興梠みさ子さん句集 『海からの風』『律の調』

興梠みさ子さん句集 『海からの風』『律の調』

シリーズ😊おすすめ句集の巻 その1『海からの風』

興梠みさ子さんからお電話を頂いたのは今年の7月3日のこと。
「入院中で、余命あとどのくらいかわかんないんですけど、句集が出したいんです」とみさ子さん。
私はその日のうちに病院に伺った。

みさ子さんは病室のベットの上で正座をして迎えて下さり、俳句のこと、病気のことを堰を切ったように話して下さった。
チャーミングな笑顔で、少し早口にどんどんと話される。
病気がわかったのは3~4年前。
発病後も自宅で暮らしていたが、一週間ほど前に急激な痛みに教われて、救急車で運ばれ、そのまま入院となったと。

時々自分で自分の頭をコツンとして、「私、バカだからよくわかんないんだけど」といいながら、“NECという希少ガンで治療法が確立していない病気”と説明をして下さる。
深刻な話のはずだが、あまりに明るく話されるので、みさ子さんの体を蝕む病魔が見えにくかった。

みさ子さんはまだ63歳。

俳句を始めて3~4年。丁度病気を罹った頃に俳句も始められていた。
「まだまだ駄句ばかりで、病気でなければ句集なんて考えませんでした。でも今回の入院で命の限りを感じて……、自分が生きた証を残したかった。」と。

 ふれたきは空の碧さの薄氷
 後戻りのできぬ道なり蝸牛
 昼は海夜は銀河に開く窓
 寒昴死者も生者も眠らせて
 古着屋のとなり古書店ところてん

「この句はですね」っと、本当に楽しそうにお話をして下さる。
みさ子さんは俳句が大好きなのだ。

8月が終わる頃、『海からの風』が出来上がった。
みさ子さんはとっても喜んで下さった。

シリーズ😊おすすめ句集の巻 その2『律の調』

第1句集『海からの風』刊行後、みさ子さんはホスピスに転院された。

9月の中旬、会いに行く。

みさ子さんの体は、初めてお会いした時より少し小さくなっているように感じた。
ベットに横たわられていたが、私の顔を見るとベットから起き上がって、
俳句の話を止めどもなくして下さる。
そしてみさ子さんから『海からの風』以降の句も纏めたいのよと言われた。

みさ子さんは傍にいるご主人に「いい?」と聞かれ、
ご主人は「したいと思うことはした方がいいよ」と優しく応えられる。

それからすぐ第2句集『律の調』の制作に取り掛かった。

  オカリナの穴のふぞろひ律の風
  待宵の月や見知らぬ訪問者
  指揮棒の先より律の調かな
  破れし翅蘂に沈めて秋の蝶
  銀河鉄道乗りそこなって吸ふ葡萄

11月の中旬、出来上がった『律の調』を届ける。
1ページ1ページ、一生懸命ページをめくられる。
「私ね、もう俳句も詠めなくなってきた」とみさ子さんが言われた。

「思いついたらご主人に伝えて紙に書いてもらって下さい。そしたら私がブログで紹介しますから」
と答えると、みさ子さんは「そう」と言ったように口を動かされ微笑まれた。

みさ子さん、また会いに行きます。
みさ子さんの俳句、大好きで楽しみにしているのですから。

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