はだまって……」の代名詞のような健さんが喜びの日にふと見せられた笑顔は、まさに値千金。その様子を敏感にとらえられ一句にまとめられた作者に乾杯! 健さん、おめでとうございます。
雑詠-茨木和生・選
鰯雲わが祖も海捨てたりし
石川  前 九疑
漁業をしていたものが海を捨てて他の仕事に就くことは大きな決断がいる。工業団地を造るための埋め立てだろうか。空港建設のためだろうか。漁業権を放棄して海を捨てた漁師の一人に作者の祖先もいた。鰯雲が海上を移動する時、海を捨てた祖先のことがしきりに思われる。
瓜坊は新屑米を貰ひけり
福岡  洞庭かつら
その体に瓜の模様があるので、猪の子は瓜坊と呼ばれる。おそらく親と一緒に猪おとしに入ったのであろう。かわいらしいので親に頼み込んで瓜坊を飼っている少年のいたことを知っている。この瓜坊、新米がとれた時、その屑米を貰っている。大切に育てられている瓜坊。
好物の柿も届きて立ち日かな
静岡  阿久津明子
生前柿が好物だった死者の立ち日、即ち命日の日のお供えに柿が届けられたのである。あたたかな柿の色で仏壇の前は急に明るくなったようである。やっぱりよく覚えていて下さったと、柿の送り主に感謝の思いが一入となる。
雑詠-大串章・選
友に会ふ心にペチカともりけり
福岡  岡本鞆子
久しぶりに旧友に会う。その心にペチカがともる、というのは、子供のころ一緒に歌った童謡「ペチカ」を思い出しているのだろう。「〽雪の降る夜は 楽しいペチカ ペチカ燃えろよ お話しましょ」というあの歌である。「ペチカともりけり」と言いなしたところが詩的で良い。
虎造も千恵蔵も去り昭和の日
神奈川 尾崎秋明
昭和の日に昭和の大スターを思っている。「虎造」は昭和三十九年に亡くなった浪曲師・二代目広沢虎造。「清水次郎長伝」の「石松三十石船」は一世を風靡した。「千恵蔵」は昭和五十八年に亡くなった片岡千恵蔵。「忠臣蔵」や「宮本武蔵」の勇姿を覚えている人も多いだろう。
銘柄は風林火山新走り
千葉  上田久美子
風林火山の四字は孫子の兵法書によるが、甲斐国の戦国大名・武田信玄の軍旗に記された文字として知られる。従って、この「新走り」(新酒)は甲斐国(山梨県)で醸造された酒であろう。「銘柄は風林火山」と端的に言って出たところが快い。いかにもおいしそうである。
雑詠-角川春樹・選
芋虫をつつきし棒を土に挿す
千葉  大竹 旭
芋虫を戯れにつついた棒を、地面に挿して立ち去ったという句意である。芋虫にすれば、至極迷惑な大事であったろう。一連の出来事を無味乾燥に描写した、アンチロマンというべき作品。
干大根曲げて確かむ日の匂ひ
埼玉  田坂泰宏
沢庵漬けにする大根を、天日に干している景である。乾燥がすすんだ大根には、驚くほどの弾力が生まれている。掲句では、その様子が、「曲げて確かむ」という俳諧味のある表現で描いた。
狐火を見て来し顔をひと振りす
滋賀  北村ひとし
俳句においては、「~を見て来し」という表現はこれまでにも多く用いられてきた。掲句の優れているところは、「顔をひと振りす」という単純な所作で、「狐火」の本意本情を簡潔に捉えているところである。己に対する観察眼が、こまやかに行きとどいた作品。
雑詠-辻桃子・選
藁屋根の膨れんばかり鵙日和
埼玉  木村映子
鵙が高音で鳴いている。その鳴き声がよく透る晩秋の大気、晴れ渡った日和が鵙日和。秋の日が燦々と藁屋根にもそそぐ。その日差しを受けて屋根の藁が膨れているようだというのである。「鵙の晴」ともいう「鵙日和」が、豊かな藁屋根によってとらえられている。
おくんちや曳子は塩をぶつけあひ
大阪  北山日路地
おくんちは九州北部の、お九日(くにち)、九月九日の秋祭。掲句は唐津くんちだろうか。赤獅子、青獅子を始め、とりどりの曳山が唐津神社からお旅所まで巡行する。曳山を曳く男衆が出番を待つ間、塩をかけ合って体を清めている。男衆の意気や勢いが「塩をぶつけあひ」によく出ている。
吊されて鮟鱇の腹膨らみぬ
神奈川 谷口一好
鮟鱇は吊し切りにされる。この鮟鱇も顎を引っかけて吊され、これから捌かれるところ。鮟鱇の胃袋に、飲み込んだ烏賊やら魚やらが入っているのだろう。重力で腹のあたりが膨らんでいるのである。「腹」に焦点を絞ることで、リアルななまなまとした鮟鱇のさまが彷彿としている。
