-俳句界 2013年 11月号-


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●A5判  ●定価1,000円



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俳句ボクシング・今月のチャンピオン
俳句ボクシング・今月のチャンピオン【赤コーナー】
かき氷小言も溶かし食べている
京都 除門喜柊
俳句ボクシング・今月のチャンピオン【青コーナー】
沈黙のプールを閉めて帰りけり
埼玉 小林康男
雑詠
雑詠-有馬朗人・選
夏つばめ柱の多き生家かな
青森  阿久津凍河
昔は多くの家に太い柱が何本もあった。特に田園地帯の大きな家は、大黒柱を初め立派な柱が立っていた。そのような大きな家の軒下には燕の巣があった。凍河さんの生家は今もがっちりとした柱が沢山あり、「夏つばめ」が飛び回っているのである。懐かしい風景である。
流星やムーランルージュ出でくれば
神奈川 田中 仁
ムーランは「風車」、ルージュは「赤い」というフランス語である。「ムーランルージュ」は一八八九年にパリのモンマルトルに開設された酒場で、現在もショーが行われている。パリの名所の一つである。華やかなショーを見て外に出たとき、流れ星を見て旅愁を感じたところが良い。
河童忌や田端の床屋で蒸しタオル
群馬  庭野純一
東京都北区の田端には、山手線と京浜東北線が分かれるJR田端駅がある。交通の便が良く、大正から昭和初期には多くの文人が住んでいた。芥川龍之介もその一人であったと思う。その「田端の床屋」で、これ又懐かしい「蒸しタオル」で顔を剃る準備をしてもらっているところが良い。
雑詠-池田澄子・選
洞(がま)あとの骨に水打つカメラマン
愛知  安井千佳子
ルビがありますから鎌倉や京都などではなく、沖縄のあの悲惨な「洞」。逃げ込んだ其処で亡くなった人々の遺骨。カメラマンは余りの悲惨さに、せめてもの哀悼に遺骨に水を打った。あるいは、乾ききった骨をよく撮るために水を打ったか。どちらに読むかは読者の自由。それが俳句。
不確かな明日こそ佳けれ心太
静岡  北邑あぶみ
誰もが自分の未来を知りたい。ところが未来は理想通りに待ってはいません。明日が分からないからこそ平然と今を生きていられる。明日の幸・不幸が分かっていたら、「心太」なんて不確かなものを呑気に食べていられませんよね。
端居してしみじみ実家よかりけり
茨城  國分貴博
子供、ことに息子のいる人は、こんなことを一度言われてみたいものだと思うでしょう。何をサービスしたわけでもなく、「端居してしみじみ」とは、平凡に見えて容易に思いつくフレーズではありません。
雑詠-伊藤通明・選
叱られし子が石を置く蟻の道
岐阜  矢橋郁子
叱られたあとの、ぽつんと取り残されたような空間が子供を包む。その鬱屈した思いが、「蟻の道」に小石を置くという行動に移った一瞬を、掬い取るように詠みとめられた。淡々とした詠みぶりだが、蟻や小石がくっきりと見えていた幼時の記憶を呼び覚ます情感も併せ持っている。
衿軽くあはせて茅の輪くぐりけり
愛媛  久保ふみえ
「茅の輪」は、くぐれば穢れや災難を祓ってくれるというのだから有難い。青々とした「茅の輪」をくぐるときには、自ずと心が正され神妙な足取りとなる。その心の変化を「衿軽くあはせて」とまさに軽やかに描出。清々しい気分の中に、隠し味のような艶な雰囲気も混じっている。
分校のプールは川を塞き止めて
山口  御江やよひ
川を塞き止めたプールには危険もともなうだろうが、少人数ならば先生方の眼も充分に届くことだろう。一気に詠み下ろした弾むようなリズムが、句に一層の輝きをもたらしている。それにしても何とも楽しい。辺りは豊かな自然の景が広がっているのであろう。
雑詠-大串章・選
古書店に文学老人文化の日
