-俳句界 2014年 02月号-


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●A5判  ●定価1,000円



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俳句ボクシング・今月のチャンピオン
俳句ボクシング・今月のチャンピオン【赤コーナー】
芒原女狐ひそんでゐるやうな
神奈川 盛田 墾
俳句ボクシング・今月のチャンピオン【青コーナー】
天の河地球は星の観覧車
東京 関根瑶華
雑詠
雑詠-有馬朗人・選
車座で仏具磨くも報恩講
滋賀  井上美代子
報恩講は東本願寺では十一月二十一~二十八日、西本願寺では一月九~十六日に行われる。それ以外の浄土真宗の寺でもその頃行われる。この句は滋賀の辺の寺の光景であろう。信徒達が車座になり仏具を磨いて報恩講の準備をしているのである。車座で仏具を磨く様子が報恩講らしい。
奈良墨に銀のふちどり秋涼し
埼玉  竹田圭子
奈良で作られた墨は美しい。この句の墨には銀のふちどりがしてあるのである。そのふちどりの銀色を楽しみながら、墨を磨っていると、しみじみ秋が深まったと思ったのである。奈良墨に秋の深さを感じたところが佳い。
渦潮に夕雁の棹崩れざる
大阪  碇 天牛
鳴門海峡の渦潮であろうか。その上を夕暮に雁が渡って行くのである。渦潮の上でも雁は列を崩さずに飛んで行く。大景を写生して成功した佳い句である。
雑詠-池田澄子・選
墓詣りこんなに軽き防護服
新潟  美濃部紘三
「こんなに」の口語と「軽き」の文語が気にはなりますが、その混乱の雰囲気も含めて作者の戸惑いと恐怖が伝わります。「防護服」はいろいろあるのでしょうか。墓詣りに行くのにそれが必要なのでしょう。今の日本を思えば、放射能に汚染された墓域。国民はおろおろするだけ。
初菊や独居老人になる父
北海道 和佐尚子
「独居老人」という情け容赦のない言葉。母が逝き残された父が、そう呼ばれる境遇になったのでしょう。やっていけるのだろうかと心配しつつ、差し当たり良い方法は無い、という作者の後ろめたくさえある心配。複雑な思いが冷たく言い放たれて、困惑が痛々しく現れています。
綿虫や寝たきりにさせたくはなし
滋賀  北村ひとし
暗い句が並んでしまいました。これが現実。殆どの人が抱える可能性を持つ現代の悲しみ。「させたくはなし」は、手助けしたい思いと、それでも結局はそうなってしまうのだろうかという悲観、自分自身の無力への嘆きをも見せています。
雑詠-伊藤通明・選
玄関に赤き靴ある良夜かな
鳥取  山内英子
外出から帰って玄関を開けると、日頃はない真っ赤なヒールの靴がまん中にきちんと脱ぎ揃えてある。どんなお客様だろう、思いがけない赤い靴。その夜の月見が心躍るものだったにちがいない。赤い靴と良夜の取合せが面白く鮮明である。「良夜かな」と言いきったところもよい。
自転車のうしろに弟(おとと)鯊日和
東京  貝塚明雄
天気のよい休日、仲良しの兄弟が、海岸か川岸に釣りに行く。後の弟が二人分の竿と魚籠を持ち、兄の漕ぐ自転車に喜々として跨っている。携帯電話やゲームなどで遊ぶ子の多いいま、何とも心和む風景である。「鯊日和」の下五が活きている。たくさん釣れることを期待しよう。
教頭の腰手拭ひや運動会
東京  三ツ木宗一
運動会で一番忙しく影の活躍をされるのは教頭先生。街の中の大規模な学校ではなく、もしかしたら村の小学校かもしれない。腰に白い和手拭をはさみ汗をふき手をふき、走りまわる教頭先生に親しみが湧いてくる。腰手拭がすべてを表わしている。
雑詠-茨木和生・選
被曝地は今も被曝地秋刀魚焼く
埼玉  南 卓志
東日本大震災の時の東京電力福島原子力発電所の事故による被曝地は、除染だけではそこに住むことのできない地域が広い。今も被曝地として故郷に住むことのできない人は、仮設住宅に暮らして、秋刀魚が旬の時期が来れば秋刀魚を焼いて、被曝した故郷の地を思う。