雑詠-豊田都峰・選
御廟へと木の葉木の実を踏みしめり
埼玉  岸てる子
「御廟」とあるからにはある程度の規模の大きさが考えられるが、その空間を「木の葉木の実」でうめたところに象徴性を認める。いろいろな思いということである。そんな多くのものを心にしての、墓参の道である。
晩節は引き算を捨て小春かな
神奈川 宮島隆生
まず余生としないで「晩節」として振り返りがよい。余りではなく、やはり「晩」という認識である方がよい。余生では「引き算」そのものとなる。前向きに過ごしてこそ「小春」と言うことが出来る「晩節」である。暖かくお過ごしください。
五体もて火を読む陶師星冴ゆる
千葉  梶原ひな子
まずは「五体」という把握がよい。全身では肉体面的だが、これはさらに精神面をもふくむと思いたい。そしてまさしく窯の火と一体になっているが、組み合わせた「星冴ゆる」に「陶師」の目の冴えを私は重ねて味わっている。
雑詠-宮坂静生・選
泣くまいとして雪の富士仰ぎけり
長崎  高橋栄美子
例えば肉親の死に出会った時など、「泣くまいとして」気を強く持たねばと、涙を堪える術を探る。眼前に聳える雪を頂く荘厳な富士山に目をやり、悲しみから逃れようとする。溢れる涙をこぼさないように目を上に向けるのが精一杯だ。必死な句である。「雪の富士」との配合がいい。
揺れてコスモス揺れず一万尺の妻
東京  戸井田英之
まず注目したが、「一万尺の妻」が判らない。私見を記す。若き日に唄った「山の歌」に出る一万尺(約三千メートル)は高山の意。そこから志高い山好きな妻と解した。折からコスモスは揺れるが、わが妻は悠然たるもの。艱難をものともせず切り抜ける妻賛歌の句と読んだのである。
金塊に見ゆる月下の狗尾草
栃木  中村國司
野の狗尾草、名も俗に猫じゃらしが月光を浴びて、「金塊」に見えるという。よくぞ見て下さった。「月と鼈すっぽん」の如し。見る者に詩人の眼があればこそ、他愛もない野草が値が付かない「金塊」になったのである。月光のマジックは素晴らしい。例え幻であっても、人間に無限の夢を与える。
雑詠-山本洋子・選
新米を収めし蔵の周り掃く
奈良  岩城吉蔵
採れた米を俵に詰め蔵に収める。ぎっしりと詰めた蔵の扉を閉め、こぼれた藁などをきれいに掃く。蔵の戸口も後ろも、庭に入ってくる門も残らず掃いて収穫の一連の作業がおわる。「蔵の周り」が辺りの様子も、きれいな掃き目も彷彿とさせ、収穫の溢れるような喜びも伝わってくる。。
赤んぼの名のつきし日の白障子
兵庫  木村美智子
生まれたばかりの赤ん坊に、今日、名がついた。貼りたての障子を通して明るい日差しが座敷に入ってきているのだろう。誰彼となく名を呼んでは子の顔を覗きこむのかもしれない。白障子は、清々しく、めでたく名のついたばかりの嬰子に映える。「白」に子の行く末への祝ぎ心が表れる。
落日も過客でありし木守柿
福井  木津和典
「月日は百代の過客にして、行きかふ年もまた旅人也」。『奥の細道』の冒頭の言葉が、そのまま身にしみる落日を作者は見たのであろう。「木守柿」に映える夕日がみえる。「木守柿」をのこして朝日も、そしてこの美しい夕日もとどまらず旅をしているのだ。
兼題
今月の兼題…【学】
兼題-大高霧海・選
学び舎より征きて還らず天の川
神奈川 児玉 修
山茶花の美学零るるだけ咲けり
埼玉 中野博夫
生身魂学位をもたぬ知恵袋
大阪 隠岐灌木
兼題-佐藤麻績・選
遊学の魯迅の像や寒昴
静岡 渡邉春生
学帽は父の宝よ秋闌くる
埼玉 向山文子
オルガンの小学唱歌山眠る
青森 福士信平
兼題-田中陽・選
学童の遊ぶ樹泣く樹冬の雲
長崎 高橋栄美子
駆けめぐる小学校の落葉かな
東京 井戸靖子
秘密保護法案通過昭和を学べ
北海道 澤田吐詩男
兼題-名和未知男・選
学び舎より征きて還らず天の川
神奈川 児玉 修
桜咲く寺に学童疎開の碑
長野 岩本隆子
楷紅葉旧池田藩学舎跡
大阪 吉田 喬
兼題-山下美典・選
ストーブに指あたためる盲学生
滋賀 北村和久
梟の学者めきたる眼の据り
東京 高橋透水
学校に行かぬ子とゐる炬燵かな
宮崎 萩原郁美

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