愛知  加藤鋹夫
古書店で老人が本を探している。一冊一冊手に取っては丹念に頁をめくっている。その眼差しは真剣そのもの、近寄りがたい感じさえする。この句、文学青年をもじって「文学老人」と言ったところが面白い。季語「文化の日」もよく効いている。
分校のプールは川を塞き止めて
山口  御江やよひ
都会の学校には立派なプールがある。しかし山村の分校にはそんなものはない。校舎の横を流れる川を塞き止め、水を湛えると即ちそれがプールである。川の中のプールは水が清冽で太陽が煌めき、ときには水底を泳ぐ魚に出会うこともある。川を塞き止めたプールも捨てたものではない。
夕焼や下駄投げて占ひしころ
富山  平山幹子
夕焼けを眺めながら、子供の頃の下駄占いを思い出している。「あした天気になーれ」と言いながら下駄を遠くへ放り投げ天気を占う。表向きに着地すると晴れ、裏向きに着地すると雨、横向きに着地すると曇りであった。あの頃はみな下駄履きだったから、こんな楽しい遊びができた。
雑詠-角川春樹・選
橋蹴つて少年鮎になりゆけり
岐阜  大井公夫
かつては、夏ともなれば、川遊びをする子どもの姿が見られたものである。掲句は、清流の「鮎」を配することで、少年期のいのちの瑞々しさを捉えた、秀吟。
ビートルズ聴きて煮付ける舌鮃
神奈川 野地邦雄
「舌鮃」の煮付けを作ったという内容であるが、「ビートルズ」との取り合わせには意表を突かれた。これにより、「ビートルズ」をリアルタイムで聴いてきた世代や、人生の歩みが伝わってくる。
惚け給う胸にほうたる飼いしより
大阪  西田唯士
親を介護されている作者であろうと思われる。掲句に詠まれている蛍は、心象的な儚さを負っている。介護については、推察してあまりあるものがあるが、透明感のある作品に見事に昇華させている。
雑詠-辻桃子・選
紙魚棲めり戦後派といふ小説群
長崎  金澤見鶴
戦後派の作品といえば、野間宏『真空地帯』、椎名麟三『深夜の酒宴』、梅崎春生『桜島』など、実存的な生が描かれた。掲句は、それらの書物に紙魚が棲んでいると詠む。「…といふ」の措辞と相俟って、戦後六十八年の茫々たる時の経過を感じさせる。
木の蔭に涼風浄土ありにけり
愛知  小笠原玲子
片陰もない炎天の道を歩いてきて、「木の蔭」に休んだのであろう。汗をぬぐうと、快い涼しい風が微かに通い、立ち去り難い思いがした。「涼風浄土」が言い得て妙。あれこれ言わずに、それだけ詠んだのがよい。
かにかく忌屏 風に仮名のちらし書き
東京  宇井偉郎
「かにかく忌」は十一月十九日。北原白秋、木下杢太郎らと「スバル」を創刊した歌人吉井勇の忌日。〈かにかくに祇園は恋し寝ぬるときも枕の下を水のながるる〉による。祇園の耽美的な歌に、屏風にちらし書きした仮名文字がよく似合う。
雑詠-豊田都峰・選
先棒は木場の五代目祭髪
東京  田中靖人
深川界隈の神輿風景。「先棒は」となにか畳みかけるような表現は神輿のうねりなど威勢のよさを感じさせる。「祭髪」はねじり鉢巻がぴたっと決まる丸刈り姿か。江戸気質の祭風景をあざやかに焦点をあわせて表出している。
夏雲や水は底からぐつと汲む
岐阜  三田村広隆
まず「夏雲」を設定。青空の広がり、白い色の雲の盛り上がりなどを示し、そして読者を暑さの盛りのなかに置くという上五。冷たい水をぐっと両掌を深く差し込んで「汲む」。途端に一度に涼しさの中に誘われる。それで十分である。
星もなく月も沈むや木葉木菟
福岡  上野山 剛
夜も深く森の奥で鳴く「木葉木菟」を、たいへんよい場においたことを評価したい。具体的に描いて暗ければ暗いほど、深山霊域で鳴くにふさわしい。仏法僧は(姿の仏法僧)、それに対し(声の仏法僧)とも言われるとある。
雑詠-松本旭・選
元軍の消えたる海の卯浪かな
福岡  洞庭かつら