看取りさへ今は思ひ出秋彼岸
北海道 髙畠テル子
長年の看病の後に、おそらくご主人を見送ったのだろう。その間にはつらい思い出もあっただろうが、作者の看病ぶりに感謝してご主人は旅立たれたに違いない。今となってみれば、その看病の時も懐かしい思い出となって甦って来る。「秋彼岸」の季語が生きている。
スケートで汽車と競走湖よ
千葉  鵜澤好永
現在このようなことのできるような地はないだろうから、おそらく少年時代の思い出を詠んだ句であろう。氷結した湖の近くを黒煙を吐いて蒸気機関車がやってくる。その「汽車」と「スケート」で並走して速さを競っている。どれほど楽しかったか分からない思い出である。
雑詠-大串章・選
家郷いま長寿の村に豊の秋
大阪  石川友之
「豊の秋」とあるから、この「家郷」は農村であろう。その家郷が今や「長寿の村」になっているのだ。思えば、家郷の人々は朝早くから夜遅くまで、汗水たらして働いていた。その人々が長寿を保っておられるのは嬉しい。家郷を愛し且つ誇りに思う気持が一句ににじんでいる。
山頭火も井月もをり案山子展
千葉  水沢燕子
並び立つ案山子の中に種田山頭火や井上井月を思わせる案山子が交じっている。山頭火も井月も漂泊の俳人として名高いだけに、二人を案山子展に見出した時の感慨は深い。その案山子を見ていると、嘗て、稲田の中を歩いて行ったであろう行脚俳人・山頭火、井月の姿が思い浮かぶ。
障子貼る思ふ存分破らせて
埼玉  横田幸子
子ども達にはいつも障子に穴を開けてはいけない、障子を破ってはいけない、と厳しく言っている。しかし、今日は思う存分(!)破らせている。そのあと障子を貼り替えるのである。この時とばかりにはしゃぎながら、楽しそうに障子を破っている子ども達の声が聞こえるようである。
雑詠-角川春樹・選
団栗を手品のごとく出して見せ
神奈川 二階堂芙美子
「手品のごとく」という措辞により、初ものの「団栗」を得意げに披露するひと、見せられたひとたちのあたたかい輪の広がりが眼に浮かぶ作品となった。
奈良墨に銀のふちどり秋涼し
埼玉  竹田圭子
あたらしく求めた「奈良墨」を下ろすところであろう。墨を磨るときの心の落ちつき、威を正している作者の風姿も、「銀のふちどり」というこまやかな描写から伝わってくる。観察眼の効いた佳吟である。
ハトロン紙くちびるに当て秋のこゑ
香川  磯崎啓三
ハトロン紙を用いて工作した玩具や手製の楽器であろう。古典的な季語の「秋のこゑ」に対して、「ハトロン紙」を取り合わせることで、新しい「秋のこゑ」の一句となった。
雑詠-辻桃子・選
潮鳴りのたけなは鷹の渡りけり
兵庫  森山久代
「鷹の渡り」は、渥美半島の伊良湖岬や鹿児島の大隅半島の佐多岬などが有名。激しい潮鳴りが響く岬。その潮鳴りのたけなわのとき、鷹が渡りを始めた。上昇気流に乗り鷹柱をなして上ってゆく。無駄な描写がない。海には「潮鳴り」の音。空には「鷹の渡り」のドラマ。
しろがねに鰯干し上げ浦日和
三重  鈴木智子
浜の干し場いっぱいに鰯を干している景。早朝水揚げした鰯であろう。「しろがねに」は、鰯の銀がびっしりと並べられている様子。その鰯に天日が降り注ぐ。「浦日和」という語が、よく晴れた日の浦の風景や潮の香をよく伝えている。「浦日和」がぴたりと決まった。
石蕗咲くや小さき盛塩切戸にも
京都  前川おとじ
京の料亭の庭の切戸口であろうか。「切戸」の近くに「石蕗」の花が黄色の花をつけている。いかにも石蕗の花が似合うところだ。その小門に小さな「盛塩」が置かれてあった。もちろん玄関には立派な盛塩がしてあった。さりげない句だが、京に住み京の町を詠むこの作者らしい句だ。
雑詠-豊田都峰・選
せめ焚きの窯の火明り石蕗の花
茨城  國分貴博
陶窯は温度の管理が勝負とされる。夜を徹して火の色を見つめての作業である。「せめ焚き」とは温度を高くするための追い焚きか。あたりに洩れ漂える「火明り」は熱気もあろうが、その外れにきりっと咲く「石蕗の花」を浮かび上がらせたのは手柄である。
分身は浄土に在す日向ぼこ
福島  松坂一生
「分身」とは連合いと解釈する。しかし、ひろめて身内としてもいいだろう。別れて日が経てば、「浄土」に往生していると信じたくなる。此岸の浄土が「日向」とすれば、ますます彼岸の浄土を考えたくなるのは自然の事である。
山頂は千草の城址後の月
大阪  春名 勲
「千草」と選択したことをまず評価したい。城に係わった多くの人の命を思わせるから。さらに「後の月」と設定したことは、多分悲史的なことを象徴したのではないかと推定する。まだ完全に至らない月光に照らされる「山頂」の「城址」の佇まいは印象的。
雑詠-宮坂静生・選
仰ぐとは祈ることなり冬銀河
愛媛  堀本芳子
冬の銀河を見上げる。「仰ぐ」とは見上げることに敬虔な思いが入る。天上には限りない亡き人の魂が星となっている。亡き人との繋がりは信じること以外にはない。信じて祈ることで見えないものが見えて来る。句はすでに似た着想があるであろうが、冬銀河の清冽さは胸を打つ。
木犀の香りに妻のゐるやうな
福岡  宮辺博敏
亡き妻を追慕した作。秋になって、金木犀や銀木犀が芳香を放つ。それを嗅ぐ。妻の匂いだと思う。亡くなってから妻のことを忘れたことがない。何かにつけて妻を回想するきっかけを求めて居る。木犀の香が妻の匂いとはすばらしい夫人を回想する。作者の敬虔な人柄が滲んだ句だ。
緞帳の鶴のぬけだす十三夜
東京  針ヶ谷里三
技巧を凝らした作。九月の十三夜の芝居小屋風景である。緞帳に描かれた鶴が折からの月光に誘われて、ひょいと抜け出してしまった。窮屈な緞帳の中よりも天地は広い。しばらく遊んで、宵にはなにくわぬ顔をして、また緞帳に戻っている。そんなお話ができるような一句である。
雑詠-山本洋子・選
早発ちの土間の片すみちちろ鳴く
愛知  小松 温
早朝、起き出して出立の用意をする。まだ誰も起きていない。物音もない土間の片隅にちちろの声がした。その声が、心細い私を力づけてくれる。私は起きて貴方を見送っていますよ、と言っているように。「土間の片すみ」が効いている。多くを語らず読み手の想像に任せた所が良い。
作務僧の煙乱さず落葉焚く
福島  森谷あきお
禅寺の僧は、掃除や農作業を修行として従事する。境内の落葉を掃くのもその一つ。静かな仕事ぶりが「煙乱さず」にあらわれている。掃きあつめたものをどさっと放り込んだりせず、すこしずつ焚いていく。僧侶のしずかな動作とともにあたりの閑けさもまた表している。
蟷螂の風に研がれしごとき斧
千葉  岩瀬孝雄
蟷螂が斧をふりあげているのを見たのだろう。あたりに風が吹き起こって、その斧はいよいよ研がれたように鋭くなっていくように見える。「風に研がれしごとき」が斧の細くても強そうな様子をリアルに伝える。小さい蟷螂が大きく見えてくる。
兼題
今月の兼題…【文】
兼題-大高霧海・選
露けしや鮑叔逝きて文も絶ゆ
愛媛 境 公二
誄文の行間に聞く秋の声
新潟 岡地蝶児
文学の見果てぬ道や蚯蚓鳴く
石川 燕北人空
兼題-佐藤麻績・選
文机空蝉一つ置いてある
富山 的池 遙
トランペットのソロで開幕文化の日
滋賀 宮川秀穂
晩年の母の文字ある種袋
長崎 青木のり子
兼題-田中陽・選
文化の日大悪人の句碑に遇ふ
東京 中川 肇
文庫手に私服刑事の古コート
東京 高橋透水
文句無し福島の新米を磨ぐ
神奈川 斎藤徳重
兼題-名和未知男・選
妻恋ひの旅人の碑文秋しぐれ
福岡 宮辺博敏
団栗や縄文人には成り切れず
神奈川 野澤星彦
灯下親し文語聖書に力あり
北海道 塩見俊一
兼題-山下美典・選
晩学に文法の壁秋惜しむ
三重 菊田真佐
長き夜の一文字づつの写経かな
岐阜 大井公夫
日展に劣らじ村の文化祭
愛知 大竹耕司

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