文永一一年(一二七四)と、弘安四年(一二八一)に、九州博多湾に押し寄せた元軍は、大風により沈没したという歴史的事実。いま、その「卯浪」のわきたつ海を訪れて感懐にひたっているのだ。「卯波」の季語が利いているとみてよいだろう。
日雷仁王の憤怒さそい出す
東京  坂さつき
寺に詣で、憤怒相の仁王を見上げる。突如晴天下、ビリビリとひびきわたる雷。その雷が、仁王の憤怒を誘い出したと見ているところがおもしろい。浅草の観音様等にお詣りした時を想像すればよかろう。
駐在に傘を返しに梅雨晴間
愛知  玉木尚孝
句意明快。俄雨に出会って駐在所で借りた傘を返しに来たのだ。田舎町などに、親切なおまわりさんがいるのはうれしいことである。一句、明るく、力まないやさしい表現がよい。
雑詠-宮坂静生・選
不確かな明日こそ佳けれ心太
静岡  北邑あぶみ
誰も「不確かな明日」がいいわけがない。ところが、それがいいとは若いのである。私の力で明日を築いて見せると内心自信があるのであろう。堂々たる気合が感じられる。俳句は気合の文芸。一句に隙を与えないでいい切るところに迫力が生まれる。内容もいいが一句の迫力がいい。
牛蛙鳴いて沖縄慰霊の日
長崎  中野省蔵
「沖縄忌」を「沖縄慰霊の日」ともいう。昭和二十年六月二十三日沖縄戦が終了した日を慰霊の日に定めた。その日を終戦としたら、広島も長崎も大変な犠牲を出さずに済んだ。戦争という人間の愚を「牛蛙」が笑っている。沖縄の慰霊に底力ある「牛蛙」を登場させたところがいい。
立葵咲き尽すまで立ち尽す
大分  堀田毬子
「立葵」の花期は長い。下から先まで咲き上がるのに一週間はかかる。その間花の前で「立ち尽す」ことはありえない。葵の花の美しさを讃えた句であろう。一生懸命咲き続け、花火のような花を次々と開く。見慣れた花ではあるが、必死なさまが伝わる。そんなけなげさを讃えたもの。
雑詠-山本洋子・選
天平の門の軒借る大夕立
奈良  渡辺政子
突然の大夕立に思わず駆け込む山門である。「天平の門」というと、唐招提寺のようにそそりたつ山門が目に浮かぶ。近くに住まうのだろう。一寸借りた軒。天平のころから立つ山門がふいに身近に思える。大夕立も天平の昔に降る雨のように古色をおびて感じられるのは不思議である。
独りかと思へば月の上がりをり
静岡  山本 學
不思議な静寂のある夜。独りの家路である。辺りに人影がなく、何やら淋しい。そう思って空を振り仰ぐと、いつの間にか月がのぼっていた。ああ、なんと美しい。私と月としばらく向かい合う。独りではなかった。私には月という味方がある。溢れるような月の恩寵を知る作者である。
背負籠をほいと投げ出す生身魂
静岡  渡邉春生
まだまだ元気に畑へでかける「生身魂」である。「ほいと投げ出す」が、足腰も達者で、矍鑠とすごすその人をよくあらわしている。愛しい親を嬉しく見守る眼差しがみえる。
兼題
今月の兼題…【人】
兼題-大高霧海・選
原爆忌鬼哭洩れくる人物画
茨城 羽鳥つねを
敗戦忌人間本来無一物
神奈川 栗原廣太
原爆忌詩人はことば失くすまじ
千葉 大塚理枝子
兼題-佐藤麻績・選
修二会果て新たな闇へ人の波
三重 平野 透
石一つ流人の墓碑や仏桑花
愛知 浅井清比古
人を待つ間の噴水でありにけり
三重 岡田良子
兼題-田中陽・選
「考える人」の姿勢の帰省の子
熊本 白井さと
老人の老犬叱咤西日中
新潟 川崎昌男
病院を出て別人となりサングラス
宮城 横塚とみ子
兼題-名和未知男・選
亡き人に返すすべなき書を曝す
神奈川 英 龍子
野生馬の守人となる帰省かな
宮崎 小森京子
臥す人に雪見障子を貼りにけり
京都 北村峰月
兼題-山下美典・選
恍惚の人の着衣に草虱
愛知 松浦房丸
振り大き異人教師の踊りかな
栃木 石井 暁
灯火親し仲人役をおさらひし
鹿児島 内藤美づ枝

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